皆さん、カナダという国にどのような印象がありますか?
アメリカの北にある国、冬が寒い、自然が広がっている、オーロラが観られる、メープルシロップとアイスホッケーが有名…など国や文化に関する情報は聞いた事があると思います。しかし、大学院事情に関しては同じ英語圏であるアメリカやイギリスに比べると、なかなか情報が出回っていなかったり、大学院留学経験者が周りにいなかったりと、あまり馴染みがないかもしれません。そこで、今回はそんなカナダにおける大学院事情についてご紹介したいと思います!アメリカの大学院、イギリスの大学院と似ている所もあるので、大学院進学を検討する際に比較してみるのも良いかもしれません。

目次

カナダの大学院は、専門性の高いプログラムが提供されており、世界中から多様なバックグラウンドを持った学生が集まっています。加えて、大きな研究機関や企業の研究チームが拠点をおいていたりするので、世界トップクラスの研究者・研究環境と繋がれる機会もあり、これから留学を検討している方にとって魅力的な選択肢のひとつになっています。また、治安が良く、留学生に対してオープンな移民政策を持つことでも知られています1 また卒業後の就労ビザ・永住権を申請する敷居も低くキャリアの選択肢を広げることができます(この点はカナダ留学の一番の魅力と言う人も多いです)
さらに多くの大学が留学生向けの奨学金制度を設けています。加えて、カナダドルと日本円の交換レートは以前よりは円安の影響で高くなっていますが、USDやGBPに比べるとまだ比較的良好なので、経済的な観点からもカナダの大学院留学は魅力的な選択肢となっています。

カナダにおいて私立大学は少なく、大学院進学の場合、基本的に州立あるいは公立大学へ出願することになります。また、多様性を重視した国なので、様々な背景や年齢の学生が在籍しており、社会人を経て留学する人も学びやすい環境だと言えます。この多様性を重視する文化は研究面においても良い影響があり、学際的な研究テーマへ取り組みやすい環境であったり、様々な分野の研究者との繋がりを形成しやすいです。
特に有名な大学として、トロント大学マギル大学ブリティッシュコロンビア大学などがありますが、大学院選びにおいて、大学の知名度よりも指導教員の分野における知名度・人脈、またはある特定分野の研究における大学の認知度を重要視するのが一般的な印象もあります。(例:ウォータールー大学のコンピューターサイエンス関連のプログラムは有名)なので、大学院選びの際は、自分の志望に合う大学やプログラムを選ぶ事が合格する上で重要になってきます。
また、カナダは英語とフランス語の二つが公用語で、大学によってはフランス語が主要な言語として取り扱われている場合もあります。例えばケベック州にあるモントリオール大学などがその一例です。

2.1 プログラム構成

カナダの大学院プログラムは日本のシステムと同様、修士課程と博士課程に分かれています。

修士課程

修士課程はイギリスの大学院の形式に近いです。

  • Thesis-based: コースワークと研究中心のプログラム形式で、修士論文の提出・発表が卒業要件になっており、通常2年間が一般的です。
  • Coursework-based: コースワーク中心のプログラムで、1年間のプログラムが多いです。修士論文が必要なケースとそうではないケースがあります。
  • Project-based: コースワークと実践的なプロジェクトを組み合わせたプログラム、企業でのインターンシップが卒業要件に組み込まれているCo-Op形式のプログラムなど、様々な選択肢があります。通常1〜2年間のプログラムが一般的です。
  • Professional Master’s: MBA、教育学修士などの特定の職業や資格に直結したカリキュラム

どのプログラムもコースワークの必修単位、論文やプロジェクトの提出が修了要件となります。オタワ大学を例とした場合、以下の3種類の修士課程が確認できました。

  • Course-based master’s (10 to 12 months)
  • Master’s with research paper (12 to 18 months)
  • Master’s with thesis (24 months)

博士課程

カナダ大学院の特徴として、博士課程入学条件として通常は修士号が必要です。この点はイギリスやヨーロッパの大学院システムと類似しています。一方、アメリカでは学部卒業後直接博士課程に進学できるプログラムも多いため、この点は大きな違いと言えるでしょう。ただし、プログラムや分野によっては学部から直接博士課程への進学することが可能な場合もあります。その場合、4年制ではなく5年制が一般的です。「アメリカとヨーロッパの両方のタイプの博士課程がある」という言い方もできると思います。

