短期留学のすゝめ【XPLANE 出願ガイド】

本記事はXPLANE TIMES(ニュースレター)第8号(2025年10月30日発行)に掲載予定の記事です。

目次

0. はじめに

数週間から数ヶ月という比較的短い期間で、海外の文化や語学、学びに触れることができる短期の留学プログラムは、長期留学に比べてハードルが低く、より多くの留学を視野に入れている学生にとって現実的な選択肢です。授業などが含まれる交換留学という形から、現地で実践的な研究活動に参加したりインターンをするという短期研究留学・インターンなどの形式があります。語学力や異文化適応力を身につけるきっかけともなるこの経験は、将来の本格的な海外留学/進学において大きな助けとなります。

本記事では、大学院留学を視野に入れている学生に向けて、学部生が実際に留学するための方法、費用面での支援制度や資金の工面方法、そして短期留学を通じて得られるメリットについて、体験談とともに具体的に解説します。短期留学に少しでも興味がある方にとって、次の一歩を踏み出すための参考になれば幸いです。

1. 短期留学を始めるには – 資金面の確保と必要な準備

短期留学(数ヶ月の研究室訪問・インターン・交換留学)を始めるにあたり、最もネックになるのは資金の確保でしょう。短期でどこかに行きたい!と思った際にどのような方法があるのか、カテゴリに分けて紹介します。

1.1. 日本の各大学が用意している留学プログラム

それぞれの大学で(または学部や学科単位で)独自に設けている海外留学プログラムを利用するケースです。その大学が提携している国外の大学へ交換留学という形で半年から1年ほど行けるものから、行き先は志願者次第で数週間から数ヶ月の研究留学の経済的支援をするものまで、幅広いプログラムが存在します。プログラムによりますが、上限の範囲内で飛行機代と現地での宿泊代をカバーされ、大学によってはさらに日当も支給されます。

こちらでは、選考が学内のみに絞られるため、分野を問わず倍率も他の選択肢より低くなりやすく、さらに大学によっては資金援助額も潤沢で、経済面でもおすすめの方法となります。また、やりとりも大学内で完結するため、トラブルが起きた際の対処も比較的スムーズなイメージがあります。例えば、筆者が学部のプログラムを利用して短期留学をした際は、ちょうどコロナが広まり始めた時期だったためロックダウンなどの影響で留学を早めに切りあげることになったのですが、飛行機の再予約やお金の払い戻しなどのやり取りはスムーズに行えました。(体験談・ケース1~3参照)

1.2. 留学先の大学が用意する短期プログラム

留学先の大学が、短期プログラムを用いて海外からの学生を受け入れている場合もあります。国外研究系であれば、渡航費まで支援してくれているところは少ないですが、例えばMichingan 大学がこのような非公式の研究インターンをまとめており、その中には留学生でも応募資格があるものがあります。興味のある大学が独自に留学生向けのプログラムを展開しているかも知れないので、HPをチェックしてみましょう。

また、国内にはなりますが、沖縄科学技術大学(OIST)の提供するインターンシップでも、英語を用いて数カ月間研究を行うことができます。こちらは、渡航費と滞在費、そして実習手当が支給されます。理系の学部生から大学院生、卒業後の方まで広く応募可能ですが、OISTでの博士課程を検討する方の応募が推奨とされています。

1.3. 文科省などの公的機関が推進している海外留学プログラム

大学や学部が独自に用意するものとは別に、文部科学省や経済産業省などの公的機関が推進する留学支援プログラムも存在します。これらは日本全体としてグローバル人材を育成することを目的に設計されており、経済的な支援や制度の安定性、プログラムの質の高さが魅力です。一方、公的機関ならではの手続きの煩雑性や融通の効かなさなどが、留学計画の足枷となる場合もあります。代表的なものとして以下のようなものがあります。各プログラムの詳細については個別のサイト等をご確認ください。

トビタテ!留学JAPAN

文部科学省が2013年から主催する、全国規模の留学促進キャンペーン。高校生・大学生を対象に、大学での学習に加え「実践活動」(インターンシップやフィールドワークなど)を行うことが特徴です。分野別のコースや柔軟な留学形態が用意されており、自主性が重視さます。理系文系問わず応募できます。(体験談・ケース4参照)

ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ

経産省とEUによる、理系学生向けのヨーロッパインターンシッププログラム。3か月ほど現地で語学研修を行い、約6か月企業でインターンシップを行います。語学学校及びホームステイ代は無料になる他、事前準備資金として約80万円が支給されます。また、インターンシップ中も月1000ユーロ程度お給料が貰えます。さらにベルギー、ブリュッセルでの研修及び中間報告会のホテル代も無料です(ただし移動費は自費。オンライン開催の可能性もあり)。参加企業は毎年異なるが一定の傾向あります。

学部3年から博士まで応募することができますが、国によってインターンシップの学生の扱いが異なるので、学部生の場合渡航可能な国が限られます(毎年法律が変わるため要確認)。書類選考と面接を突破した学生に、本プログラムに参加中の在欧企業の情報と、インターンシップの業務内容が開示されます。その中から自分の専攻に沿ったものを選び、最大3社まで応募可能です。希望順位をつけることはできず、例えば、A、B、Cの3社に応募し、C社が最初に採用を決定した場合必ずC社でインターンシップを行うことになります。行きたい国と自分の専攻を加味してよく選ぶ必要があります。今までの実績はこちら。英語要件はTOEIC650と低めに設定されています。(体験談・ケース5&6参照)

1.4. その他奨学金団体などが運営する留学プログラム

政府機関や大学以外にも多様な民間団体、公益法人、財団法人、国際機関などによっても、短期留学プログラムは提供されています。民間奨学金団体による支援プログラムの場合、大学や公的機関主催のものに比べて柔軟度が高いことが多いです。代表的なものとして以下のようなものがあります。各プログラムの詳細については個別のサイト等をご確認ください。

NAKATANI RIES 中谷財団によるジョージア工科大学での1ヶ月半の研究留学

中谷財団という民間財団が主催する、理系学部生向けの留学プログラムです。夏休みの期間一ヶ月半アメリカで研究インターンを行い、最終週と帰国後に成果発表を行います。この発表次第で、次の春休みにさらに二ヶ月ほどの研究インターンを追加で行うことができます。夏休みのプログラムの対象大学はジョージア工科大学で、希望をもとに研究室のマッチングがあるため様々な分野に対応しています。一方、春休みのプログラムの対象はジョージア工科大学、ハーバード大学、カルフォルニア大学デービス校、アーヘン工科大学、DFKI(ドイツ人工知能研究所)にある特定の1つの研究室とマッチングされ、同じく多様な分野に対応しています。渡航費、宿泊費、食費等ほとんどの費用が提供されるため自己負担はほぼゼロです。プログラムのメインは研究ですが、週末にバーベキューや観光等研究以外のイベントも充実しています。(体験談7参照)

Tomodachi-STEM Women’s Leadership and Reserach Program

官民パートナーシップである TOMODACHI イニシアチブが主催する女子理系学部生向けの留学プログラムです。5週間アメリカのライス大学で研究インターンを行います。さらに英会話クラス、クラブなどのキャンパスイベントや現地の日本人との交流などがプログラムに組み込まれており、国際交流の機会が多いプログラムになっています。希望をもとに研究室のマッチングがあるため様々な分野に対応しています。こちらも渡航費、宿泊費、食費等カバーされるため自己負担はほぼゼロです。

BXAI Asian Future Leaders Scholarship Program (AFLSP)

アジア圏の大学間交流を対象とした奨学金制度で、提携大学(北京大学、清華大学、香港中文大学、香港科技大学、上海交通大学)への留学を広くサポートしています。金銭面の支援(最大$12,500)に加え、夏に奨学生全体が集まるサマープログラム、各地域での不定期な奨学生ミートアップの開催などがあります。応募資格は慶應義塾大学、京都大学、九州大学、大阪大学、東京大学、早稲田大学いずれかの学生であることです。

