休日の過ごし方とコミュニティの作り方【XPLANE TIMES 大学院留学生アンケート#5】

本記事はXPLANE TIMES(ニュースレター)第5号(2024年10月12日発行)内の『大学院留学生アンケート』に掲載された記事です。『大学院留学生アンケート』は、XPLANE Slackに在籍している海外大学院生に対してアンケートを行ったデータをもとに、大学院生かつや留学先での生活の実情を探るコーナーです。

今回は留学先での休日の過ごし方とコミュニティへの参加をテーマとして、幅広い方々(計18人)から回答いただきました。まだ留学経験がない筆者の感想も少し盛り込んでみました。留学先での暮らしは一人のことも多く、不安がつきものだと思います。このアンケートを参考に、留学中の方だけでなく、秋入学を控えている方やこれから留学を考えている方の参考になれば幸いです。

アンケート項目

  1. 休日や長期休暇に誰と過ごすか
  2. 休日どのようなことをして過ごすか
  3. 長期休暇中にやっていること・やりたいこと
  4. 留学先で友達ができたきっかけ
  5. 参加しているコミュニティ
  6. 研究室や仕事以外でどのくらい日本語を話すか
  7. 日本にいる家族や友人と連絡をとる頻度
  8. 日本に帰国する頻度

ほとんど全ての人が一人で過ごしたり家族や友達と過ごしているようです。研究室、サークルやオンライングループなどのコミュニティの人達と過ごしている方もいるようです。細かく見ると、留学を開始から1, 2年目の方は基本一人や、友達と過ごす人が多く、3, 4年目の方は家族と過ごす人も増えているという傾向がありました。

宿題や研究をしたり論文を読むなどするという回答も多く、その中でも休日には学生ラウンジ/コワーキングスペース/カフェなどを活用する人もいました。特に友達と勉強するというよりは、個人で進めている方の方が多いイメージを受けました。

この他で多くの回答があったのは、

  • 友達とランチやディナー
  • コンサートや映画鑑賞
  • 一人で/友達と旅行
  • ランニング/ハイキング/スキー/ジムなどの運動

等で、中でもランチやランニングをしているという回答は多かったです。これらは日本で暮らしている方とも共通しているリフレッシュ法に思えますが、留学中ならではのエピソードとしては、大学が主催している留学生とローカルファミリーを繋ぐプログラム経由で知り合ったホストファミリーが, サンクスギビングのディナーに招待してくれたり(図1)、学生へのコンサートの宣伝や運営を行っているアンバサダーをしていて、コンサートに基本的に無料で行けるのでよく行っているという方(図2)もいらっしゃいました。音楽専攻の方以外でも参加されているとのことで、色々な方との繋がりを持てそうですね。 

スウェーデンにお住まいの方からは、夏にはカヤック/BBQ/ハイキング/湖で泳ぎ、冬にはアイススケート/スキーといった自然を満喫しているという回答もありました(図3)。羨ましいです。他にインドアでは宅飲み、ボードゲームや編み物をしたり、医学部の方は病院でオペ見学をすることもあるそうです。日本の知り合いと電話するという回答もありましたが、留学中の日本との関わりは6.以降で見ていきます。


図1. サンクスギビングのディナーの様子、
犬の視線が気になる

図2. アンバサダーとして運営に携われているコンサート、年に10〜20回行かれているそうです

図3. 冬に近所の公園でスケート

一番多かったものは旅行でした。一人で/友達と/家族と、と気分や予定に合わせて様々で、行き先としては留学先の周辺都市/留学先の国内/他の国などです(日本に一時帰国する方もあり、詳しくは8.へ)。キャンプ、スキー、アルプス縦走やスウェーデン・アルプスのロングトレイルハイクなどアウトドアのアクティビティを合わせている方もいました。
一方、研究で忙しく長期休暇がない場合も多く。「インターンや実習の合間にハイキングなどに行っていた」「夏はサマーコースであまり休んだ感じはしなかった」といった声もありました。

 ほとんど全ての方が、大学の所属学科のイベントを通じて知り合っているようです。他にも草野球チームや音楽などの趣味や、現地の日本人コミュニティやあるいは日本文化に関連する集まりを通じて知り合った方。基本的にラボメンバーのみという人もいれば、友達を探せるアプリで友人や恋人を見つけている人もいるようです。具体的なエピソードとして、同じタイミングで大学院留学を始めた日本人の学生とXでフォローし合って、どちらかが近くに来たらリプライかDMで会う約束をするという形で活用されていたようです。

日本人会、日本人サークルや日本語を学習者との言語交換コミュニティなどの他に、

  • サークル (テニス、剣道、ランニング)
  • 物理学科のライティンググループ
  • 子供の学校関連のコミュニティ
  • キャンパスのクラシックコンサートアンバサダー
  • 気候やエネルギー問題に関心があるPhD学生のコミュニティ
  • イベントなどのボランティア

などの回答がありました。興味深い回答の1つに、Otakonというアメリカ最大級のアニメ系イベントでは毎年通訳のボランティアを募集しており、これに参加することを通して米国の色々なところに住んでいる日本人と仲良くなることができたという方がいらっしゃいました(図4)。現地の人たちとは言語の壁が高く中々親密になれない中、日本人の知り合いができてかなり安心できたという意見もありました。留学先とは言えど、日本人との繋がりがあることも役立つようです。


