会社を辞めて米国で化学PhDに挑戦!【海外大学院受験記2025-#4】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2025年度の第4回である今回は、今年からNorthwestern大学の博士課程(化学)に進学される明田さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

みなさん、はじめまして。2025年秋から、Northwestern University の化学科のPhD programに進学予定の明田悠希と申します。大学では、ケミカルバイオロジーを専攻し、日本で修士課程を修了後、企業で2年間研究員として働いていました。特に、化学分野で学位留学を目指す方々の参考になればと思い、この記事を執筆しました。

 Northwestern Technological Institute(理工系の研究室が集まっています。)

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

大学院留学を志したきっかけは大きく2つあります。

1つ目は、企業での研究経験を通じて、自分が「サイエンスそのもの」が好きだと気がついたことです。私は東京大学の修士課程を修了後、化学メーカーに就職しました。実際に仕事をする中で、より本質的なサイエンスに近い研究を通じて創薬の発展に貢献したいという思いが強くなり、ライフサイエンス分野で世界をリードする米国の大学院への進学を決意しました。
2つ目は、海外で研究者として活躍したいと思ったことです。学生時代から海外で働くことに興味があり、将来的な駐在の機会を見越して、海外との関わりが多い企業に就職しました。しかし実際に会社員として働く中で、「自ら海外に飛び込み、より自由で柔軟な研究者人生を送りたい」と考えるようになりました。そうした背景から、学位取得と海外での研究者生活の両方が実現できる「学位留学」を目指すことにしました。

3. 出願前の所属での専攻分野・研究内容に関して

出願前は、企業で製薬業界で医薬品製造の研究開発に携わっていました。

それ以前の学部・修士課程では、東京大学の化学生命工学専攻に所属し、化学の力を活用して、分子レベルで生命現象を解析・制御する研究を行っていました。PhDで取り組む予定の研究分野もケミカルバイオロジーであり、学生時代に行っていた研究と近い領域になります。

4. 英語のスコアに関して

私は、出願校の基準に合わせてIELTS 7.0を目標に勉強しました。IELTS overall 7.0 (R:9.0, L:6.0, S:6.0, W:6.0)を取得しました。出願締め切りが迫っていたこともあり、このスコアで出願しました。

スコアは出願要件ギリギリで、かつバランスも良くなかったため、正直なところ合否に影響するのではと不安に感じていました。しかし、実際に受験してみて感じたのは、「英語スコアは必要最低限あれば十分」ということです。むしろ、面接で自分の考えを英語でどれだけ表現できるかの方が重視されている印象を受けました。
そのため、出願時に提出する英語スコアについては、必要条件を満たしていれば大きな問題にはならないと、個人的には思っています。

5. 出願書類作成に関して(奨学金、SoP、推薦状)

【奨学金】

出願を決意したのが2024年9月と比較的遅かったことに加え、すでに社会人であったため、応募できる奨学金は限られていました。応募した奨学金には残念ながら不採用となりましたが、奨学金がなくても出願は可能ですし、実際に合格することができました

一般的に「奨学金を持っている方が合格しやすい」と言われることもありますが、結果に一喜一憂せず、自分ができる準備を一つひとつ丁寧に積み重ねていくことが何より大切だと感じました。

【SoP (Statement of Purpose)】

すでに米国の博士課程に進学していた友人からSoPを共有してもらい、それを参考にしながら作成を進めました。SoPで最も重要なことは、大学の先生方に、「この人を受け入れたい」と思ってもらえるかどうかだと思います。

完成したSoPは学生時代の同僚や友人に見てもらい、自分の魅力や研究の意欲がきちんと伝わっているかどうかを客観的に評価してもらいました。提出直前には、SoPの添削サービスも活用し、構成や表現をさらにブラッシュアップしました。

なお、XPLANEのSoP執筆支援プログラムは、私が出願準備を始めた時にはすでに締め切りを過ぎており利用できなかったのですが、非常に充実したプログラムだと聞いています。これから出願を考えている方には、ぜひ活用をおすすめします。

【推薦状】

推薦状は、学生時代のお世話になった研究室の先生2名と、共同研究をしていた研究者1名にお願いしました。推薦者が出願先の教授と面識があったり、留学先の国で学位を取得していたりすると有利だと言われていますが、私の場合はそのような条件は一切揃っていませんでした。それでも自分のことをよく理解し、きちんと評価してくれている先生であれば、十分に魅力的な推薦状を書いていただけると思います。長い付き合いがあり、信頼関係を築いている方に依頼することをおすすめします。

6. 進学先選びについて

私は、自分の研究興味とマッチする先生がいる大学に絞って出願しました。というのも、企業に勤めていたため、仮にすべて不合格でもそのまま働きつづけるという選択肢があり、無理に数を増やす必要はないと考えたからです。

出願準備期間が約3ヶ月しかなかったため、これまでに読んで印象に残っていた論文を手がかりに研究室を選びました。特に興味を持った論文のラストオーサー(責任著者)の研究室に加え、その先生の学生・ポスドク時代の指導教員や、関連ラボの出身者で独立したPI(Principal Investigator)も候補に挙げました。

さらに、候補の先生方が所属する学科に、研究内容が合いそうな教員が他にいないかも調査し、自分にとって魅力的だと感じるプログラムを絞り込みました。加えて、各プログラムにおける留学生の合格実績(合格率)も調べ、比較的留学生の合格者が多い6校に出願しました。

最終的には、研究内容、研究環境、設備、そして生活環境などを総合的に評価し、Northwestern Universityへの進学を決めました。

受験を通じて強く感じたのは、「研究内容のマッチング」や「出願前のコンタクトの有無」が、合否に大きな影響を与えるということです。私のように海外とのコネクションが全くない場合でも、事前に連絡を取り、研究への関心や熱意を伝えることは非常に大切だと実感しました。

実際に出願した6校のうち、4校で書類選考を通過し、面接に進むことができました。これらはいずれも、出願前にオンラインで教員と面談の機会を持てたプログラムでした。そして面接では、事前に連絡を取っていた先生が面接官であるケースが多くありました。
一方で、書類選考で不合格だった2校は、出願前に興味のある先生に何度かメールを送ったものの返信が得られず、先生方と面識がない大学でした。もちろん、事前コンタクトがなくても提出書類が魅力的であれば選考を通過する可能性もあったとは思いますが、特に留学経験や海外のネットワークがなかった私にとっては、出願前のアプローチが結果に大きく関わったように感じています。

7. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

留学経験も、先生方とのコネクションがなかった私でも、米国の大学院に合格することができました。

実績や特別な経歴、強力な人脈がなかったとしても、それが海外大学院を目指すうえでの諦める理由にはならないと思います。たとえ結果が不合格であっても、その過程で積み重ねた努力は、必ず次のチャンスにつながるはずです。
この記事を読んで、少しでも多くの方が海外大学院進学に興味を持ち、夢への一歩を踏み出すことができれば嬉しいです。

Northwestern University Lakefill(ミシガン湖を一望できます。)
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