DAAD・ドイツ学術交流会

ドイツの学術交流を世界に広める目的で設立されたドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst、 略称:DAAD)の日本支部です。年度にもよりますが、短期の研究滞在費用をサポートするプログラムがあります。学部生から大学院生、博士号取得後までかなり幅広いオプションがあります。こちらはプログラムが提供されるというより、資金援助がメインの形になります。RIES Germanyという研究インターンのプログラムもありますが、こちらは米国、カナダ、英国、アイルランドの大学に在籍している場合のみ応募資格があります。

1.5. 自費留学または研究室の個別の予算での滞在

大学などの仲介を挟まずに、個人の資金で全て賄うという手段もあります。最も融通が効き自由に行動できる一方で、最も高額な手段になります。取得する単位数によって学費が増減して、フルタイムの学生として授業をとると1セメスターで500万円ほどすることも。単位は取得できても、学位は取得できないようなNon Degreeプログラムも多いので確認が必要です。稀なケースではありますが、研究室が短期留学用の予算を持っていることもあります。1か月から3ヶ月ほどで教授の知り合いの研究室に訪問することが多いです。(体験談・ケース1参照)

2. 短期留学のメリット・デメリット

 ここでは、実際に短期留学を経験した学生の体験談をもとに、そのメリットとデメリットを整理してみます。個々の体験は多様ですが、多くの声に共通して現れる点をまとめると、短期留学が持つ可能性と限界が見えてきます。詳しい体験談は、次のセクションをご参照ください。

短期留学のメリット

海外大学院進学への布石

短期留学は、海外大学院を目指す上で大きな足がかりとなります。授業を受けたり研究室を訪問したりすることで留学後の学びを具体的にイメージできるほか、現地教授から推薦状を得られるケースもあります。さらに、出願書類や SoP に書ける経験が増えることで説得力が増し、生活面を体験することで進学への心理的なハードルが下がる点も大きなメリットです。

人的ネットワーク

現地の学生や研究者と交流できることも短期留学の魅力です。気の合う友人や将来のキャリアに役立つつながりが得られることもあり、日本人学生やプログラム卒業生とのネットワークも広がります。これらの人間関係は、留学後も続く貴重な資産になることがあります。

キャリア・自己理解

異文化や生活習慣に触れる経験は、自分の将来を考えるうえで大きな刺激になります。都会や田舎といった環境の好みを実際に体感できたり、海外での暮らしを続けられるかどうかを判断できたりするのは重要な経験です。また、留学準備や出願過程を通じて、自分の研究テーマや進路を改めて言語化する機会にもなります。

生活面・経済面

交換留学の場合、日本の学費で海外大学の授業を受けられることがあり、金銭的に有利になるケースもあります。さらに、一部プログラムでは奨学金や生活費が支給されるため、経済的な負担を軽減しながら留学を実現できる点も魅力です。

短期留学のデメリット・注意点

研究・学問面の限界

滞在期間が短いため、研究成果を出すことは難しく、推薦状や共同研究に直結する可能性は低めです。授業中心のプログラムが多いため、研究を深めたい人にとっては物足りなさを感じることも少なくありません。

人間関係の制約

短い滞在では、現地の人や研究者と深い関係を築くことは容易ではありません。交流はできても、帰国後も続くような強固なネットワークを作るには積極的な行動と運が必要です。

制度・環境の制約

授業料や渡航費が高額になることは避けられず、資金源の確保がどうしてもボトルネックになります。さらに、単位互換が難しかったり、Pass/Fail評価が海外院出願に不利になることもあります。準備や応募に多くの労力を要するため、日本での研究が中断されるリスクもあります。また、プログラムの内容によっては自由に研究テーマを選べず、メンターや受け入れ環境に左右される点もデメリットとして挙げられます。

3. 体験談

ここでは、XPLANEのファシリテーターが過去に経験した短期研究留学についての体験談を紹介します。特に、留学経験がその後の進路にどのような影響を与えたのかに焦点を当てています。なお、以下は当時の体験に基づく記録であり、現在のプログラム内容や制度については必ず最新情報を各自でご確認ください。

ケース1. 学部時に個人応募でアメリカに1セメスター、修士時に大学のプログラムでアメリカに1ヶ月滞在。現在はアメリカでPhD

(1回目の短期留学)
プログラム名:個人応募(大学ウェブサイトから直接)
行き先:アメリカ
期間:日本学部2年ー3年(2月から5月)

