XPLANE SoP執筆支援プログラム 2023年度実施報告【活動紹介】

XPLANEでは2020年8月、海外大学院出願の際に必要な書類の1つであるStatement of Purpose (以下SoP)の執筆支援制度「XPLANE SoP執筆支援プログラム」を立ち上げました。本プログラムは、SoP執筆のためにアドバイスをもらいたい出願予定者に対し、後輩のために執筆支援をしてくださる留学経験者のメンターをXPLANEコミュニティ上でマッチングし、出願に向けてSoPドラフトを練り上げていくものです。

多くの方の助けもあって、4年目の2023年度は「メンタリング形式」で過去最高の74名の出願予定者のSoP執筆支援を行い、そのうち少なくとも50名の方の海外大学院へ進学が既に決定ました。また、今年度から導入した「完成稿フィードバック支援」形式では32名の方の完成済SoPに書類上でフィードバックを行いました。

8月から2024年度のプログラムが始動するのにあたり、本記事ではXPLANEを代表する活動となった本制度の概要の説明と昨年度の実施報告をさせていただきます。以下の昨年度までの報告記事も併せてお読みください。また、今年度は報告記事だけでは伝わらないプログラムの内情も伝えるべく、2024年7月号のXPLANE TIMES(ニュースレター)では2023年度プログラムに参加した留学志望者・メンターの組へのインタビュー記事も掲載しています。こちらもぜひお読みください。

目次

1. メンタリング方式について

1.1. プログラム概要

本方式では、留学志望者1人に対してメインメンターとサブメンター合計2人の留学志望者をマッチングし、6回程度の個別オンラインミーティングを通じてSoPの執筆を支援します。

1.2. プログラムの特徴

  • マッチングした留学経験者に支援を丸投げするのではなく、ライティングセンター教育学の専門家から監修を受けたカリキュラムを提供しているのが最大の特徴です。個別支援の開始前に留学志望者にはワークショップ・メンター双方には指導法の手引きを提供し、スタンダードな前提知識に基づいて支援が行われるように注意しています。
  • カリキュラムでは、実際に草稿を書き始める前のアイデア段階(”Generating Ideas” “Organizing Ideas”)に重点を置いているのがポイントです。
  • また、アイデア出し用のワークシート、語彙集などのアカデミックライティングのリソースから過去の受験者のSoPサンプル(匿名化済)など、豊富な教材をプログラム運営から提供します。

1.3. マッチング方法

原則としてメンターとのマッチングについては、XPLANEの「大学院留学に関する情報・リソース格差を解消する」という理念に基づき、所属/出身大学、実績、現時点での留学準備状況などで区別せず、(1) 専門分野 (2) 留学希望先の国/課程 のみを考慮してマッチングを行っています。

1.4. 2023年度のアンケートの集計

プログラム全体・マッチングに対しての満足度(5段階評価、5が最高)

以下のように、プログラムの満足度については、留学志望者からもメンターからも非常に高い評価をいただいています。
メンターにとっては負担の小さくないプログラムですが、「SoPが改善されていく様子や出願結果を共に経験できて嬉しかった」「自分の経験で他人に貢献できた」などのやりがいを感じたという意見のほか、「いかに自分の経験や知識をアピールしていくかという点で非常に学びが多かった」「執筆支援を通じて、近い研究分野の知り合いを増やすことができた」という執筆支援をすることで得るものがあったという意見も多く見られました。

分野のマッチングについては、留学志望者はほぼ全員がとても満足なのに対して、メンターは5(非常に満足)〜3(どちらでもない)にばらつくという傾向が見られました。この傾向は毎年同様に見られますが、メンター側にはサブメンター(分野がやや遠い人をあえて選択することも多い)の意見が含まれるためだと考えられます。メインメンターとサブメンターを合わせた組全体で見ると、ほぼ全ての組で良いマッチングができていると言えるでしょう。

一方で、プログラム満足度が低いメンターのほとんどの理由は「留学志望者のモチベーションが低かった」「留学志望者が音信不通になった」といったものでした。こういったケースへのプログラム運営でのサポートや、各支援グループの進捗状況の運営での把握が今後の課題であり、現在対策を考案中です。