図4. Otakonのリハーサルの様子
通訳だけでなく舞台設営にも関われる

コミュニティに参加することで、研究のこと以外を考えることができて気分転換になったという声だけでなく、

  • 研究者以外と話す機会としても良かった
  • 色々なバックグラウンドを持つ日本人と知り合いになれて、世界が広がった
  • 結局はコミュニティ全体で遊ぶというより、その中で出会った気の合う人と個人的に何度も会うことが多いので、最初に手広くいろいろな集まりに積極的に参加したことは良かった
  • 想像以上に日本人がいた
  • ボルダリングやジムのレッスンなどで同じような趣味や生活の人と会えてよかった
  • 自分の長年やってきた剣道だと、クラブに馴染むのも早かった
  • 外国人はもちろん、日本にいたら絶対に交わらないようなバックグラウンドの日本人とも知り合いになれること

といったポジティブな意見が多く見られた一方で、

  • 日本にいた時よりも日本人からの男尊女卑的な扱いを受けることが多かった
  • 一度日本語学科のコミュニティに遊びに行ったことがあるが、ステレオタイプではあるが日本人なのにアニメを見ていないという点で相手側のコミュニティの価値観に一致しなかった
  • 日本人サークル (JSA)に行ってみたら、日本人が一人もおらず日本文化が好きなアメリカ人のためのサークルだった

といったネガティブな意見や失敗談もありました。自分に会うコミュニティを見つけることで研究の質も向上すると思いますが、自分に合わないと思ったら参加をやめることも重要だと思いました。

アンケート結果は以上の通りです。留学未経験者の筆者からみると、予想以上に日本語を話す機会を持っているという印象を受けました。これは5.の参加しているコミュニティや7. の連絡で使われていると考えられます。日本に恋しくなったり話せる友達を作るには、コミュニティの参加で意識に日本語を話す機会を作ることは必要だと感じました。

多くの人が頻繁に連絡をとっていることがわかりました。特に、今回のアンケートにおいて全く連絡を取っていない人は一人もいませんでした。家族や友人と連絡を取ることは、

  • 少し弱音を吐いたら励ましてくれたり、最近の出来事の写真を送り合ったりすることが、ほっと出来る時間になっている
  • 家族とはLINEで連絡をとり、たまにビデオ通話もします。友人とは主に一時帰国の予定絡みで連絡を取ったり、しばらく会えていない人とはzoomで話したりします

といった回答に見られるように、精神的な支えになっていることが改めてわかりました。

日本に帰国する頻度としては年一回が圧倒的に多いという結果になりました. 理由やエピソードとして以下の様なものがありました。

  • 家族は早く帰国してほしいらしい
  • 帰国時には家族との時間は確保しながらも出来るだけ多くの友人と少しでも顔を合わせるようにしてる
  • 日本に帰って一年分のサウナをする

また、数人からは全く帰国していないという回答をいただきました。帰国頻度が減る理由としては、

  • 日本食と温泉は確かに恋しいが、自炊と家のバスタブでなんとか頑張っている  
  • 航空費が高いし、日本にいると無限に飯を食べてしまい太るから
  • 元々お金と時間があれば旅行したいタイプであるのが一番大きいが、2年目の終わりのQualが無事終わるまで日本にゆっくり帰れる感じではなかった。帰国する一番の理由としては両親のことが気にかかるくらいだが、両親や友人とは海外で会える機会が度々あり、SNSやテキストを通じて連絡もできているので、特に帰っていない

などの声がありました。やっぱり日本の食事は美味しいようなので、留学前や一時帰国の機会に楽しんでおきたいですね。

いろいろなアドバイスをいただきましたので、紹介します。

  • 同じ授業を履修してstudy groupをする
  • SNSを活用する
  • 留学先で出会える友達は多い方がよい
  • オリエンテーションを通じて”How are you?”だけの表面的な知り合いが大量に増えがちになるので、学食などで積極的に一緒に座ってゆっくり話す機会を持つこと。失敗を恐れないこと
  • 自分の趣味が確立されていたり、色んなことにそれまでに挑戦していると話が盛り上がりやすく友人は作りやすいと思う
  • ある程度諦めも必要。一人にも慣れる。一時的な繋がりになることが多いが、ツアーなどに参加するのもあり
  • 溶け込もうとする努力は大事ですが、日本人だというアイデンティティまで捨てる必要はなく、むしろ大事にした方がよい

また、特定の国に限定したアドバイスとして、以下のものがありました。

  • フィンランド(アールト大学)の場合はtelegramを使うとよい
  • スウェーデンでは、多分どこにいっても自分からアクティブに友達を作ろうとすれば良い関係ができると思います。インターナショナルな大学環境でも、日本ほど研究室コミュニティとしてのまとまりを大事にする (歓迎されたり誰かが丁寧にケアしてくれたりする)感じはないので、そこまで期待せず自らネットワーク構築をする姿勢が大事だと感じました

アンケートでは、地域別のオフライン交流会や季節に合わせたイベント (花見、紅葉、スキーなど)を企画して欲しいという声もいただきました。これからXPLANEでも留学支援だけでなく、留学期間中や留学後もみなさんを支えられるような活動を行っていくことが大切だと感じました。

アンケートに協力くださりありがとうございました。

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