Q. 応募に必要だった書類は?

基本的な海外大学,大学院のApplicationに必要な書類で覚えている限りでは
①CV
②SoP
③受講したい講義のリスト
です。

Q. 経済的支援は?

留学を決めたのが直前の10月とかで奨学金はどこも応募できず、何個か交渉してみたがどこも無理でした。たまたま格安で知り合いの家に泊めてもらえたので、学費 $30000 近くを自費でカバーをしました。

Q. どうやって知った?

留学には興味はあったけど特に何もしていなかった当時に、名前だけ知っている大学のウェブサイトで見つけました。どうせ受からないだろうし、受かってから色々考えれば良いかという軽い気持ちで応募しました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

実際の海外の大学生と同じように、授業を受けたり、学生生活を過ごせたのが最大のメリットだったと思います。実際に授業を受けて、学生と交流して、初めて心から大学院は留学したいと思いました。セメスターの後半では、海外大学院留学を見据えて興味のある研究室を訪問したり、推薦状を書いてもらえるか頼のむなど、今後の布石になるようにできる限りのことをしました。また、単純に気の合う友人も何人かできた、今でも関わりがある関係が作れたのはとても良かったです。
意図はしてませんでしたが、日本の春休みを挟んだこともあり、日本の大学を降年することなく留学できたこと、単位互換も少しできたことは思わぬメリットでした。

Q. やって良かったこと

授業は楽しかったのもあり、全力で取り組んだのは良かったです。結果的に、成績も良く先生には覚えてもらい大学院の推薦状も書いてもらえました。また、いろんな人と関わりを持つようにも意識しました(全力で遊びました)。おかげさまで大学院留学のときの繋がりにもなるネットワークや、アメリカ生活のアドバイスを聞ける人が増えてたのも思わぬ収穫でした。

Q. デメリットは?

授業料高すぎ(留学は計画的に。奨学金は早めに応募を)。
学部前半の留学は、人によるとは思いますが授業も多く、研究とは少し違うので留意。

(2回目の短期留学)

プログラム名:当時の日本の所属大学の研究訪問プログラム
行き先:アメリカ2大学,複数の研究室
期間:大学院1年夏・3週間

Q. 経済的支援は?

45万ほどの支給+日当で全ての出費(航空券・Airbnb・交通費・食費などなど)をカバー。博士留学を見据えて,興味のあるラボを訪問しました。

Q. どうやって知った?

大学の留学支援ポータルを見て、説明会に行って詳しい詳細を知りました。年2回の公募を当時はしていました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

留学したい研究室を訪問することができ、海外大学院出願にとても助かりました。学部の留学と違って、自分の研究を紹介してアピールをできたので大学院留学の合格に一助してたかもしれません。他にも現地の大学院生と交流して、内部情報や暮らし方を知れたことや、自分の足で現地をのびのびと散策できたのはとても良かったです。

Q. やって良かったこと

自分の研究を発表してアピールをできたこと、実際の住むことをイメージしながら現地を散策、学生に話を聞くことはやって良かったです。

Q. デメリットは?

期間が短すぎて研究はできません。なので推薦状をかいてもらうことも難しいとおもいます。また友達というほど深い関係もできにくと思います(筆者の問題かもです。。。)

ケース2. 学部時に大学の交換留学で香港とオーストラリアに1セメスターずつ滞在。現在はアメリカでPhD。

プログラム名:日本の所属大学の全学交換留学(1学期から1年)
行き先:香港・オーストラリア
期間:学部3年秋学期〜4年春学期

Q. 応募に必要だった書類は?

交換留学の枠組みでは、大抵学内選考に通過すれば、よほどのことがない限り留学先の大学にも受け入れてもらえます。学内選考の詳細については各大学の応募要項等を確認してください。

