仕事を退職・配偶者ビザでアメリカ滞在から、海外大学院合格まで【海外大学院受験記2026-#2】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2026年度の第2回である今回は、今年の秋からシカゴ大学の社会科学修士(Master of Arts in the Social Sciences)に進学予定のきゃんでぃーさんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

2026秋からシカゴ大学の社会科学修士(Master of Arts in the Social Sciences)に進学予定のきゃんでぃーと申します。私は2022年に学部(専攻は社会学)を卒業後、約2年間日本企業の人事職で働いたのち、留学生の配偶者ビザ(F2)でアメリカに2年弱滞在しました。その期間中に海外大学院の準備をゼロから行い、イギリスとアメリカの合計8校に出願、5校から合格をもらいました。学問分野は、社会学に加えて東アジア専攻・人的資源管理専攻と幅広く出願しています。この記事を通して、文系大学院を目指す方や、仕事を辞めてからの大学院への挑戦や社会人経験を生かした出願、配偶者ビザで海外に滞在しながらのステップアップという観点からも参考にしていただければと願っています。

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

私は大学卒業時には大学院(国内・海外ともに)に行くことは検討しておらず、就職活動を行い民間企業に就職しました。その間に結婚を経て夫が海外のPhDに行くことが決まったことで、私自身のキャリアをどうするかについて見直す機会が生まれました。別居のまま日本で私が働き続けるか、アメリカに私も行く(就労許可のないF2ビザになるため、キャリアが途絶える)か、正直とても迷いました。最終的にアメリカへ行くことを選んだのですが、「キャリア」自体はあきらめたくはなかったので、新しく自身のキャリアを紡いでいくという観点で選択肢として出てきたのが「海外大学院」でした。また企業で2年間働く中で、研究したいテーマが明確に生まれたことも、大学院挑戦という選択肢を後押ししました。私のテーマは「社会学の枠組みで日本の多様性・多文化について分析する」なのですが、これを授業や研究を通して深堀することを考えた際、用いたい理論や概念(例えばアイデンティティ、社会的不平等、マイノリティ、差別、など)についての研究の蓄積や現実世界にいかにフィードバックするかということに力を入れている先生・授業が多い点で海外が魅力的だと感じたため、最終的に出願を決めました。

3. 出願前の所属での専攻分野・研究内容に関して

学部時代は日本の大学で社会学を専攻しました。大学院で深めようとしているテーマと直接的な関連はありませんが、当時学んだ社会学の理論や調査についての授業は、今回出願時にWriting SampleやSOPを書く際、とても役に立ちました。

専攻に加え海外にも関心があったため、学部1年で2週間インドネシア大学での短期プログラム、学部2年で韓国の大学での短期語学プログラムに参加し、学部3年時に半年間ソウル大学に正規留学しました。当時はそこまで強く意識していなかったのですが、今振り返ると、現在関心を持っている研究のキーワードとなる「多様性」「同質性」に対する関心が学部時代から育まれ始めていたのかなと思います。こうした海外経験は、出願時にもStatement of PurposeやPersonal Statementの中で、自身の視点がいかに形成されてきたか説得力や将来のビジョンを見せるために活用しました。

4. 海外大学院出願で苦労した点とそれらに対するアプローチ

苦労した点

情報量の少なさ

私が「社会人経験後の出願」かつ「文系」という属性であったことで、出願の進め方についての情報を集めることに苦労しました。全体的に海外大学院の情報を調べた際、理系の方の出願経験の情報が多く、また社会人経験のある方も企業での理系の研究から発展してそれを深める研究のために海外に行くというパターンが多いことから、なかなか自分のような人がどういった準備をし、入学後はどんな学生生活を送っているのかイメージすることが難しかったです。

大学に所属していないこと

出願において多くの大学は推薦状が必要ですが、最低1-2通はアカデミックの推薦書が必要ということで、大学卒業から3年以上経っていた私はそもそも誰にお願いするかということから難題でした。また、所属大学から出願書類の添削等のサポートを利用できずに自己流で進める形になったことは大きな不安要素でした。

後がない挑戦

前述の通り、私は企業を退職した後で完全に無所属の状況でした。ここで落ちてしまっても、会社に戻る/日本で就活という選択肢はすぐには難しく、1年以上また何も所属がない状況になってしまうということで、落ちることへの大きな不安と毎日闘っていました。

困難に対するアプローチ

自分のできる範囲でリサーチ

まずは徹底的に大学院のプログラムを調べて興味のある学校の情報(出願時期・書類・授業料・教員など)をリストアップしました。その際、QSなどのランキングも考慮に入れました。加えてブログを中心に海外で実際に大学院に通う方の情報も探しました。出願先の候補の大学院に通う方のブログから授業や課題などの雰囲気をチェックした他、どんな奨学金に応募したかなども参考にしました。

(少ないながらも)人脈に頼る

海外大学院に通った知り合いはほとんどいなかったのですが、記憶から海外在住の友人や学校の先輩に久々に連絡をしたり、その中で知人の知人を紹介してもらえたりしたことで、数人の方から大学院の選択にあたって気を付けることや出願先の選び方などの情報を得ることができました。

大学院の提供する説明会・プログラムを積極的に活用する

大学院主催のプログラム説明会(出願年の9月〜11月頃に実施が多い)もできるだけチェックしました。一般的な出願情報の案内に終始するものも多いですが、ホームページには書いていない出願書類で特に重視すべき点を説明してくれる大学や、実際に通っている学生のパネルディスカッションで直接学生が質問に答えてくれる時間が用意されているところもあり、参加して役に立ったと感じています。また一部の大学では予約制で学生に直接1対1で質問ができるマッチングしてくれるところもあり、出願希望のプログラムに現在通っている学生に直接出願書類を見てもらって添削やアドバイスを受けたり、実際に通う中でプログラムのメリット・デメリットなども聞いたりすることができました。