  • 基本的にプログラム期間は4年で設定されていますが、実際には多くの学生が4年以上かけて修了します。
  • 指導教員とともに研究を進めていく形なので、指導教員選びがとても重要になってきます。
  • 研究中心のプログラムが多く、博士研究を進行させると同時に国際会議・ジャーナルへの投稿・発表・掲載することが求められます。
  • 分野・プログラムにもよりますが、1年目はコースワークの履修、2年目に博士候補者試験と博士論文の研究計画、3年目と4年目で博士研究と論文執筆、という流れで進んでいくと思います。
  • 通常、博士論文の執筆と口頭試問が修了要件となります。

2.2. Financial Support

アメリカの大学院プログラムと同様、カナダの大学院プログラムでも、給与型の奨学金を貰える事が一般的です。ほとんどの博士課程においては分野問わずプログラム期間分(平均4、5年分)の経済的なサポートが最低限保証されていますが、修士課程においては保証されていません。しかし、実際には修士課程でも多くの学生が給与(型奨学金)を貰っています。特に研究中心の修士へ進学した場合、TAあるいはRAがオファーされるケースが一般的です。
研究室や分野によっては教授から直接雇用されるタイプもあるので、その場合経済的なサポートの内容が若干異なります。なので、志望する指導教員等への事前コンタクト時に奨学金の内容を聞くことをお勧めします。また、大学のHPに奨学金の平均金額が公開されている場合もあります。奨学金は以下の内容が一般的だと考えられます。

  • 授業料支給(アメリカと違い学費免除ではなく、授業料がサポートから差し引かれる。
  • TAやRAの給与
  • 研究費、保険代などの諸費

これらは9ヶ月あるいは12ヶ月に分けて支払われるケースが一般的です。

【注意点】
先ほど述べたように、授業料が奨学金から差し引かれるケースが一般的です。ただ、フェローシップ等の場合は学費免除のケースもあったりします。指導教員から直接雇用されている場合の学費が免除になることがあります。
奨学金の合計額や条件は大学や専攻によって大きく異なるため、出願時に詳細を確認することが重要です。特に指導教員がもっている研究資金で入学後に金銭面で違いが出たりします。ただ、アメリカと違う点は労働組合等によって奨学金・時給等の最低金額が定められており、極端に金額が低くなることはありません。授業料を支払う場合は修士課程と博士課程で学費が違うので、その辺りの確認も必要です。

2.3. TAとRAの仕組み

基本的に大学院生は給与と引き換えに授業補助や研究補助の業務へ従事することになります。一般的にどちらかが保証されているケース両方するケースが想定されますが、TA・RAを両方行った場合は、給与が合算されて計算されます。主な仕事内容は以下のようなものがあります。

TA: 主に学部生の授業補助や課題・試験の採点が一般的です。加えて、大規模な講義の場合(特に1、2回生の授業)、講義とは別にチュートリアルを担当することもあり、その場合は20人から30人ほどの決まった学生に向け、グループワーク、講義の復習・演習問題、ディスカッションなどを行います。通常、おおよそ週に10~15時間程度の仕事量です。(ただし、大学によって上限が変わる)
なお、一般的にカナダ大学院ではTAの労働組合 (例 UofT: CUPE3902, UBC: CUPE2278, McGill: AGSEM) があり、学期ごとにおける最大労働時間などの労働条件が保護されています。その影響で時給などの情報が公開されているケースが多いです。

RA: 主に教授や指導教員が行う研究プロジェクトの補助を行います。内容は分野や研究プロジェクトによって大きく異なる事が想定されます。RAにも労働組合がありますが、TAと同じ労働組合なのかは、大学によって異なります。また、RAの名称がGSA, GSFなど様々な名称で呼ばれている可能性もあります。

Proctor: 主に修士課程の学生向けですが、学部生の試験期間になると試験補助の募集がよくあります。この手の仕事は時給換算で決まった時間を期間限定で働く形式です。