支援の助けになった過程

支援の助けになった過程についてもアンケートしてみると、メンター・留学志望者とも最も上手くいった支援課程として「Organizing Ideas(アイデアの整理)」が挙がりました。その前の「Generating Ideasアイデア出し)」の多さを考慮しても、プログラムが重視している草稿執筆前(プレライティング)の段階の重要性が如実に現れていると言えるでしょう。

その他のアンケートの声(抜粋)

【留学志望者からの声】

  • そもそも英語アカデミック・ライティングの基礎から怪しかったので、基本を事前に教えていただけてよかった。SoPの構成なども参考になった。
  • 海外の大学院に進学されている方がメンターであるため,在籍大学の教員とは異なる視点でのアドバイスを得ることができました。
  • このプログラムに参加していなければ、出願を完了させることすら難しかった。
  • 高額のエージェントを利用するかどうか迷っていましたが,XPLANEの支援サービスを活用させていただき,無事出願先からも合格をいただくことができました。進学やそれにまつわるサービスの利用を考える上で「払えるかどうか」が第一の懸念であったため,経済的に裕福な人だけでなく,より多くの人にこのように機会を作っていただけたことに対し,本当に感謝しかありません。

【メンターからの声】

  • 人のライティングを見ることで自分のライティングの能力も上がったと感じられた。
  • これから海外に来たいと思っているやる気のある方々と繋がって、支援できるのはとても楽しかった。
  • XPLANEにしかできない活動だと思うので、可能な範囲で続けていただけると(日本の将来にも)良いと思いますし、できることがあれば私も貢献したいです。

1.5. 今後の課題

ポジティブな反応が多かった一方で、課題についてもいくつか重なった指摘がありました。今年度のプログラムでは以下のような指摘点を改善するべく現在制度変更や追加を検討しています。

  • プログラムがアメリカの大学院受験に合わせたスケジュールになっており、ヨーロッパの受験だとスケジュールが合わないこと(これはSoPプログラム座談会の参加者からも言及あり)
  • プログラムの課程や分野に対応した教材の提供
  • サブメンターの役割が一部不明確なこと
  • メンターとサブメンターの留学地域が異なると、時差のためミーティング設定が難しいこと
  • メンター/留学志望者両方で連絡の遅れ、ミーティングのキャンセルや遅刻が見られること

などが挙げられました。また、アンケートで指摘された点以外に、昨今の状況を鑑みて、今年の参加者には「ChatGPTなどの生成AIのライティングへの活用と問題点に関する手引き」を作成して提供する予定です。

2. 完成稿フィードバック形式(2023年度〜)について

2.1. プログラム概要

プログラムを開始してから4年間、参加を希望する留学志望者の数は右肩上がりで2023年度は111名からマッチング形式での応募がありましたが、一方でメンターの留学経験者の数は限られており、分野や志望大学院をベースに実際にメンターをマッチングできたのは74名でした(珍しい専門分野で、専攻が近いメンターがいないためにお断りしたケースもあります)。

そこで2023年度から、マッチングができなかった方へ部分的な支援を行うのを目的に、「完成稿フィードバック形式」という、上記のマッチング形式のものとは異なる制度を導入しました。ここではマッチングは行わず、ご自身で一通り完成させていただいたSoPをアップロードしていただき、それに対して分野が比較的近い大学院留学経験者がドキュメントのコメント機能を使って詳しいフィードバックを行うという形式です。また、こちらの形式に応募された方にもSoPプログラムで使用する教材(ワークショップ、SoPサンプルなど)は全て提供しました。

2.2. 実施結果

こちらではアンケートは行いませんでしたが、最終的に32名の方を支援することができました。
また、マッチングができなかった方以外にも (1) 7月時点で海外大学院へ出願するかが未定だった方 (2) 出願締め切りがく、6回のミーティングを行うと間に合わない方(イギリスの一部の大学院など)などにも利用していただくことができ、「出願するか未定な方がメンタリング制度を利用し、結果的に出願に至らない」という過去に課題だったケースを減らすことにも本制度は貢献したと考えています。

2.3. 今後の課題

初年度に明らかになったこの制度の第一の課題は、こちらのSoPへのフィードバックを担当する留学経験者の確保です。最終的に合計32名の方をこの制度で支援しましたが、原稿が送られてくるのが不定期、かつ原則として2週間以内に返却という厳しいスケジュールもあり、(結局留学経験者が見つからず、SoPプログラムの運営である本記事の筆者が32名中21名のSoPをチェックすることに)。今年度は、7月のメンター募集時にこちらの制度の担当者も募集するなど対策する予定です。