XPLANEからのサポート

知人の紹介でXPLANEの存在を知りました。実は私が最終的に通うことを決めたシカゴ大学への出願を強く後押ししてくださった方は、XPLANEで私の自己紹介を見て連絡して下さった方でした。当時シカゴ大学はまだ出願するか曖昧だったのですが、出願の懸念点を相談するとその方がとても丁寧にアドバイスを下さりプログラムの魅力を知ることができた結果、出願することに決めたプログラムでした。XPLANEは様々な属性で多様なプログラムに通う方が集まっているということで、人脈づくりとしても出願のデータベースとしてもとても助けられたと感じています。

5. 出願書類作成に関して(SoP/PS、推薦状、Writing Sample)

SOP/PS

私の戦略は、①自身の問題意識の形成過程②プログラムへのフィット、の2点を軸にアピールすることでした。これらの書類では自身の強みを明確に見せることが重要ですが、私の場合には就労経験が他の出願者との差別化要素として大きいと考えたため、仕事での経験(+学部時代)に触れたうえで、培った問題意識をどう研究を通じて分析したいかを中心的な内容とし、分析に用いたい理論やとりたい授業、指導を受けたい教員を出願先のプログラムとつなげるという形で自身をアピールすることに注力しました。

推薦状

学部時代の指導教員から1通、留学時のプログラムを担当してくださった教員から1通、前職の上司から1通という形で依頼しました。海外への推薦状というものに慣れていない方もいらしたので、海外の推薦状とはどういった書類かを説明した上で、自身の研究したい内容や目指すこと、また学部時代にどのような活動をしたかなどもメールやミーティングで共有し、執筆していただきました。

Writing Sample

私は学部時代のレポートや卒論の内容と大学院で研究したい内容に乖離があったため、自身の強みを見せるためには既存の論稿では強みを見せられないと考え、イチからWriting Sampleを書くという戦略をとりました。大学院で研究したい内容との関連領域で、自身が執筆できる範囲内での短めの研究といった規模感のものを提出しました。

6. 英語の勉強に関して

前提として、学部時代にはIELTsでOverall Score6.0、社会人で受けたTOEICでは890点を取得していました。大学院受験に必要なスコアに大きな差があるという状況ではなかったですが、出願先の求めるスコアには足りていませんでした。

学習のメインは模擬試験のサイトで何度も練習を重ねることでした。最も苦労したのはスピーキングです。私は緊張すると言葉が出てこなくなる(英語に限らず)のため、精神的に英語を話すことへの緊張を和らげるのが重要でした。当時私はアメリカに滞在していたため、英会話の相手をしてくれる友人を探して練習させてもらったり、現地のボランティアに参加し少しでも英語を話す機会を増やしたりすることで、少しずつですが21点程度まではのばすことができました。ライティングもなかなかのびなかったのですが、出願書類の1つであるWriting Sampleを書く中でスコアを上げることができました。

7. 出願先の選定と進学先選びについて

私の出願先の選定の戦略としては、「自身が持つ社会に対する問題意識を深めるために必要な視点・概念・分析方法を学べる、かつ近い問題意識の先生から指導を受けられる」という条件から入り、可能な範囲で広い候補から最適な出願先を絞る、でした。具体的には、前述したとおり私のテーマは「日本の多様性・多文化について分析する」で、人事での就労経験が原体験になっていたことから、学問分野として「人的資源管理/社会学/東アジア」という3つの中からプログラムをリサーチしました。出願先の国はいったん絞らずアメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアなど多文化政策を行ってきた国を中心に幅広く検討しました。各分野でのランキングを参考にするとともに関連研究を読む中で関心が近いと感じた先生の所属する大学も候補に入れるという形で希望する大学をリストアップしていきました。その中で経済面と時間面のコストを考慮に入れ出願の数と順序を決定し、最終的にエディンバラ大学の人的資源管理修士、LSEの社会学修士、UCLの社会学と社会的不平等修士、マンチェスター大学の社会学修士、シカゴ大学の社会科学修士に合格しました。

合格した学校は「人的資源管理/社会学」の2分野にまたがった5校でしたが、そこからシカゴ大学へは主に2つの理由で決定しました。1つ目は自身の研究内容へのフィットです。提供される授業シラバスや教員の研究領域を参照した際、最も自身の希望に沿った研究につなげられると感じました。2つ目は経済的支援です。幸運なことに学内の奨学金で全額授業料が支援されることになったことで、他大学と比較してもかなり経済的負担をおさえることが確実になったことが進学を後押ししました。

8. おわりに:これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

海外大学院の出願準備の期間は、孤独な闘いのように感じることが何度もあると思いますし、それが普通です。しかし、すでに海外大学院にいる方も同じような経験をしてきているからか、質問や悩みに気軽に温かく答えてくれる方は想像以上に多くいらっしゃり、ありがたくも彼らに何度も助けられ勇気づけられました。特に私のように学部卒業後で利用できるリソースやネットワークが少ない方は、恐れずに大学院のプログラムや在校生、知人などに積極的にコンタクトをとってみることを強くおすすめします。海外大学院の出願は、私という人間の経験・アイディア・実現したい未来を立体的かつ説得的に見せる過程だと思います。大学卒業後やキャリアの空白期の出願、学部時代と異なる研究テーマでも、その過程がうまく見せられれば十分に目指せる道であるということを知っていただければ嬉しいです!!

私自身も今後大学院に通いながら自分のように社会人文系/退職後のキャリアとしての海外大学院というテーマで発信を続けていきたいと思っています。より詳しい出願経験なども個人のブログ(https://note.com/s_candy)に記載していますので、関心のある方はぜひ覗いてみてください!

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