Q. 経済的支援は?

1.4に記載のあるAFLSPから奨学金を受給し、月17万円ほどの支援をもらっていました。そうした奨学金がない個人も、申請すれば大学から月5-7万円の支援を受けられるようでした。筆者の場合、AFLSPのおかげで金銭面的には日本にいた場合よりむしろ生活費等の負担が減りました。留学を考える際よく金銭面の問題が挙がりますが、そのようなケースもあるということを知っておいて頂けると留学に対するハードルが下がるかもしれません。

Q. どうやって知った?

学部入学前から留学に興味があり、留学フェアなどに積極的に参加し、大学の留学情報ページを定期的に確認していました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

交換留学当時はまだ海外院留学を真剣に考えていなかったため、海外大学での経験を積むという目的で行きました。一般的に授業料が非常に高い海外大学の授業を日本の大学の学費で受けられるのは大きな金銭的メリットだと思います。ただ成績評価がPass/Failだけで与えられるなど単位互換されにくいことがあるため、もし留学中の成績を海外院出願時に提出する、もしくは少なくともホーム大学の成績表にグレード込みで載るようにしたい場合は、留学先の大学に要確認です。同様の理由で、教授から成績評価なしの軽い気持ちで受けている交換留学生の一員と思われることがあるので、もしグレード評価で受けている場合は授業の担当教員にその旨を伝えて「この学生は真剣に受けている」と理解しておいてもらうのも大事かもしれないです。

Q. やって良かったこと

短い滞在期間では、授業から多く学ぶことよりも、海外生活の経験を積み活動範囲を広げることが目的と割り切り、趣味を通じて現地の人たちとの交流を広げたり、課外活動として香港の日本商工会議所の方とお話しし、香港におけるサイエンスと社会の融合の取り組みを探求する計画を立てたりしていました。当時は香港デモの影響により様々なことが混乱に陥り、留学前に想定していた典型的な留学生活と全く異なる留学生活を送ることになりましたが、人生経験として非常に良かったです。理想の留学生活像にとらわれず、柔軟に日々をできるだけ楽しむことが大事だと思います。

Q. デメリットは?

交換留学は基本的には授業を受けることがメインのため、海外院留学を見据えてであれば、自ら動かない限り研究の機会などはほぼないことに留意してください。

ケース3: 学部時に大学のプログラムでオーストリアに2ヶ月滞在。日本で修士を取得後、現在はドイツでPhD。

行き先:オーストリア
期間:2020年2月頭~3月下旬。学部4年の終わり頃

Q. どんなプログラム?

当時の所属学部の短期海外滞在プログラムを使いました。日本国外への研究室への短期滞在(3週間〜3ヶ月)の滞在費を支援してくれるプログラムで、航空費・宿泊費・海外保険やその手続きなど、全てカバー・サポートしてくれる上に、日当ももらえました。研究室は自分で探して交渉も自分でする必要があるが、先方の許可さえもらえれば原則世界中どこに行ける、柔軟なプログラムです。

Q. 応募に必要だった書類は?

①先方の先生のサイン付きの受け入れ許可証、②現地での研究計画書と渡航計画書、③CV・指導教員からの推薦書・これまでの活動状況などを書いた書類 (SoPに近いもの)、④必要費用(航空券代、宿泊費代など)の概算、などでした。学部内部の書類選考のみで、面接などはなかったです。

Q. 経済的な支援は?

65万円の支給を受けました。内訳は、往復の飛行機代+2ヶ月の宿泊費(広いAirbnbを一人で借りてました)+2000円/dayの日当(お小遣い)で、実費は現地で観光する以外はゼロでした。留学の時期がコロナの始まりと被ってしまったため、最後の1週間にコロナがとんでもない勢いで広がって留学継続不可になり、予定がめちゃくちゃになりました。アパートが閉鎖したり、飛行機を取り直す必要があったりと、予定外の出費がかなりあったが、全てプログラムが払ってくれました。そのため、実際には+20万くらいの支援を受けることができました。その他、海外保険等も全てプログラムが手続きをしてくれました。

Q. どうやって知った?

学部4年の9月ごろ、学部からのメールで知りました。当時は、修士が終わったら海外行きたいとなんとなく考え始めていた頃でした。留学経験がないので、短期でどこか行けたりしないかと知り合いに相談していたその日の夜に学部からこのプログラムのメールを受け取りました。ちょうど情報収集に敏感になっていたので、見逃さなかったのだと思います。

