この記事に興味を持っていただきありがとうございます。中村悠馬と申します。2018年に修士課程を卒業し、6年半の社会人経験を経て2025年1月から博士課程に進学しました。研究テーマは量子コンピュータ創薬です。社会人経験あり・子連れでの留学となると珍しい事例だと思うので、実情を共有していきます。研究分野に関して最先端の環境に身を置けていることは間違いないのですが、研究のコアな話で読者層を狭めないためにも、当記事ではカナダの文化や「海外での挑戦」の側面に焦点を当てます。併せてトロントという都市についての紹介もできればと思っています。日本ではあまり知られていないようですが実はトロントはロサンゼルスに次いで北米で4番目に人口の多い都市です。
■ はじめに
私の場合は修士課程時代に就職か博士課程進学か悩み、企業で数年働いた後に海外で博士号を取得したいと構想を描いていました。当初の計画では企業に就職後3,4年のうちに特許や論文などの業績を作りそれを売り込んで留学先を確保する(&人生のパートナーを留学までに見つける)、そんな野心を持っておりました。就職先選びも博士課程の進学の前段階として機能するかを軸にして考えていました。実情としてはコロナの流行などがあり、3,4年間の就業の計画が6年半になってしまいましたが、その間のミッションとして掲げていた結婚・特許・論文は達成できたので、満を辞して博士課程にチャレンジできていると思います。
■ 博士留学を選んだ理由
よく「なぜ社会人として既に安定した地位を築いたにも関わらず、わざわざ博士課程を思い至ったのか?」と聞かれることが多いです。しかし、私の場合は企業に就職する時点で博士留学を思い描いていたので、この問いをする人が期待するような回答はできません。この点に関しては修士学生や学部生が博士留学を志す経緯と特に違いはありません。社会人生活6年半でそのモチベーションを維持できたことは珍しいケースだったのかもしれませんが、これは自分の気質とセカンドキャリアを考える人の割合の多い職場環境によるところが大きいかもしれません。そもそもの博士留学を志した経緯ですが、私は修士課程で中国の清華大学に学位留学しており、そこで現地学生向けの博士留学フェア(つまり中国から欧米への留学)に顔を出した時の経験が原体験になっていると思います。清華大学の学生のハングリーさや、アグレッシブさは目を見張るものがありましたが、特にその博士留学フェアに参加している学生や博士留学中の登壇者はさらに頭一つ飛び抜けたギラつき感を滲ませていて、そのエネルギーに圧倒されました。思うに、自分は主体的な人生の選択をした人たちが集まる環境が刺激的で好きなのだと思います。
■ なぜカナダを選んだのか?
博士課程プログラムとして応募した大学は トロント大学、ウォータールー大学、ブリティッシュコロンビア大学の3つで、カナダに絞って出願していました。カナダを選んだ理由は主に社会制度面と移民を積極的に受け入れる文化面に惹かれていました。例えば博士課程などで長期的に住む場合は治安や医療費も大きな懸念点だと考えています。家族(特に子供がいた場合)での滞在となると病院を利用する機会も増えるので、カナダの国民皆保険制度で無料となる制度にアメリカにはない魅力を感じています。文化面では多様な国籍の人が集まることで インクルーシブな価値観が生まれている点を魅力に感じています。私はアメリカのテネシー州に10ヶ月滞在したことがありますが、人生で一番孤独感を感じた期間でした。修士課程の2年間は中国の北京におりましたが、そのような孤独感を感じることはありませんでした(言語面でのバリアはもちろん中国の方が大変ではありました)。世間話をするアメリカ人の友人はできても、親友と呼べるような関係性を築ける人がなかなかできませんでした。アメリカ南部が閉鎖的という背景もあったのではと思うので、西海岸や東海岸など移民が多い地域に滞在していれば違ったかもしれません。ただその反動もあり、移民に積極的な国の方が生活の満足度が高くなると期待しカナダに惹かれていきました。実際、カナダに長期滞在した人の大部分はかなりポジティブな感想を話してくれます。
■ 出願から入学まで
奨学金の申請に間に合わせるように2023年9月初旬から準備を開始しました。奨学金申請書類の一つとして受け入れ先研究室とのコンタクト状況を記述する必要に迫られ、これがきっかけとなり具体的な指導教官候補のリストアップに動き出し始めました。私の場合は量子コンピュータの研究をしている大学スタッフの一覧をまず探し、その中から量子機械学習・創薬に取り組んでいるスタッフを探すという手順を取りました。自分の場合、幸運にも一番初めにコンタクトをとった第一志望の研究室のトロント大学の教授が受け入れ意思を示してくれました。ここで受け入れ許可をもらったことで留学がかなり現実味を帯びてきました。ちなみに、その教授はホームページ上でPhDの応募者に対しては
“Due to the large volume of inquiries, [教授の名前] can’t respond to individual messages. Please do not contact him directly, but rather apply directly.”