2.4. 学内奨学金・政府系奨学金

多くの大学には、独自の奨学金制度があります。入学時に自動的に考慮される奨学金もあれば、別途申請が必要な奨学金もあります。加えて、成績優秀者向け、特定の研究分野向け、国際学生向けなど、様々な種類の奨学金(Fellowship等)があります。一般的にEntrance ScholarshipやRecruitment Scholarship のような入学する学生向けの奨学金が多い傾向にあります。
加えて、カナダ政府や各州政府も、大学院生向けの奨学金を提供しています。

主な政府系奨学金:代表的なものとして健康科学分野向けのCIHR、自然科学・工学分野向けのNSERC、人文社会科学分野向けのSSHRCの3つの奨学金があります。しかし、これらは基本的にカナダ国籍・永住権保持者向けの奨学金のため、留学生は応募不可なケースが多いです。以下に記載している奨学金は留学生でも応募できる奨学金です。

州別の奨学金

  • OGS(Ontario Graduate Scholarship):オンタリオ州限定の奨学金です。学内で募集案内が出るので、各大学の応募手順にしたがって応募する形になります。
  • PBEEE:ケベック州限定の奨学金(学内選考型)
  • FRQNT(自然科学向け) FRQS(医療科学向け) FRQSC (人文社会科学向け):ケベック州の奨学金で、留学生でも応募・受給可能です。¥

これらの奨学金は競争率が高く、申請プロセスも複雑ですが、獲得できれば大きな経済的支援となります。カナダの政府系奨学金に申請する場合は、Canada Common CV (CCV)というフォーマットの使用が必要になることがあります。

3.1 出願時期

カナダの大学院プログラムの出願時期は、大学や専攻によって異なりますが、一般的にアメリカ大学院の出願時期と類似しています。出願締切が早ければ11月頃に設定されている場合もありますが、主に12月初旬から1月中旬の間に出願締切を設定している大学がほとんどです。稀に2月に出願可能なプログラムもあります。
ただし、人気の高いプログラムや奨学金を希望する場合は、できるだけ早く出願準備をすることをおすすめします。出願締切日は必ず各大学のウェブサイトで確認してください。

3.2 必要書類

  • 英語能力証明:TOEFL または IELTS
    • TOEFLの場合、多くの大学でだいたい90点以上のスコアが要求されます。特定のプログラムや分野では100点以上、時には105~110点を要求する場合もあります。
    • IELTSの場合、一般的に7.0(全ての項目で6.5以上)あたりに最低点を設定しているプログラムが多い傾向にあります。 特定のプログラムでは7.5や8.0が最低点として設定されている場合もあります。注意点としてWritingやSpeakingなど、特定のセクションに最低点を設けている大学院もあります。
  • GPA (Transcript)
    • GPAの要求は大学によって異なりますが、多くの場合、最低要件が4.0満点中3.0〜3.3以上、カナダの成績システムにおけるB+以上(75%~79%)が必要となってきます。ただし、競争率の高いプログラムへはA(85%)以上あることが望ましいです。
    • 各大学のAdmissionに関するHPで、自国の成績がどのように換算されるか確認することが可能です。また、州ごとで成績評価方式が違ったりするので、大学のページで確認するのが一番確実です。
  • CV/Resume
    • 特定のフォーマットは通常指定されませんが、学歴、研究経験、職歴、出版物、学会発表、受賞歴などを明確に記載して、読みやすい形式を心がけると良いでしょう。
  • 推薦状
    • 他国の大学院と同様、2、3通の推薦状が必要で、基本的に教授や指導教員に書いてもらう形になります。なので、研究経験がある場合は研究指導者からの推薦状、そうでない場合は学部時代のゼミの先生などに相談すると良いと思います。ただ、分野によっては職務経験が評価される場合もあり、上司などに書いてもらった推薦状が評価される場合もあります。
  • Statement of Purpose と Personal Statement (Diversity Statement)
    • 多くの大学院では、SoPとPSの両方とも提出することが要求されます。内容について出願情報に記載されている場合もあるので、それを参考に書き始めることが一番早いかもしれません。
      • Statement of Purpose: 他国の大学院と同様、基本的に学問的興味、リサーチクエッション、研究計画、キャリア目標などを述べます。加えて、なぜその大学院やプログラムを選んだのか、なぜ希望する指導教官のもとで学びたいのか、研究したいのか、事前コンタクトはとっているのか、などの志望理由に関して明確に記載します。
      • Personal Statement (Diversity Statement): SoPと異なり、出願者自身の背景、経験、多様性への貢献などを述べます。
  • 研究計画書
    • 特に博士課程では、具体的な研究計画が求められ、研究計画書(Research Proposal)を提出する必要があります。研究テーマ、方法論、予想される成果、先行研究のレビューなどに加えて、自身の研究がどのように学術分野に貢献するかを説明します。内容が不安な場合は出願前に希望する指導教員や研究室のメンバーに見てもらえる可能性もあるので、事前コンタクト時に聞いてみるのもいいかもしれません。

