XPLANEでは、『SoP執筆支援プログラム』と題して、留学志望者に分野の近いメンターをマッチングして出願書類の1つであるStatement of Purpose (SoP)の作成を個別支援する活動を2020年から毎年行っています(プログラムの詳細はこちらの記事より)。
今回は、プログラムの活動内容について詳しく知っていただくのを目的に、2023年度プログラムに参加された留学志望者のひろみさんと、そのメンターのお二人(メインメンターの金子さん、サブメンターの森山さん)に集まっていただき、座談会のような形で執筆支援を振り返っていただきました。また、ひろみさんはヨーロッパの博士課程に出願、メンターのお二人はアメリカの博士課程に出願されたということで、アメリカとヨーロッパの博士受験の違いについての話題も広がった内容になっています。進行役は、XPLANEの運営メンバーでもあり、今回の支援でサブメンターを務められた森山さんです。
座談会参加者プロフィール
日本で修士課程に在籍していた昨年度に執筆支援プログラムを利用した元留学志望者で、今年からベルギーのKU Leuvenの博士課程に進学。専門は化学(高分子)。
アメリカのUC Santa Barbara博士課程で、専門は化学(高分子)。執筆支援ではメインメンター。
アメリカのUniversity of Minnesota博士課程で、専門は材料科学。執筆支援ではサブメンターで、今回の座談会の進行役。
■ SoPプログラムを知ったきっかけ
まずお二人に、XPLANEとこのプログラムを知ったきっかけを教えていただきたいです。
僕は日本で修士の頃、海外留学しようって時にXPLANEっていうサイトを見つけて、このSoP執筆支援制度を知ったんで参加させてもらって。その支援を受けた結果留学できたってことで、恩返し的な意味で手伝いたいなってことで今回はメンターとして参加させていただいたって感じですね。
私はXPLANEのことは学部3年生か4年生の時には知っていた記憶があるので、何をきっかけに知ったのかあんまり覚えてないんですけど、海外に行ってみたいって興味があって見てたんだと思います。
まずお二人に、XPLANEとこのプログラムを知ったきっかけを教えていただきたいです。
Slackでお知らせいただいて知りました。Slackにはもう学部4年終わりとか修士の最初に入ってました。この間見てみたら自己紹介したのが4年生とかで、すごい前ですね。
■ 受験先をヨーロッパにした理由は?
まずはひろみさん宛の質問からで、受験先はヨーロッパ中心で考えられていたと思うのですが、主な理由はなんでしょうか?
実は、身近にヨーロッパに近い人が多かったので、海外に進学しようと思う時に一番最初に出てくるのがヨーロッパだったというだけで、特段の理由はないんです。
なるほど。身近な人というのは、学部とか修士の先輩とかですか?
いや、高校の時の友人がドイツに住んでいて、初めて海外に出たのがドイツだったんです。その後修士1年の時に初めて国際会議に出たのがフランスで、その後短期留学でフィンランドに3ヶ月行くことができて。自分の周りにある情報のリソースで言えばヨーロッパの人が多かった中で、学会で出会った人に「海外に出てみて、博士課程とかやってみたいんだけど」というのをずっと言っていたら、繋がった友達が色んな情報をくれたりして。身近な情報にヨーロッパの情報がいっぱいあったので、踏み込みやすかったかなと思います。
意外ですね。私の印象だと、最近海外留学って聞くとだいたいアメリカかイギリスが出てくる人が多くて、リソースも多いというのがあるんですけど。アメリカ受験を考えたことはありましたか?
最初にフランスで国際会議に出た時にアメリカで研究者をされている方と知り合ったので、アメリカの選択肢もその時点ではあったと思います。だけど、どんどんヨーロッパの情報が集まっていくにつれて、その情報を持っていながらアメリカを選ぶ理由はあまりなかったですね。あとは、後に分かってきたこととして、ヨーロッパの博士はお給料が出ることが基本だし、きちんとした額がもらえるところが私の印象では多くて。それから日本で取った修士の学位をきちんと修士として認めてくれる。修士課程と博士課程が明確に分かれているところが多いので、私の修士を日本でやったという点が活かせるところかなと。
(編注)アメリカの博士課程の多くは5年一貫で、給料も一部はTAをすることに対して支払われることもある。一方、ヨーロッパの博士課程は、教授の持つ研究プロジェクト単位で博士課程学生を募集し、研究費から給料を支払う場合も多い。
なるほど。せっかくなので金子さんの受験経緯も聞いても良いですか?
