物理化学で米国PhD受験:アメリカの大学からアメリカの大学院へ【海外大学院受験記2025-#8】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2025年度の第8回である今回は、今年からミシガン大学アナーバー校の博士課程に進学される井戸崚雄さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

初めまして、アメリカ・オハイオ州にあるデニソン大学を5月に卒業し、8月からミシガン州のミシガン大学アナーバー校の物理化学学科博士課程に進学予定の井戸崚雄です。

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

学部時代からアメリカに留学をしていたので、大学院もアメリカで続けることにそこまで抵抗がなかったのが大学院留学を考えた大きな理由ですが、特にアメリカはPhDに進む場合は授業料が免除になる上、月々生活できるくらいのお給料ももらえるので、留学であるあるの経済的な問題がなかったのが魅力的でした。

大学院でも化学を続けるきっかけとしては、学部の半数以上が大学院に進む以外でもメディカルスクールやデンタルスクールなど、何らかの形で大学卒業後も学校に行き続ける人が多かったので、ある程度早い段階から卒業後も学校に通い続けることを意識していました。ただ、実際に大学院に出願しようと決めたのは比較的遅く、4年の8月頃でした。というのも、周りの院進を考えている人は昔から化学が好きだったり、親が研究者だったり、中高時代から研究経験を積んだり、長いこと化学と触れあってきた人がほとんどで、自分は高校時代は文系で、大学までは勉強よりも部活(サッカー)に熱中していて、大学に入って理転をしてから化学を始めたので、院に進んだとて付いて行けるのか、やっていける程研究に情熱・興味があるのかの点であまり確信がなかったからです。

そのため、就職することも考え、3年の冬はボストンキャリアフォーラム(ボスキャリ)に参加して、研究系だけでなくはコンサルや金融系の業界など幅広く就職活動をしていました。結果として何社か内定をいただくこともできましたが、同じタイミングでアメリカのOwens Corningの研究開発部署での研究インターンを教授に紹介してもらえたので、3年から4年に上がる夏、2024年の5月から8月までアスファルトの研究室で流動学関連の研究をすることにしました。このインターンを通じて、材料系の研究の面白さを実感し、企業で研究職として働くことを目指し始めました。また、企業で研究を行うにあたり、学士・修士・博士それぞれの学位で関われる研究の深さに大きな違いがあることや、博士号を持つ研究者の問題解決能力の高さを間近で見ることができたことも、大きな刺激となり、大学院に進学し、より専門性の高い研究に取り組む決意を固めました。

3. 出願結果、出願時の状況

  • 全クラスのGPA(Cumulative GPA)が3.65、専攻科目だけのGPA(Major GPA)が3.93
  • 出版論文無しアメリカ化学会の学会(ACS Conference)での研究発表2回
  • 奨学金は授業やら卒論やらで忙しく結果的に締め切りに間に合わず。

合格:ミシガン大学 (ミシガン)、南カリフォルニア大学 (USC)、ワシントン大学シアトル校、カリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)

不合格:コロンビア大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、テキサス大学オースティン校、ジョージア工科大学、ライス大学、ミネソタ大学ツインシティー校

4. 志望校選び

最初から物理化学だけしか見ていなかったので、物理化学のランキングをチェックしながら、立地(都会か田舎か)、治安、物価を考慮した上で20校程度リストアップし、その中から研究が面白いと思える教授が最低でも2人いることを条件に絞りました。最初は8校程度に出願する予定でしたが、できるだけ選択肢を増やすために最終的には10校に出願しました。

内訳としては、多分受からないであろう挑戦校を1つ、五分五分の学校(ターゲット)を6校、滑り止め(セーフティー)を3つ受けました。
まさかの滑り止め2校不合格を除いては、合格、不合格も予想通りではあったと思います。

言い訳っぽく聞こえてしまいますが、私の代はNSF(アメリカ国立科学財団)の資金凍結関連などの問題もありどの学校も合格者を減らしたり、合格を取り消したりと色々と複雑な問題もあったので、もう少し滑り止めを増やしても良かったかなと思っています。

5. 進学先選び

ミシガン、USC、UCSDの3つのVisitation Weekendに参加した中で、ミシガンを選んだ大きな理由は学校、学生の雰囲気です。学校や学部にはそれぞれの雰囲気や特徴があって、実際にVisitationに参加して自分で確かめてみるのが一番だと思いますが、自分はミシガンの雰囲気が一番気に入りました。USCやUCSDはキャンパスが大都会にあり、1年通して天気が良い日が多いので、研究以外にもできる事が多く、学生も研究とプライベートをバランスよく進めている印象でした。ただ、自分の中で博士課程に進学するというのは、20代という若くて、何かをやろうと思えばいくらでも挑戦できる時期で、5年間を研究に費やすことということで、その期間はできるだけ研究に集中したいという気持ちが強かったです。その上で、ミシガンは、ロサンゼルスやサンディエゴに比べると娯楽が少なく、教授や学生と会話をしても、研究メインで生活している印象を強く受けたのでミシガンを選びました。もちろん、人によっては研究だけに集中するより、他の趣味とも両立した方が上手く行く人や、アジア文化やアジア人が多い場所の方が住みやすく、結果的に研究のパフォーマンスも上がる人もいると思うので、人それぞれ大事なものは違うと思いますが、自分の場合は誘惑が多いと中途半端になってしまう事が多いので、できるだけ娯楽の少ないミシガンは研究に集中する上で魅力的でした。

6. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

まだまだ自分もアドバイスなど偉そうにできる立場でもないですし、自分は学部から留学していた上、長いこと研究をやってきたわけでもないので、どれくらい自分の経験談が役に立つかわかりませんが、留学をしようと思うくらい視野が広かったり、行動力があり、大学院に行ける程学ぶことに興味、情熱がある人であれば正直他のことをやってもある程度の成果を出すこともできると思います。それも20代(人によってはそれ以降)という人生で大事な時間の、少なくとも半分(5年)をなぜ大学院で地道な研究をする為に費やすのか、沢山お金がもらえるわけでもなく、大きな賞を取らない限り人から認められることもないのにどうして学びたいのか、研究がしたいのか、この辺りを意識しながら志望理由を考えていることで、受験期の難しい時間や、留学する上での不安が和らぐかなと思います。この記事を読んで、少しでも多くの方が海外大学院進学に興味を持ち、実際に留学を意識するきっかけになれば嬉しいです。

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