【GREが要求されることは稀】
一般的にカナダ大学院ではGREを要求されるケースは少ないと思われます。ただし、主にビジネス分野でGREやGMATスコアの提出が義務となっているプログラムもあったり、一部の自然科学、工学などのプログラムでも必要なケースがあり、事前に出願要件を確認する必要があります。人文科学、社会科学分野ではGREを要求しない傾向にあります。2

【面接があるかは分野次第】
面接の有無はプログラムによって異なります。多くの場合面接はありませんが、競争率の高いプログラムや特定の分野では実施されることがあります。面接がある場合、通常はオンラインで行われます。面接の際は研究計画、学問的興味、将来の目標などについて質問されることが多いです。

3.3 指導教員との事前コンタクト

出願前に希望する指導教員とコンタクトを取ることが推奨されます。特に博士課程の場合、事前に指導教員の受け入れ許可が出ているか出ていないかで合格率がかなり変わる傾向があります。一方、修士課程においては研究ベースのプログラム以外はそこまで重要ではありません。コンタクトにより、自分(出願者)の研究内容と指導教員の研究方針などの適合性を確認できるだけでなく、奨学金事情なども聞けるので、事前コンタクトを取ることが推奨されます。

【選考の倍率は?】
倍率は大学、プログラム、そして出願者の背景によって大きく異なります。
一般的に、カナダ国籍・永住権保持者の方が留学生よりも入学しやすい傾向にあります。加えて、応募できる奨学金の数も似たような傾向にあります。留学生の倍率は博士課程だとアメリカ大学院の倍率に近く、博士課程は修士課程よりも倍率が高いことが多いです。特に人文社会科学の分野における合格率・合格者数は低い傾向にあります。おそらく、これらの分野での研究等の予算が限られているためと考えられます。人気の高い分野(例:コンピューターサイエンス、ビジネス)では特に競争が激しくなります。大学によっては過去の博士課程の合格倍率・合格者数などを公開している場合もあります。(例、トロント大学マギル大学

4.1. ビザ申請

大学院進学が決まりカナダへ渡航する際、学生ビザ(Study Permit)が必要となってきます。以下に簡単な申請手順の流れを記載しています。(注:ケベック州は追加の手続きがあります)

STEP
オンライン申請の準備

カナダ政府の公式ウェブサイトにアクセスし、必要書類(パスポート、入学許可証、財政証明書など)を確認・用意する。

STEP
オンライン申請

ウェブサイト上で申請書を記入し、必要書類をアップロードする。その際に申請料を支払う。基本的に申請可能になるのは合格通知書が来た後になります。通知書に申請時に必要な番号などが記載されています。

STEP
生体認証情報(Biometrics)の提出

申請後、生体認証情報提供の通知が届くので、指定されたビザ申請センター(東京や大阪など)で指紋と写真を採取します。

STEP
審査と結果通知

数ヶ月後、承認されるとLetter of Introductionが届きます。その書類にeTA(アメリカでいうESTA)も一緒についてくるので別に申請する必要はないです。

STEP
カナダ入国

入国時、入国管理官に留学の趣旨を伝えると審査室的な場所へ案内されます。そこでLetter of Introductionと必要書類を提示することで、その場でStudy Permitが発行されます。有効期限はプログラムの期間(あるいは申請時に記載した期間)と同じ期間に設定されています。

【配偶者のビザ】
家族と一緒に渡航する場合、配偶者はオープン就労ビザ(Open Work Permit)を申請することが可能であり、学生ビザを申請する時に一緒に申請できます。就労が制限されるアメリカのF2ビザ(学生の配偶者用ビザ)とは異なり、このビザはカナダ国内でほぼ制限なく就労することができます。さらに、配偶者がフルタイムで1年間勤務すると、永住権申請の資格が得られます
子どもがいる場合は、学齢期なら学生ビザ、未就学児なら訪問者ビザを同時に申請します。(要確認)親が主に留学している場合、一緒に渡航する子供の公立小学校から高校への通学が無償になります(要確認)。児童手当なども一定期間カナダに定住する事で申請できるようになります要確認)。