そうですね、アメリカが絶対良かったというわけではなかったのですが、学部時に半年ほどアメリカ東海岸に留学していて、アメリカという国に結構慣れてたというのが今思い出すと大きいかなと。逆にヨーロッパは一度もまだ行ったことないんですよね。そういう意味で、PhDで3年なり5年なり過ごすんだったらちょっと慣れているアメリカの方がいいかなって思って。あと、その時から高分子材料の合成と応用みたいな分野をやっていて、その分野で強そうなラボを探したら当時はアメリカの大学とかラボが引っかかることが多かったので。ヨーロッパの受験とアメリカ受験両方やるのは嫌だったので、アメリカ一本で出願した感じでしたね。
2つ違う受験システムをするのは嫌だと言うのは、私も確かにそんな感じだった気がします。
今話を聞いていて、私とは違うなって思ったこととしては、私は英語圏がいいというこだわりがなかった、むしろ英語圏じゃない方がいいと思ってたんですよね。それは実際に、フィンランドに住んでみて英語圏じゃなくても、みんな英語を話そうとしてくれるので大丈夫だと体感していました。英語圏のイギリスも見ていましたが、イギリスはお給料制じゃないところもあるし、外から来る学生に高い授業料をかけてお金を集めたりもしてるのでちょっと難しいなと。英語圏の国は自国の言語で研究できることが大きなアドバンテージだから、学生を獲得するときに大学が優位に立ち、私たちが不利になりやすい。私は研究が英語でできるだけでよかったし、生活の面でも言語で困らないという想定があったので、英語圏じゃなくてもいいっていうのがあったんだと思います。あとは、みんなが英語を第二言語として喋る環境では、英語の苦手な私の気持ちを理解してもらえるので、とても暮らしやすいなと感じています。
なるほど、面白いですね。
■ アメリカとヨーロッパの出願スケジュールの違い
私がちょっと気になったのはスケジュール感で、一般にヨーロッパの方がアメリカより出願時期が遅いイメージがあります。この執筆支援プログラムはスタート時期が9月と早めで、ヨーロッパを受ける人にとってはどうでしたか?
ここは先にクリアにしたいと思うんですが、 私はプロジェクトの博士学生公募に応募するという形をとったので、正直出願を始める時期とか公募の時期とかに決まりがなく、通年の就職活動なのでどの時期が良い悪いはなかったと思います。私は特に、出願が終わった後に空白ができることに抵抗がなく、いつ留学が始まったとしても良かったので、別にアメリカのスケジュールでも大丈夫でした。ただ、メンターのお二人がすごく私のペースに合わせていろいろ努力してくださったので、そのおかげで私もやりやすいようにできたかなと。私のいいタイミングでこのポジションがゲットできたかなと思います。
私がアメリカで受験した時は、10校とか15校とかたくさん出すというのもあって12月にかけてすごく忙しいイメージがあったんです。一方でひろみさんはプロジェクトベースで、良いのが見つかったらピンポイントに出すような形で。もちろん忙しいとは思うんですけど、スケジュール感が私の受験とはちょっと違ったなっていう印象がありました。金子さん的にはどうでしたか?
そう思いますね。僕がアメリカ受験した時も主に12月の上旬が締め切りで、11月末までにSoPや他の書類を全部仕上げなきゃいけないので、7校とか10校とか受けると11月がめちゃくちゃ忙しくなる感じだった気がする。それと比べると、今回のひろみさんみたいにプロジェクトベースで期間が決まってない方が受験のしやすさ的にはしやすいのかもなと。
それぞれのプロジェクトベースの博士学生の公募にも期限はあるのですが、公募は年中出てくるので通年になり得るんです。アメリカみたいに「大体どの大学もここのあたり」という期限が決まってないので。私はすごくラッキーで初めて応募したところからすぐに内定をもらってそこに決めたけど、長期戦にもなり得るというのはヨーロッパ受験のすごく難しいところです。
執筆支援の観点から見ると、今回我々どっちもアメリカ受験組だったのもあって、ヨーロッパ受験の場合はメンティー側の人がスケジュール感を教えてくれないとメンター側もちょっと分からなかったかも。今回はひろみさんがうまくリードして情報を伝えてくれていたので、そういう問題が少なかったなと思います。