Q. 受け入れ先はどうやって見つけた?

当時の指導教官の伝手で紹介していただきました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

第一に、ヨーロッパの研究室の雰囲気を知れた貴重な機会でした。ドイツ語圏の生活スタイルを知れたことで、PhDでドイツに出願する際の心理的なハードルがかなり下がりました(というかモチベーションは確実に上がりました)。また、推薦状を書いてくれる国外の先生を一人確保できたことも、大きなメリットとなりました他、オーストリアで研究経験があると言うのは、ドイツ・オーストリアでPhDをしたいという内容のSoPを書く上で間違いなく有用な情報になっていました。
出願に限らず、食生活や、電車やバスの乗り方など、本当に最低限のことはすでに経験できたため、実際にこちらでPhDを始める際に本当に楽でした。さらに、CVに「留学経験あり」がかけるようになったことで、様々な申請書等で自分を盛ることができるようになり、日本での申請書が通るようにもなりました。

Q. やって良かったこと

短い滞在だったのと、研究も大きなプロジェクトでもなかった(まだ学部生だし)ので、研究以外に現地の文化になるべく触れるようにしました。ウィーンのホーフブルク王宮での舞踏会に参加する機会があり、ヨーロッパでの生活への魅力を感じ、モチベーションが上がりました。

Q. デメリットは?

2ヶ月と短い滞在だったので、深い友達はあまりできなかったです。本当に一瞬だったので、もっと積極性を持って色々行動するべきだったとも思います。

ケース4. 学部時に大学の交換留学とトビタテを併用し、フィリピン・イギリス・ウガンダに合計1年間滞在。Erasums Programで修士を取得後、現在はスイスでPhD。

行き先: ①フィリピン、ヌエバビスカヤ州立大学(実践活動) ②イギリス、シェフィールド大学(交換留学) ③ウガンダ、NaCRRI、 National Crops Resources Research Institute (イギリスのクリスマス休暇を利用、実践活動)

Q. 経済的支援は?

 月の生活費(ただし地域ごとに差あり)、留学準備金の支給のほか、学部5年目の授業料の免除を受けました。どの地域でも十分生活できる額でした。特にイギリスについては、正規で留学するとかなりの金額なので、日本に納めた学費であの授業・環境を経験できるのは、とてもコスパが良いです。

Q. 留学の目的は?

将来は途上国の農業に関わる仕事がしたい、特に研究、特にその時は植物病理の分野で関わりたいと思っていました。そのためのステップとして、留学を通して、それに携わる人から話を聞きたい、現場を見たいと思っていました。また、外国まして途上国で長期間生きていけるのか、自分の適性を知る意味でも留学したいと思っていました。

Q. 留学先はどうやって決めた?

フィリピン
学部3年目の夏にNGOインターンでフィリピンに渡航していて、その時にヌエバビスカヤ州立大学の先生と知り合いました。上に書いたような目的と、フィリピンにはインターンで思い入れがあり、もう一回フィリピンに行けないかと思っていました。結果、MOAを作って実現しました。たまたまMOAの話が私がフィリピンに行く前に上がっていたらしく、日本の大学の先生とフィリピンの先生の力を借りて実現することができました。
イギリス
シェフィールドは交換留学先のリストの中から、イギリスで植物の勉強できそうなところだったので選びました。イギリス・植物の時点で選択肢はあまり多くなかったです。ちなみに、イギリスでも研究を一応しました。渡英してから学部3年生(向こうでの学部最終学年)で、日本の卒論的なモジュールに登録し、植物病理の先生のところで小麦のプロジェクトに少し着手しました。
ウガンダ
トビタテの友人でウガンダでインターンしている友人がいて、彼女の力・紹介のおかげで、ウガンダでのJICAのプロジェクトサイトに行きました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