【大学院修了後のビザ】

  • 修士修了後に、現地でフルタイムを見つけ、そのまま働いている人も多い。(Co-opプログラムなど就労に特化したプログラムもある)
  • PhD 修了後は永住権がとりやすく優遇されることが多い(オンタリオ州はPhD修了者への優遇制度がある)。

4.2 健康保険

カナダの医療制度はアメリカと異なりユニバーサルヘルスケアなので、日本でいう国民健康保険的な制度があります。留学生向けの保険に関しては、各州・各大学ごとに異なりますが、一般的なものに以下のような制度があります。配偶者や家族も加入することが可能です。

  • オンタリオ州: 留学生はOntario Health Insurance Plan(OHIP)に加入できないので、University Health Insurance Plan (UHIP) が主な保険制度です。オンタリオ州の大学に在籍する留学生は、通常このプランに加入する必要があります。
  • ブリティッシュコロンビア州: British Columbia Medical Services Plan (MSP) があります。留学生は到着後3ヶ月の待機期間後に加入できます。最初の3ヶ月は別途の保険プランがあります(例、UBCにはiMedという制度がある)。要確認
  • ケベック州: Régie de l’assurance maladie du Québec (RAMQ) がありますが、留学生は加入できない場合があるので、代わりに大学が提供する保険に加入することになります。例えば、マギル大学にはMcGill International Health Insurance (IHI)というプランがあります。
  • アルバータ州: Alberta Health Care Insurance Plan (AHCIP) があり、12ヶ月以上の有効な学生ビザを持つ留学生は加入できます。加入できない留学生は大学等が用意している保険に加入するか私的保険を購入する必要があります。例えば、アルバータ大学ではUAHIPというAHCIPと同じ内容の保険プランがあります。

具体的な加入条件や保障内容は、各州や教育機関によって異なる場合があります。留学先の大学や州政府のウェブサイトで最新の正確な情報を確認することをお勧めします。
これらの保険に加えて、大学側からExtended health insuranceのプランが提供されていて、これに加入することでメインの保険でカバーされない処方箋、歯医者等、カウンセリング、gender affirming care等にかかる費用が返金されたりします。

【予防接種】
日本から留学される方は基本必要ありませんが、医療や教育などの分野で、病院あるいは教育機関で仕事をする可能性のある方は、健康診断の結果や予防接種歴の提出を要求される可能性があります。

4.3. 病院事情

Family Doctorは空きが少なく、探すのが困難なので、留学生は基本的にキャンパス内の病院やクリニックかWalk-in Clinicへ行き、診察・処方してもらうことになります。
もし他の検査が必要な場合は、クリニックや病院・Walk-in Clinicのドクターが必要な施設・病院へ予約をとってくれます。基本的に保険が適応されて、処方箋以外は申請手続きを行う事で病院の費用が返金され、処方箋も割引になる場合が多いです。ただし、歯医者等は実費ですが、これも追加の保険で保証されている場合、一定額まで返ってきます。親知らずを抜いたりするのは高額なので、必要な場合は日本で済ませておくことをおすすめします。

4.4. 家探し・身の回り

カナダはインフレの影響で家賃の高騰に加えて住居不足も問題になっており、部屋探しが留学生にとって一番の難関だとさえ言われることもあります。早めに準備に取り組むことが大切です。特に大学が管理している大学院生向けの寮やアパートなどは競争率が高かったり抽選制だったりする一方で、Off-Campusの部屋やアパートも人気のエリアは競争率が高いです。大学のハウジングオフィスあるいは他の留学生や同じ研究室の学生から聞ける機会があれば質問してみるのもありです。

主要都市の家賃相場は、バンクーバー>トロント>モントリオールの順で、特にバンクーバーとトロントの家賃は高いです。加えて、ハミルトンなどの他の都市も高騰傾向にあるので注意が必要です。現地到着後、まずはAirBnBやゲストハウスなどに滞在しながら部屋を探した、というケースを耳にするので、進学が決まったら、早めに探し始めることをお勧めします。住居へ入居する際、アメリカと違い最初の月の家賃以外にデポジットを要求される事は少ないです。(周りでもデポジットを要求された人は今のところいないです。)