と明記しており、コンタクトしても返信が来ない可能性が高そうでした。ですが偶然、その研究室のスタッフ(ポスドク)で私と研究テーマがかなり近い方(しかも日本人)を発見し、まずその方にコンタクトを取り教授との連絡手段を相談したところ、私の研究バックグラウンドに興味を持ってもらい教授に話を通してもらえることになりました。この文章を読んでいただいている方に伝えられる教訓として、教授が返信をくれない/くれなそうな場合は研究室のスタッフとコンタクトを取ることで状況が好転する可能性があると言えます。
また、博士留学において避けて通れない英語のスコアメイキング(私の場合はIELTS)ですが、今思うとIELTS対策講座を受けておけばよかったと思います。受けた回数的に10万円くらいの講座でも十分に元が取れたのではと思います。目先の出費をケチったせいで逆に損をしてしまったと後悔してしまいました。
■ 合格通知とほぼ同時に発覚した妻の妊娠
実は最初はトロント大学から不合格通知をもらっていました。翌年に再チャレンジした場合に卒業時の妻の出産適齢期がギリギリになることなど妻と話し合い、翌年の入学時期までに子供を作って再度出願し家族での渡航をする計画に舵切りしてました。そう決断して数ヶ月後のある日、本当に妊娠が叶いました。そして翌年に向けて再チャレンジして合格できる見込みがあるか XPLANE の Slack の質問相談チャンネルに投稿したところ、教授のことを知る博士学生からDMが来ました。その方曰く、希望していた指導教官は(繁忙期は特に)秘書にメールをCCしないと返事が来ないことで有名とのことでした。アドバイス通りに翌年の出願について秘書に問い合わせをしたら、指導教官が学科に提出する採用希望の学生リストに自分を追加し忘れていたことが発覚して特例措置として不合格取り消しで合格となりました。当時 XPLANEでは合格した方の渡航や家探しの相談で溢れており、不合格者として惨めな気持ちで質問を投稿したのですが、なりふり構わず無様でもあがいたことが功を奏したのだと思います。この姿勢は博士課程の期間中、ずっと意識していこうと心に誓いました。結果的に妊娠の判明と不合格取り消し合格の通知が同じ週に来て非常に驚いたことを覚えています。
困ったのは入学予定日が2024年9月で妻の出産予定日が2024年11月、妻は日本での出産を希望し子育てに慣れる期間として1才近くまでは日本にいたいということでした。大学と教授に相談をしたところ、入学延期は1学期(4ヶ月)分までしかできず、(育児)休学は1学期分履修しないと取れないとのことでした。私としては子供と一緒に過ごせる日々を研究キャリアと同じくらい重要視していたので、子供と過ごせる期間を最大化しつつ博士課程への影響を最小化しようと必死に模索しました。結果的に入学延期して2025年1月から博士課程を始め、5-8月を育児休学して日本に一時帰国するという提案で大学と教授に許可をもらいました。そして8月下旬からは家族を連れてカナダに渡航予定です。トロント大学の制度を調べていく中で知って驚いたのですが、もしRA等の給与をもらっていれば育休期間に本来貰えていたはずの金額の大部分を育休手当として補填されてるとのことでした。また、単身者用の学生寮だけでなく家族寮も院生向けに提供している点も制度面での手厚さを感じました。大学院の期間で本人やパートナーが結婚・出産をすることを想定した制度設計がされているのは日本の大学院との大きな違いだと思います。
■ 入学後の授業
授業ですが、入学延期しての1月開始だったため教務システムの案内もないまま授業が開始されました。ウェブサイトに掲載のあった授業のリスト(授業名、時間、場所のみが記載されたもの)を頼りに教室に行って授業を受けてみるというところから始まりました。教室で隣に座った人から情報を集めると、当時存在すら知らなかった履修システムで登録しないと授業の詳細(授業のマテリアルや成績評価方法など)が見られない仕組みになっているようでした。しかも、人気な授業は学期が始まる前に履修登録をしておかないと定員オーバーになってしまい履修登録できず、聴講のみしたくても、システム的に教材にアクセスできないという状況が発生してしまいます。