実績がなくても、支えてくれる人がいた。~理系女子、根気と人脈で北欧修士課程へ~【海外大学院受験記2025-#7】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2025年度の第7回である今回は、今年からUniversity of Copenhagenの修士課程に進学される五味さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

はじめまして!私は2025年秋からデンマークにあるUniversity of Copenhagenの修士課程に進学します。学部3年生になり周囲が大学院進学を考え始めた頃、私はなんとなくしか将来を考えておらず、焦りと不安を感じていました。このまま現大学の大学院に行くことが自分の望みなのか、他の選択肢はないのか…たくさん考え、最終的には自分の興味に従って海外大学院への進学を決意しました。

ちなみに私は長期留学経験がなく、学会への参加は聴講のみで、奨学金は受給しておらず、特に受験で有利になりそうな点でアピールできることはありませんでした。こんな平凡な学生でも、気合いでなんとかなりました!海外大学院の修士課程進学が少しでも気になっている方の、背中を押すことができれば嬉しいです。

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

2.1. 内部進学か、外部進学か

私はもともと英語が好きで、海外での生活に興味を持っていました。学部生での留学も視野に入れていましたが、単位の関係で断念。もはやこれは大学院で海外留学を狙うしかないのでは?と大学2年生の頃に漠然と思いはじめていました。

海外大学院への進学を本格的に意識し始めたのは大学3年生の冬です。ずっと進路を悩んでいましたが、英語のスコアがないとスタートラインにも立てないので、まずはIELTSの勉強から始めました。そして、大学4年生で研究室配属となり、自分の専門分野が決まったことでやりたいことが明確になってきました。この段階で、修士で学んでみたい分野と志望大学を選定できるようになり、海外大学院が徐々に現実味を帯びてきたことを覚えています。研究室の先生が応援してくださったこともあり、本気で目指してみようと思うようになりました。

2.2. なぜデンマーク?

 私が進学先選びで重視していたのは、研究内容のレベル、学費、治安の3つです。私は生物学を専攻していて、将来的に製薬関連の仕事に関わってみたいと思っています。そこで、生物分野で有名な教授を探したところ、コペンハーゲン大学が選択肢として浮かびました。アメリカの大学院も調べましたが、学費がかなり高く2年間通うのが非現実的だと感じ、比較的学費を抑えられるデンマークの修士課程に興味を持ちました。また、女性1人で初めての長期留学ということもあり、治安の良さも大切なポイントでした。国際的な研究機関「経済平和研究所」が発表している「世界平和度指数」というデータによると、デンマークは2025年に8位にランクインしているそうです。比較的治安が良い国だとされているので(訪れたことはありませんが)、安心できるかな?と期待しています。

3. 出願前の所属での専攻分野・研究内容に関して

3-1. 志望校選定

私が一番苦労したのは、志望校の選定です。理系の場合には進学先の研究室とのコネが必要だと聞いていたので、研究初心者の自分にはハードルがとても高かったです。焦った私はとにかくアピールしないと!と思い、大学を問わず15通ほど気になる教授にメールを送りました。最終的に返ってきたのは大本命の教授…”のみ”!という結果で複雑な心境。ただ、自分からつながりを求めて行動を起こすことはとても大切だということを学びました。私のように研究室に入りたてで不安に感じている方も、希望を持ってください! 

※正直なところ、デンマークの修士課程への出願では教授とのコネはあまり重視されていないように感じました。アメリカやイギリスよりは狙い目なのかなと思います。

3-2. 出願書類作成に関して

デンマークの大学院では、IELTS、CV、取得単位表、履修科目の説明表などが要求されます。推薦書や研究計画書は不要であることが多く、ここは出願しやすい点だと感じました。ここでは主にIELTS、CV、取得単位表について説明します。

  • IELTS (2024年3月- 2024年11月)

私の目標スコアはoverall 6.5 (各セクション5.5以上)でした。2024年3月が初受験で、overall 5.5からのスタートでした。特にスピーキングは4.5で、特に力を入れる必要性を感じました。数回受けても全くスピーキングが伸びず、もっと早くから英会話の練習や語彙の強化をすれば良かったなと思います。先輩にも本番の出題形式に合わせて練習に付き合っていただきました。11月に出願前ギリギリで受けた5回目の受験で、overall 7.0(スピーキング は6.5!)に辿り着きました。