また、FacebookのグループやMarketplaceにも家・部屋の情報が沢山出ていますが、くれぐれも詐欺には気をつけてください。物件を実際に内見して自分の目で確かめるのがおすすめです。

留学あるあるですが、

【家賃以外の出費】
インターネット:家賃にインターネットが含まれていないこともあり、その場合自分で契約する必要があります。選択肢としてはRogers, Bell, Telusなどの通信会社があり、携帯プランとインターネットが一緒になってるプランもあります。また、学割プランによって割安で契約できたりもします。
ガス代:特に冬は暖房の使用が増えるのでガス代が高くなる傾向にあります。住居を決める際、ガス代が家賃に含まれるのか、また含まれない場合は月平均でどれくらいかかるのか聞いておくと安心です。
※ ケベックは基本的にはガスではなく電気のことが多いです。もし家賃に含まれない場合はHydro-Quebecという電気会社のポータルでアカウントを作って住所を登録する必要があります。
携帯電話:基本的に月額のプランかプリペイドプランの2種類になると思います。ただ、日本のプランより割高な印象があります。留学している人の中には楽天モバイルなど日本で契約したプランをそのまま使っているケースも聞いたことがあります。
※ 「銀行口座を作るには電話番号が必要…電話番号を作るには銀行口座が必要…」というループに陥るかもしれませんが、Fidoという携帯会社はStudy Permitがあればカナダの銀行口座なしでも契約ができます。

4.5. 銀行口座

  • Wiseでカナダドルの口座を作れますが、送金だけでなく、デビットカードで現地通貨で決済できるので、引越し直後の時にあると非常に便利です。銀行口座を作れるまで、ある程度時間がかかるかもしれないので、
  • 銀行口座を作るにはSIN (Social Insurance Number, アメリカでいうSocial Security Number的なもの)が必要で、口座開設時にStudy Permitと一緒に必要になります。SIN申請は非常に混み合うので、出来るだけ早めに申請したいところです。申請した時に、番号はすぐもらえます。
    • オンタリオ州の場合、Scotia Bank, CIBC, TD Bankなどがある
    • オンラインだと、Tangerineがおすすめですが、この銀行はSIN以外にも、カナダの電話番号、住所、カナダ政府発行のIDカード(例:State ID, Driver’s licenseなど)が必要になります。

4.6 運転免許・その他のIDカード

基本的に国際免許からの切り替えが可能です。日本で運転免許証をすでに取得している場合、国際免許を取得し、こちらで切り替えるパターンが一番早いです。ただし、フル免許(G License)に翻訳されるには日本で二年以上免許を保持している必要があるので、日本で免許を取ったばかりの人は注意が必要です。
一から取得する場合は、免許取得までものすごく時間がかかります。運転免許証がない場合でも、州が発行しているIDカードを申請する事で、カナダ政府公認の身分証が取得できます。

4.7 州ごとの文化について

アメリカと同じく、州が変わると若干文化圏が変わる印象です。

  • アルバータ州:主にカルガリー、エドモントンなどの都市がある。保守的な州として認識されてます(アメリカでいうテキサス的な感じ)。
  • ブリティッシュコロンビア州:バンクーバー、ヴィクトリアなど。アジア系カナダ人、移民が多いです。
  • オンタリオ州:トロント、オタワなど。人口が多く、アメリカでいうノースイースト(またはノースイーストとミッドウェストの中間くらい)に近い印象です。
  • ケベック州:東部のフランス語圏の地域。モントリオールでは英語・フランス語両方どちらでも大丈夫ですが、その他の都市ではフランス語ができるかによって生活のしやすさが変わる印象です。

参考リンク

XPLANEのカナダ留学情報

XPLANE外のカナダ留学情報

以下のブログなども参考になります。

注釈

  1. 最近ビザ改訂で、学部生向けのビザ発行数に制限が出ましたが、大学院進学においては影響はありません。 ↩︎
  2. 出願要件は毎年変わる可能性があるので、常に最新の情報を公式サイトで確認しましょう。 ↩︎
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