3. 2024年度のプログラムの内容・スケジュール

3.1. メンタリング形式

今年度も、前述の全体向けワークショップとメンターとの個別ミーティング(原則1時間×6回)を通じた執筆支援を行う予定です。こちらは、現時点で今年度中に海外大学院に出願することが確定しており、11月後半以降に出願締切がある方のみが対象です。
(※ ただし、ヨーロッパの博士課程に出願を予定している場合など、出願締め切りの時期が不定の場合も応募申し込みは可能です(参考記事)。メンターとよくスケジュールを相談して支援を進めてください。)

それぞれのペアの進行状況や出願先によってフレキシブルではあるものの、仮のスケジュールと各ミーティングの支援内容の概要は以下の通りです。参加希望の方々は、日本時間7/20(土)に留学志望者向け説明会を開催するので、XPLANE Slackに参加してお待ちください。

■ プログラム説明会(7/20)
XPLANEのSlack内で告知しています。(Slackへの参加方法はこちらから)。
■ 留学志望者参加登録(7/20-8/2)
先着順ではありませんが、必ず募集期間内にお申し込みください。
■ プログラム開始まで:留学志望者向けワークショップ(動画視聴)
SoPについての知識・書き方・パラグラフライティングの基礎を学ぶ
■ マッチング(8月中旬ごろ)
留学志望者の分野・留学先志望校/地域などをもとに、留学志望者と経験者をマッチング
■ ミーティング第1回:初回ミーティング (8/25ごろから各組に分かれてスタート)
分野/研究テーマ、志望校/志望学科、SoPの進捗確認など執筆支援に必要な事項の確認
■ ミーティング第2回:Generating Ideas (考案)
書きたいアイデアを列挙し、実際に書く内容を取捨選択する
■ ミーティング第3回&第4回:Organizing Ideas (構成)
アウトラインを作成し、取捨選択したアイデアを、どの段落のどの箇所に配置するかを決める
■ Drafting (草稿)
アウトラインに基づき、実際にSoPの草稿を作成する
■ ミーティング第5回&第6回:Revising (修正) (11月中旬頃までに)
草稿を内容と表現の両面において何度も書き直す
■ Proofreading (校正) (提出締め切り(12月が多い)までに)
ネイティブまたはバイリンガルによる英語(文法、スペルなど)の最終的な修正を受ける

3.2. 完成稿フィードバック形式

説明会・参加募集はメンタリング方式と同時期に行います。登録後は配布された教材を参考にしてSoPを完成させ、出願締め切りの1ヶ月前までにGoogleフォームにアップロードしていただきます。
その後、(原則2週間以内に)留学経験者がコメントをし、返却します。

4. 謝辞

本プログラムが継続的に成功を収められている第一の理由は、忙しい中でメンターとして参加いただいたXPLANEコミュニティの留学経験者の皆様のご協力に他なりません。本当にありがとうございました。また、ライティングセンター教育学・カリキュラム開発の専門家としての視点からカリキュラム設計、ワークショップ開催、リサーチにご尽力くださったハワイ大学マノア校博士課程の松谷優花さんに深く感謝いたします。

また、本プログラムは米国国務省/在日米国大使館からの助成金(Promoting Study-in-the-United-States and Fostering English Language Learning Program)によりサポートされています。こちらにも深く感謝を申し上げます。

XPLANEでは、本プログラムを改善しながら将来にわたって続けることで、多くの方の海外大学院出願を継続的に支援してゆきたいと考えています。留学経験者の皆様には、これからも引き続きご協力いただけると幸いです。

関連記事

あわせて読みたい
XPLANE SoP執筆支援プログラム座談会(2023年度の留学志望者とメンターにインタビュー)【XPLANE TIMES... XPLANEの代表的な活動とも言えるStatemenft of Purpose執筆支援プログラムですが、個別指導システム故にその内情については実際に参加した方以外に分かりにくい面があるかと思います。今回はその内情の紹介を目的とし、昨年度に実際プログラムでマッチングされた組の3人をお呼びし、プログラムや出願準備について振り返っていただきました!
  • URLをコピーしました!
目次