海外大学院受験記 ー 地方・文系出身の私がイギリスの大学院社会学修士課程に合格するまで【海外大学院受験記2025-#3】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2025年度の第3回である今回は、今年からLondon School of Economicsの修士課程に進学された冨永さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

はじめまして!冨永恵里衣と申します。秋からThe London School of Economics and Political Scienceで修士課程に進学します。学士課程では九州大学共創学部に在学し、文化人類学の研究室に所属していました。主な関心は教育社会学/ジェンダー学で、イギリスのLeeds大学社会学部に交換留学の経験があります。本記事が、これからイギリスの大学院への応募を考えている方々の参考になれば幸いです。

2. 大学院留学を志した理由

2.1. なぜイギリス?

a. 1年で修士号を取得できるから

日本、他国の修士課程(文系)の多くは2年間のプログラムであるのに対し、イギリスの修士課程は1年間のプログラムです。このため、1年の間に「卒業単位取得/修士論文/就職活動」を両立しなければなりません。ハードではありますが、私は以下のようなメリットを考えました。

  • 学費・生活費が1年分しかかからないので、トータルコストが抑えられる。(イギリスの学費、生活費は高額なので断言できませんが)。
  • 早く社会に出てキャリアをスタートできる。

b. 交換留学時にイギリスのカリキュラムに惹かれたから

イギリスの大学はレクチャー、セミナー、チュートリアル、で構成されています。以下が1週間のイメージです。レクチャーやリーディングで知識をインプットし、それをセミナーでアウトプットするというインプットとアウトプットのサイクルのおかげで、知識の吸収が早まり、イギリスでの交換留学時代に充実した学びを得ることができました。この効果的な学習スタイルに魅力を感じ、修士課程でもイギリスの大学院を志望しました。

*レクチャー : 教授(Professor)や講師(Lecturer)による一方向の講義形式。大人数で受講。リーディング課題に必要な基礎知識について説明。
*セミナー : 少人数のディスカッション形式。事前に本や論文のリーディング課題が課される。

b. 英語力向上のため

周知の通りイギリスの公用語は英語です。個人的に日本を拠点に海外でも活躍できる人材になりたいという思いがあり、英語力をさらに磨くため、イギリスを選びました。

2.2. なぜイギリスで社会学?

a. グローバルな視点で社会問題を考察できる

イギリスの大学院で社会学を学びたい理由は、日常的に多様な事例を扱えるからです。交換留学時代の社会学の授業で、異なる民族/宗教/人種/ジェンダーの社会問題の事例について授業で取り上げられ、日本の大学ではあまりみられなかったため私にとって新鮮でした。また、セミナーに参加する学生も民族/宗教/人種/ジェンダーの側面で多様なバックグラウンドを持っていました。こうした学びの環境は、社会問題をグローバルな視点で考察したい私にとって理想的だと考えました。

b. 理論/方法論の体系的なカリキュラム

これは後述する志望理由書にも書きましたが、希望する大学院のカリキュラムでは社会学理論を学べ、方法論の包括的なトレーニングを受けることができます。社会学を勉強するのに最適な環境だと考えました

3. 出願書類作成に関して

3.1. IELTS (2021年5月-2024年11月)

IELTSの場合、海外大学院(文系)受験に必要なスコアの基準はOA7.0だと認識しています。私は2021年の5月にIELTSを初受験しました。当時のスコアはOA5.5。12回の受験を乗り越え、最終的にOA7.5までスコアメイクをしました。スコアメイクにかかる時間には個人差があります。早めに最初の受験を済ませてご自身の英語力を把握し、目標スコアに向けて準備に取り組むことをお勧めします。

3.2. 奨学金(2024年8月-2025年4月)

海外大学院の修士課程に進学する学生が対象の給付型奨学金は、XPLANEのリストを参考にしました。奨学金募集は夏と冬に山場がありました。奨学金申請にも、推薦書/IELTS/成績証明書/研究計画書 のような書類が必要となるので早めの準備が必要です。

3.3. 推薦書 (2024年8月-11月)

私は5つの大学を受験しましたが、推薦書の提出が任意の大学もあれば、3人分の推薦書を用意しなければならない大学もありました。私は専門分野、ポジション、国(日本/イギリス)を考慮し、以下の先生方に推薦書を依頼しました。

  • 出身大学の指導教官
  • 出身大学副指導教官
  • 留学先大学の指導教授

大学の先生方はご多忙です。私の場合、1ヶ月-2週間前を目処に依頼しました。推薦書についてもできるだけ早めに相談するのが良いでしょう。

3.4. SoP (2024年9月-12月)

SoP執筆ではXPLANEのメンターの方に大変お世話になりました。私はメンターの方に支援をいただきながら、以下の手順でSoPを仕上げました。

  • カリキュラムの確認
  • 指導教官を確認
  • CV作成(SoPに書く自分の経歴について検討)
  • SoP初稿執筆
  • メンターの方にフィードバックをもらう
  • 書き直す(5.と6.を4、5回繰り替えす) 

加えて、進学希望の大学に在学する先輩方2-3名ほどにもフィードバックをいただいていました。早めに初稿に取り組み、進学希望のコースにぴったり合うSoPを仕上げるのが理想です。

4. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

地方の大学に進学、文系出身、女子、という私にとって、海外大学院進学という選択はずっと現実的ではありませんでした。「なぜ海外?」「文系なのに大学院?」「お金は?」「就活は?」「キャリアに繋がる?」―周囲からはなかなか理解されないし、情報も多くはない。経済的な側面からみても、海外大学院受験のハードルはかなり高かったのが事実です。まだ修士課程は始まっていないので、この選択が正しかったかは正直分かりません。しかし、一旦は、出願に必要なステップを一つずつ乗り越え(IELTS受験、奨学金、SoPなど)、納得いく形で受験を終えることができました。似たようなバックグラウンドや同じ志を持つ皆さんの進路を、心から応援しています。最後に、受験を支えてくださったXPLANEコミュニティの皆様、メンターの方々にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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