1. 自己紹介
はじめまして!前田瑞歩と申します。私は社会人8年目のサービスデザイナーです。現在は、ユーザー中心デザインを軸にした新規事業開発の伴走支援や、デザイン思考研修のファシリテーターを務めています。海外のAIスタートアップを招いたイベントを東京で企画したり、自身も登壇したりするなど、AIとの接点も多くあります。仕事では、夏と冬にそれぞれ約2か月半、サンフランシスコの本社へ長期出張するような働き方をしていました。前職では日系総合電機メーカーで海外マーケティングや事業企画に携わり、社内新規事業の立ち上げにも取り組んできました。
この記事では、そんな私がなぜデザイン分野の海外大学院を目指したのか、そして社会人留学かつデザイン分野という少し特殊な出願をどう進めたのかを、要点を絞ってまとめます。同じように、ビジネス寄りのバックグラウンドからデザインスクールを目指す方の参考になればうれしいです。
2. 大学院留学を志した理由
私が「デザインを学びたい」と気づいたのは大学3年生の頃でした。もともと、何か新しい企画を考えて形にすることが好きだったのですが、それが何という分野なのかは分かっていませんでした。そんな中、あるキャリア教育プログラムに参加した際にデザインという考え方に出会いました。
ここでいうデザインは、色や形を整えることではなく、目の前の人の「本当はこうしたかった」という本音を見つけ出し、それを叶えるための解決策を形にすることだと、私は捉えています。その後、本やネットを通して、自分が求めていた「企画っぽいもの」がどうやらデザインという考え方に近いこと、そしてそれがビジネスとも交差すること、さらに海外のデザインスクールで学べることを知りました。
ただ、その時点ではすでに大学3年生で、在籍していたのもデザインとは関係のない学部でした。今すぐ大学院を目指すのは難しいと感じ、まずは短期コースや実務経験を通じて学ぼうと考えました。実際に、ロンドン芸術大学やCIIDのサマーコースに参加し、その後は仕事を通じて、ビジネスとデザインの接点を少しずつ積み上げていきました。
新卒では大手メーカーに就職し、海外マーケティングや新規事業に携わる中で、自ら起案して推進していた新規事業がローンチ直前で中止になるという経験もしました。その反省から、ビジネスとユーザーニーズ、テクノロジー、社会的インパクトのバランスをどう取れば、よりよい事業を生み出せるのだろうか、ということをずっと考えるようになりました。
その後はサンフランシスコと東京に拠点を置くデザイン会社に転職し、サービスデザイナーとして経験を積みましたが、さらに経験と知見を深めたいという思いが強くなり、出願を決めました。
3. 英語学習とTOEFL対策
英語は、学部時代にサンフランシスコへの1年間の交換留学経験があったことに加えて、仕事でも比較的頻繁に使っていたため、もともと継続的に勉強している状態でした。本格的に大学院留学を考え始める前の社会人4年目には、英検1級も取得していました。
その流れでIELTSは軽く過去問を解き、7.0を取得できました。ただ、出願校の一つに、TOEFL 100点以上を要件とするプログラムがあったため、TOEFLの勉強を1年半から2年ほど続けました。
一番苦しかったのは、90点台でしばらく伸び悩んだ時期です。どこを改善すればいいのかわからない状態だったため、このまま独学を続けるより短期集中でスクールに頼り、正しい方向に努力できるようにしたほうがよいと考え、オンラインの英語スクール(YY TOEFL)を利用しました。
3か月ほど、Writing 2問とSpeaking 4問を毎週1セット提出して添削してもらい、さらに毎週30分のオンライン面談でスピーキング練習も重ねた結果、最終的にはTOEFL 103点に到達することができました。
また、リスニングは全技能に影響すると感じていたため、過去問とYouTubeの英語動画を半々くらいで使って、シャドーイングも継続しました。特にTED-Edの、自分が苦手な分野の動画を聞くことで、基礎知識のインプットも兼ねられたのは良かったと思っています。
4. 出願書類作成について
出願書類の中で特に大きかったのは、奨学金と大学院のエッセイ作成でした。
4.1. 奨学金
情報収集を進める中で、フルブライト奨学金やJASSOの奨学金は大学院出願時期よりも先に締切が来ることがわかったため、私はまず奨学金の書類作成から着手しました。奨学金のエッセイで書くべき内容と大学院のエッセイで書くべき内容は重なるため、結果的に先に取り掛かっていてよかったと感じています。
奨学金の情報はJASSO公式の奨学金情報サイトで探し、社会人やデザイン分野でも出願できるものを一つずつ確認しながら、出願時期などを自分でリスト化して管理していました。
奨学金は以下の選考を受けました。
- しのはら財団アメリカ留学奨学金→合格し、受給予定
- JASSO大学院留学プログラム→合格後、辞退
- フルブライト奨学金→書類通過し最終面接まで進み、不合格
- 平和中島財団→書類不合格
結果、しのはら財団の奨学生として採択され、経済的な支援を得られたことはもちろん、他の奨学生とのつながりを得られたことも、大きな意味があったと感じています。
奨学金の出願準備で特に参考になったのは、経験者の話を直接聞けたことでした。XPLANEでは、過去に採択された方からお話を聞くことができ、とても参考になりました。奨学金については、経験者でも公の場で話せる内容に制約があるため、どうしても知りたいことがある場合は、やはり直接アプローチして話を聞くことが大事だと感じました。
4.2. SoP
SoPは、Admission Coachと呼ばれるコーチに添削を依頼し、フィードバックを受けながら進めました。
4.3. ポートフォリオ