トロント大学に限らず、もしあなたが大学院の入学直前に近しい状況にあるのであれば、教務課か配属予定の研究室メンバーにコンタクトを取り、いつ頃から履修登録を開始するべきか確認しておくことを推奨します。特に Computer Science の授業だと、AI・機械学習あたりの授業が人気で定員オーバーになることが多いようです。ちなみに「Reddit UofT(トロント大学の略称)Computer Science 」で検索すると、おすすめの講義はどれか議論した掲示板を見つけられるとのことでした。
授業は1コマ2時間で行われています、流石に講師も2時間ぶっ通しはキツいようで1時間あたりで休憩が入ります。研究室の他の学生の履修状況を聞くと1学期で1~3コマが標準的のようでした。日本と比べ授業の数は少ないけれど一つ一つの負荷が重い印象です。学科によりますが修士号を持っている場合は博士課程の期間中に4~7コマを完了すればいいので、他の留学体験記と読み比べる限り、アメリカの大学院の博士課程に比べると授業のウエイトは小さいかと思います。そして授業および研究セミナーでは参加者がガンガン質問をしていました。とはいえ初歩的すぎる質問をすることは日本人の感覚と同様に躊躇はあるようで、講義の理解度6~7割あたりを超えている人が質問してる気がします。自分も授業の序盤は気後れもあり授業後に個人的に講師に質問するくらいしかできませんでしたが、終盤では授業中にも質問をするようになっていました。授業の内容も、社会人時代の実務(データサイエンスや機械学習、プログラミング)で使っていたけれど拾い食い的にしか学べていなかったこと体系的に学べたりしました。同様に修士の時代にツールとして使っていた計算手法の背景や全体像を学び直す機会にも恵まれ、授業としての満足度は高いと言えます。特に大学院生向けのアルゴリズムデザインの授業はかなり数学的でして、宿題も一筋縄でいかない問題ばかりでした。ChatGPT などの大規模言語モデルのハイエンドモデルを使っても解けない問題が大半で、講師の方がかなり工夫した問題設計をされていると推察されます。半日・1日と時間をかけて正解へにじりよる感覚があったのが楽しく、改めて自分は数学だったりパズル的なものが好きだったのだと再認識できました。ただ、あらかじめ想定していた研究と授業への時間配分に対して授業に寄ってしまったので研究面で少し焦りもあり、後々挽回していこうと思います。授業の負担としては、3週に1度くらいの頻度で復習と宿題で土日が消費されるという所感でした。
また、授業だけでなく、学内外からゲストを呼んで行う研究セミナーが頻繁に開催されています。授業はその分野を体系的に知るという位置付けで、単発の研究セミナーは分野の最前線を知るという位置付けになっています。また、トロント大学に隣接する Vector Institute という人工知能研究機関(日本でいう産総研のような位置付け)で毎週月曜に ML Lunch Talk と呼ばれるイベントが開催されております。このイベントではピザやサンドイッチが振る舞われ、卒業間近レベルの博士課程学生が ML(Machne Learning) に関連した研究紹介をしています。セミナーや ML Lunch Talk はどれも最先端の研究内容で、人工知能・機械学習の最新情報を常にキャッチアップできる環境にいます。睡眠不足の状況でも眠さより知りたい気持ちが勝つような講義やトークに巡り会える機会が多いのはとても幸せなことだと思います。
■ 研究