将来やりたいことをじっくり考える機会です。留学そのものも大事だが、留学前の応募書類・面接の準備段階も非常に意味があったと思います。色んな人に添削や話を聞いてもらって、それまでなんとなく興味を持っていたことをブラッシュアップし、最終的に文章にまとめる経験でもありました。特に、申請書を盛る方法などを学ぶ良い機会でした。また、(これはトビタテ特有かもしれませんが)自分オリジナルの留学ができるため、ユニークな留学をしている人がたくさんいます。
他のメリットとしては、将来の選択肢が増えました。色んな人に出会える他、様々なキャリアを知ることができ、日本の外にも面白そうなことはいっぱいあることを知れました。また、海外生活や正規留学へのハードルが下がり、どうにかなるというメンタリティも身につきました(多分フィリピン)。海外のラボがどんななのかのお試しができることも大きなメリットでした。

Q. デメリットは?

研究をゴリゴリやりたい人には交換留学が良い選択かどうなのかわからないです。交換留学自体はあくまで授業中心だし、留学準備にもある程度エネルギーを費やすので、なかなか腰を据えて実験ができませんでした(特に生物系?)。交換留学、欧州修士を経験して、ストレートで日本で修士まで研究をやった人との差も感じます。あくまでお客様的な感じで、先生からお給料もらってやるPhDとは異なることを理解すると良いと思います。

ケース5&6. 学部4年または修士1年次にヴルカヌス・イン・ヨーロッパに応募し1年間の留学。その後 Erasums Programに出願し修士。

Q. 行き先とタイミングは?

修士1年次に1年間、行き先はイタリアです。

私は学部4年次に1年間で、スペインでした。

Q. 応募に必要だった書類は?

①応募申し込み書類の記入
②英和での小論文(書くべき内容は、なぜヨーロッパか、インターン先でどのように貢献できるか、将来どうなりたいかなど)
③教授からの推薦状(こちらも英和)
④英語要件(TOEIC650以上、IELTS6.0以上、TOEFL ibt 70以上)

Q. 経済的支援は?

事前準備金80万円(航空券、海外保険、ビザ申請費用などに使用)の他、3か月の語学学校、及び朝食夕食付きのホームステイ代がカバーされました。私の場合、ベルギーブリュッセルで行われた研修、及び同地で開催された中間報告会に参加するためのホテル代計4泊5日分。渡航費から語学学校、毎月の奨学金が出るためかなり条件が良いです。日本からヨーロッパに行けるプログラムでこんなに手厚いのはあまり無いと思います。

Q. どうやってプログラムを知った?

大学の留学支援の先生からの紹介で知りました。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

年単位で留学する前に1年間のお試しが出来て良かったです。プログラムの間に現地で研究室見学を行いました。ヨーロッパは特に何か国語も出来る人が多く、ヨーロッパ出願時に英語以外の言語力証明が出来るようになるのも強みです。このプログラム終了後に実際にヨーロッパの修士に進学をしました。

いきなり海外大学院へ進学する前に、1年間帰る場所がある状態で海外留学ができてよかったです。また、大学で授業を受けるのではなく企業でインターンシップをするという特別な体験ができたうえに、海外大学院に出願する際の推薦状をインターンシップ先の上司から貰えました。

Q. やって良かったことは?

研究室見学を行ったときにその先生からエラスムス修士を教えてもらったのでとても良かったです。

同期とヨーロッパ中を旅行しました。

Q. デメリットは?

1年休学をしなくてはならないことはデメリットとも言えます。しかしヨーロッパは学生の年齢は関係ないので気にする必要は無いとも感じます。この留学プログラムはインターンシッププログラムであり企業に派遣されるので、交換留学、研究留学とは異なることに注意が必要です。しかし修士や博士課程の派遣者の場合、企業のR&Dに派遣される場合もあるので研究要素が強い場合もあります。また、研修内容が正確に決まっていないこともあるため、絶対に研究がしたい/この業務をやりたいと決まっている場合はおすすめできないです。