誰もが口を揃えていうことですが、英語学習は早めに始めるのが吉です!特に、自分が苦手な分野を潰しておくことが重要です。1回あたりの受験料が高いので、万全の準備で臨んでください。

  • CV (2024年10月- 11月)

 CVとは履歴書のようなもので、基本情報、現在の研究内容、学術的な実績、技能、課外活動等を書きます。研究内容を端的にまとめて書く必要があるので、先生に確認してもらうと安心です。作成に1ヶ月程度かかるとみておくと余裕だと思います。

  • 取得単位表

これは履修科目と成績をリストアップするだけなのですが、ここにきて志望コースを慎重に決める重要性に気がつきました。修士課程の場合、おそらく多くの学生にはまだ研究成果がないため、大学での単位が重視されます。コースの募集要項をよく読み、自分の履修科目と一致しているかをよく確認してください。実際、私は単位不足が理由で不合格通知をもらったコースもありました…。

4. 奨学金について (2024年8月- 2025年6月現在)

デンマークの理系大学院の学費は2年間で約500万円で、そこに生活費が加わるので非常に高額な資金が必要です。私は主に給付型奨学金に応募しました。奨学金募集は早いもので学部4年生の7月締切りのものがあるので、大学院出願用の書類よりも先に着手しました。推薦書/IELTSスコア/成績証明書/研究計画書が必要になることが多いので、早めの準備が重要です。    

推薦書については指導教員の先生に書いていただきました。多忙な中で時間を割いてく ださるので、早めにお願いしましょう。また研究室配属の際には海外への進学希望を伝えておき、理解を得ることも大切です。

研究計画書については、初心者にはそう簡単に書けないので先生に指導をお願いしましょう。私は所属している研究室との関連をもたせつつ、少し派生した分野を希望していたので、その点を含めてご指導いただきました。

5. 国内/海外進学で迷っている方へ

私は海外大学院を第一志望として準備を進めていましたが、それと並行して国内大学院(内部進学)も受験しました。国内の入試は8月に実施され、ちょうど奨学金の申請と重なりとても大変でした。私が併願を選んだのは、あらかじめ進学先を確保することで少しでも将来への不安を減らしたかったからです。ただ正直なところ、第一志望が海外なのに、国内入試のために多くの時間を勉強に費やして良いのか、志望書をもっと練った方がいいのではないか…と葛藤していました。それでも自分の将来を考えたときに、もちろん海外大学院が理想だけれども、国内で頑張ることにも十分な意義があると思いました。修士課程の2年はどこで過ごすかも大切ですが、それ以上に「自分がどう取り組むか」に大きく委ねられているように思います。結果として国内の進学先を確保できたおかげで、海外大学院への出願準備中にもあまり不安にならず、集中して取り組めました。迷っている方がいたら、あらゆる可能性を自分に残しておくことが最善だと思います。結果的に良い方向へつながるはずです。

6. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

まず海外進学という選択肢を見つけられたことが、何よりも誇るべきことだと思います。自分がやりたいことを何度も考えて、最後に正解だと思ったことを信じて、その決断に自信をもってください。
私の所属学科では例年約8割の学生が大学院に進学しますが、多くの友人が内部進学を選びました。海外への進学を希望する人は多くありません。だからこそ、私と同じように「自分に海外なんて手が届くのだろうか」と1人で悩み、苦しくなる方もいるかと思います。   

でも、XPLANEコミュニティの皆様や友人、先生方など応援してくださる方は大勢います。高校生の時、「大学受験は団体戦」と言われましたが、海外大学院の受験も同じだと思います。大学で広げた人脈を存分に活用して、頼らせてもらい、勇気を出して出願してみてください。私は決して優秀ではありませんが、人脈に恵まれたおかげで進路が決まりました。まずは大学を探してみたり、英語試験を受けてみたり、誰かに野望を話してみたり、自分にできる小さな一歩を積み重ねてみてください。皆様の今後を、心より応援しています。

最後に、この場をお借りしてXPLANEコミュニティの皆様、SoPを添削してくださった方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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