研究面は個別事例過ぎても参考にならないでしょうから、できるだけ一般化して記載します。まず第一に研究室の規模と指導教官との距離感はトレードオフにあります。ここでの規模はメンバー数(スタッフ+学生の総数)としますが、これと研究室単位での業績(=論文数)や分野での認知度、指導教官の影響力、研究資金などと強く相関します。一方でメンバー数が増えると指導教官が一人一人の面倒を見ることが困難になり、直接的な指導の頻度は減ってしまいます。おそらく、トップ大学になるほど指導教官が分野の著名人かつ多忙になるので、指導教官との距離は比較的希薄になる傾向があるのではと思います。もちろんトップ大学でも少人数制を貫いて手厚く指導してくれるグループも存在します。上記の前置きを念頭にした上で私の研究室の例をお伝えします。私の研究室は極端に規模が大きく、メンバーは30人ほどおり、教授に 1on1 を申し込むにも1ヶ月以上前からの日程調整が必要になってしまいます。なので、実質上のメンターはポスドクの方で、週1で議論させてもらっています。では教授の役割は何かというと、興味のある研究分野を伝えて、関係のある企業との共同研究プロジェクトにアサインしてくれることです。つまり研究者同士を繋げるという点で、直接的な指導はなくとも指導教官としてのバリューを発揮してくれています。また、メンバーが多いことの恩恵として、周辺分野を学ぶチャンスがあちこちに散らばっています。私の研究室では、AI for Chemistry, Robotics for Chemistry, Quantum Computing for Chemistry というように、化学を主たる応用先としており、量子コンピュータ、創薬の専門家が揃っており、メンバーと議論をすることで幅広い知識を吸収することができます。さらに研究グループのSlackでは各分野の最新情報の論文が情報共有として毎日流れてくるので、研究トレンドを常に把握し続けられるのが大変ありがたい環境にあります。また、研究室内のミーティングでメンバーが研究アイデアについてプレゼンして、協力者を募りチームを作って研究プロジェクトを立ち上げるケースもあります。
このように自分のグループは外部との共同研究案件や、研究室のメンバー内でチームを組んだ内部での共同研究案件の両パターンがあり、論文の著者が5-10人くらいとなることが多いみたいです。そして各メンバーが最低一つは第一著者として他の共同研究者をリードする研究プロジェクトを持つことが期待されています。実際、社会人経験をしている自分に期待する素養の1つはプロジェクトマネジメント能力だと教授から言われました。さらに自分の32歳という年齢的に、制度上は博士学生ですが実質はポスドクとして扱うとも言われています。期待値が高い分、プレッシャーも跳ね上がりましたが、なんとか食らいついていこうと思います。社会人時代はデータサイエンティストとして働いており、委託研究、委託解析に近いプロジェクト経験が多かったので、互換性はそれなりにあると感じます。とはいえ、英語で相手の意図を汲み取りきれないことがまだまだあるので、1学期分を終えた今も苦戦中です。少なくとも研究室内のメンバーの意図は把握しやすくなってきたので、次は外部の共同研究者との議論をより円滑化にしていくことが目標です。
■ 学生へのメンタルケア
大学院として学生へのメンタルケアが整備されつつあるように感じます。留学生向けのオリエンテーションで博士課程はマラソンのようなものだから根を詰めすぎないようにねと案内がありました。また、博士課程学生が陥りがちなインポスター症候群という精神状態の紹介があり、自分は早い段階で知っておけてよかったと思いました。インポスター症候群とは、周りが全員自分よりも優秀に見えて、自分が実力ではなく運のみで今の地位まで到達してしまい、実力不足がいつ露見するかと怯えながら日々を過ごすようになってしまう精神状態のことを指します。この概念を知ったとき、このような感情を抱いているのは自分だけでなく、大なり小なり博士課程の学生が抱えている感情だと知って少し気が楽になりました。実際、研究室で仲の良い博士学生(自分から見たら優秀で陽気な方)に、自分がインポスター症候群になっているかもしれないと相談したら、実はその方も同じくインポスター症候群を感じていると打ち明けてくれました。
他にもトロント大学にはメンタルケアの施策として、メンタルケアの相談窓口や、瞑想(マインドフルネス)をできる施設、セラピー犬とのふれあいワークショップなどを提供しているとのことでした。これらは自分が見つけた範囲の情報に過ぎないので、探せば学内で他にも活用できるものがあるかもしれません。
■ トロントという都市の魅力