ケース7. 学部3年で中谷RIESプログラムに参加し、ジョージア工科大学に1カ月半滞在。現在はアメリカでPhD

Q. 行き先は?

アメリカです。このプログラムは二段階に分かれており、私は一段階目(RIES)のみ参加しました。RIESではアメリカのアトランタにあるジョージア工科大学にて、いくつかあるホスト研究室の1つでインターンを行います。
このプログラムの最後に行う成果報告にて選抜され、希望する場合、ARIPというアドバンスプログラムに参加できます。こちらの派遣先は、ジョージア工科大学、ハーバード大学(アメリカ)、UCDavis(アメリカ)、アーヘン工科大学(ドイツ)、DFKI:ドイツ人工知能研究所(ドイツ)の中から選択できますが、研究室はそれぞれの大学につき1つ決まった場所に派遣されます。

Q. 留学期間は?

日程は毎年微妙に変わりますが、RIESは夏休み期間のうち6週間です。私は学部3年時に参加でした。
(ARIPは次の春休みに約2カ月間自分でスケジューリングする)

Q. どうやってそのプログラムを知った?

たまたま理学部の掲示板に張られていたポスターを見ました。聞いてみると他の人は先生からの紹介などが多かったです。今は有志が毎年説明会をしているためより知りやすいかもしれません。

Q. メリット・海外院留学への影響は?

1. 国外の教授の推薦状確保
研究室のPIに恵まれ、研究インターンの最終日に長文メールで君はこのラボでこのようなことをしてくれたというまとめと、大学院留学について何かあったらなんでも質問してほしいこと、推薦状はいつでも書くよということが書かれたメールがPIから届きました。私はもともとかなり前向きにアメリカ大学院留学を考えていたため、その場で来年推薦状をお願いするかもしれないことを伝え、実際応募時の推薦状を書いてもらいました。応募先の分野と全然違う研究をされている方だったのでこれがどれくらいポジティブに働いたかはわかりませんが、学部卒で大学院に応募する場合にネックになる、推薦状を3人の異なる教授に頼むというハードルが少し低くなったという意味で行ってよかったと思っています。

2. PhDをすることがどのようなことか見聞を広げられた
学部生の段階でアメリカでの研究生活がどのようなものか体験できるのはとても貴重で、プログラムの一部として私の年は現地のPhD学生を呼んで座談会のようなものもしてくれました。さらに現地の学生と交流するプログラムが多かったため、雑談としてPhDがどのような感じか色々と聞くことができました

3. 留学に興味のある学生と繋がれる
事前ミーティングとしての国内旅行など様々な企画をしてくれ、年一回新年会があるなどプログラム終了後の卒業生の繋がりも盛んなため、興味の近い学生と仲が深まるという点でもありがたかったです。

4. 資金が全額カバーされている
飛行機や宿泊費、食費までカバーされるため、やや余裕のある生活ができました。

5. 自分が本当にPhDをその国でやりたいのか考える機会
留学先のアトランタはかなりの大都会であるため、毎日の生活の中で自分は都会ではなく郊外か田舎で静かにPhDをしたいということに気づくことができました。実際出願時は全て郊外or田舎の大学に出願しました。逆に、ARIPでUCDavisに行ったことで、自分は田舎に行くと孤独を感じでしまうため向いていないと思った人や、アメリカでの食生活に耐えられないと気づいたため日本でPhDを選択した人などもいました。

Q. やって良かったことは?

時間をかなり自由に使えるので、メールを送って現地の興味のある研究室を訪問しました。実際この研究室に出願することはありませんでしたが、アメリカのかなり著名な教授でも外国人学部生の訪問に時間を使ってくれるのだということがわかり、やや出願のハードルが下がりました。
また、JSA(Japanese Student Association)など様々な集まりに顔を出したことで仲の良いアメリカ人の友達ができ、SoPの添削など色々手伝ってもらうことができました。

Q. デメリットや注意点は?

留学期間が1カ月半と短いため、その期間内に成果報告会のための研究結果を出すのにプレッシャーがあります。ARIPは毎年5つの枠すべてに人を派遣しているわけではなく、成果や発表方法によってかなりシビアに選抜されます。そのため、こちらを本命にしている場合はある程度研究発表に力を入れる必要がありますが、これを1カ月半でするのは至難の業です。特に、メンターとの相性やメンター側にどの程度教えるモチベーションがあるか(メンターはボランティアのため)が重要になるという運要素が大きいためその意味でややストレスがかかります。

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