そして、この分野ならではの大学院の出願書類がポートフォリオでした。グラフィックやUX/UI系の方であればすでに作成していることも多いと思いますが、私はビジネスバックグラウンドだったため、最初はどう作ればよいのか分かりませんでした。
National Portfolio Dayなどのイベントで実際に先生方に見てもらう機会もありましたが、ビジュアルデザイン系の教授などが多く、そこで繰り返し言われたのは、「とにかく文字を少なく、ビジュアルで見せてほしい」ということでした。
一方で、私の経験は、戦略やユーザーリサーチなど文字で説明したくなる内容が多く、ビジュアル中心で見せるのが難しい領域でもありました。
そのため最終的には、英語でサービスデザイナーのポートフォリオを調べ、すでに活動している方や学生のポートフォリオを参考にしながら作成しました。ビジネスバックグラウンドでデザインスクールに出願した方から、業務で使っていたプレゼン資料を提出したという話も聞いていたので、自分もそれに近い方向で進めました。
結果として、複数の大学院の面接で「君のポートフォリオはすごくパワフルだった」と言ってもらえたので、方向性は間違っていなかったのだと思います。ビジネス分野だとどうしても文字は増えますが、視覚的な要素もあるプレゼン資料のように整理できれば、一つの形になると思います。
4.4. 推薦状
推薦状については、基本的には現職や前職のマネージャーにお願いしました。一部、アカデミックな視点での推薦状が必要な場面では、美大の社会人プログラムでご指導いただいた美大の先生にお願いしました。大学卒業から時間が経っていて、かつ大学時代とは異なる分野を目指す場合には、仕事上の経験をよく知る方にお願いするほうが理にかなっていると感じました。
5. 進学先選びについて
ビジネス、デザイン、テクノロジーを横断して学べる大学院プログラムは多くなく、さらにデザインやエンジニアリングの学士号を要件とするプログラムもあるため、そうした制約を除いていくと、出願先はかなり絞られました。
アメリカ・イギリスを中心に出願し、その二カ国での私の出願先は以下です。
- カリフォルニア大学バークレー校 MDes→合格、進学予定
- カーネギーメロン大学MIIPS→合格後、辞退
- イリノイ工科大学 MDes→合格後、辞退
- The New School (Parsons School of Design / パーソンズ美術大学), MS in Strategic Design and Management→学費65%免除の奨学金付きで合格後、辞退
- MassArt MDes in Design Innovation→合格後、辞退
- University of the Arts London (UAL / ロンドン芸術大学), MA Innovation Management→合格後、辞退
- Royal College of Art, Innovation Design Engineering MA/MSc (Imperial College Londonとのジョイントプログラム)→合格後、辞退
- School of Visual Arts MFA in Products of Design→面接段階で辞退
- Pratt Institute Design Management MPS→面接段階で辞退
ほぼ全てのプログラムで面接選考があったのですが全部受けるのは大変だったので、第一志望群から合格が出た時点でその他のプログラムは辞退しました。それを除けば、アメリカ・イギリスの全ての大学院プログラムから合格をもらうことができました。
進学先は、最初から一校に絞っていたわけではありません。大学院からの奨学金、卒業時期、Foundation科目の有無、国際情勢など、さまざまな要素が絡むため、結果を見てから考えようというスタンスでした。実際、Parsonsは大学からも奨学金が出て、当初の印象よりも生活費込みでかなり有力な選択肢になりました。
最終的には、長く目指していたイリノイ工科大学と、思いがけず合格をいただいたUCバークレーの間で進学先を悩みました。イリノイ工科大学は知る人ぞ知る戦略デザインの老舗で、UCバークレーは比較的新しいプログラムであり、AIやAR/VRなど先端技術とデザインの交差点に強く、よりエンジニアリング寄りです。
それでもUCバークレーを選んだのは、この1年、あるいは半年を見てもAIの進歩が非常に速く、ビジネスとデザインの分野でも社会に求められる能力が急激に変化していると感じていたからです。すでに仕事で戦略デザインに一部触れていたこともあり、より知らない世界に飛び込みたいと思ったこと、先端技術のようにまだ答えがない分野でデザインを考えることに強く惹かれたこと、そして戦略を考えるだけでなく、それを形にし実装する視点こそがAI時代にますます重要になると感じたことが、大きな理由でした。
実際、UCバークレーのMDesは倍率が約10倍とのことで、この事実からも今の時代に注目されている分野なのだと感じました。
加えて、UCバークレーのMDesはコホートの人数がイリノイより多く、エンジニア、デザイナー、ビジネス系など多様なバックグラウンドが意図的にミックスされている点にも魅力を感じました。他学部の授業を選択科目として取れること、プログラム外のネットワークや学内機会が豊富なこと、そして結果的に在学期間が短く、トータルコストも抑えられそうだったことから、UCバークレーへの進学を決断しました。
6. これから出願する人へ
社会人留学で、しかもデザイン分野となると、体験談や情報はまだ多くありません。でも蓋を開けてみるとそのような人は実際少なくなく、大学院もそのようなユニークな経験を持つ新時代のデザイナーを求めています。
トップ校合格や奨学金獲得、デザインという未知の分野への挑戦など「自分には無理かも」と思ってしまいがちですが、自分でまず一歩踏みだしてみないと何事もわからないものだと痛感しました。ぜひ皆さんも、恐れず挑戦してみてください。