トロントがかなり都会であることは前々から知っていたのですが、住み始めてからさらに詳細を知り、メキシコシティ、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ北米で4番目に人口の大きい都市だと知りました。そして人口は50%近くは移民で構成されている都市であり、非常にインクルーシブな文化が醸成されています。実際、街を歩いてみるとマジョリティやマイノリティとなる人種が存在しなかった点が印象的でした。また、アメリカだと移民がアメリカ文化に「溶け込む」必要があると点で「人種のるつぼ」と表現されますが、カナダ(特にトロント)は自国の文化の形を維持できるという点で「人種のサラダボウル」と表現されます。移民の過ごしやすさという点ではこの表現は的を得ていると思います。そしてこの多様性は食文化や街並みにも反映されております。食分野については中東料理、南米料理、アジア料理とバラエティーが豊富です。例えば、レバノン料理やペルシャ(イラン)料理は日本やアメリカだと出会う機会は少ないのではないでしょうか。街並みについても、ダウンタウンでは中華街の隣に中南米コミュニティの繁華街、さらにそれを抜けるとイタリア街があって、街の散歩が楽しいです。ダウンタウンから小一時間ほど移動した北のエリアにはイラン人のコミュニティなどもあります。研究室も国際色が豊かで、カナダ出身の人は全体の10%程度しかおらず、メキシコ、コロンビア、イラン、シンガポール、ドイツ、フランス、中国、韓国と様々な国から集まっています。日本人は前までポスドク、博士学生が1人ずついましたが、入れ違いとなってしまい現在は私1人です。メキシコ出身の指導教官の教授だったり、メンターとなってくれているイラン出身のポスドクだったりと、優秀な人が漏れなくアメリカに集まるという訳ではなく、あえてアメリカを避けて集まった最優秀層が一定数トロントに集まっていると実感しています。
多様性以外にもトロントを好きな部分があり、治安の良さと車がなくても生活ができることです。非銃社会であるカナダの安心感と、生活圏内では夜中も出歩けた便利さが気に入っています。(夜中歩けることが老若男女全てに当てはまるとは言えませんし、ホームレスの集まるシェルター付近は治安の悪化が近年問題視されています。)また、バスや地下鉄などの公共交通機関が発達しており、中心部は車がなくても生活できますし、夜中でもバスがあります。大学はダウンタウンの中心地にあるので、通学のついでに買い物ができたりします。一方で利便性のトレードオフおよび移民の急増でトロント中心部の家賃が高騰してしまっております。2025年1-4月の単身での留学期間では研究室メンバーに部屋探しの相談をしたら、研究室メンバーでシェアハウスしている物件がちょうど一部屋空いており、大学から徒歩10分、中華街まで徒歩3分の非常にお得な物件を月 1000 カナダドル(10万円程度)と破格な値段で紹介してもらいました。2025年8月からは家族寮に住むのですが、そこは大学まで徒歩20分で1800カナダドル程度です。自分の場合は数ヶ月間だけ単身で滞在するという事情でマンスリー契約の制約がありましたが、年間契約であれば単身で大学寮に月1000-1500カナダドルで住める可能性があるそうです。ただ年々家賃が上昇しているため、最新情報はこちらのリンクから確認ください。
他に特筆すべきトロントの特徴としては、現代のAIブーム始まりの地であることがあげられます。2024年にノーベル物理学賞を受賞したトロント大学のヒントン教授の研究チームが2012年に画像認識コンペでディープラーングを活用して従来の精度を大幅に上回ったことでAIが再注目され始め今に至ります。その後もトロントはAI研究の中心地の1つとして地位を確立し、このエリアにAIスタートアップが集中しています。
■ 終わりに
学びたいことが次々と湧き上がり、圧倒されるような感覚になることがあります。すべてを学びきれないもどかしさに苦しむこともしばしばですが、振り返るとそれだけ知的好奇心を刺激される環境にいられるのは幸せだと思います。改めて「知の探究」という自分の人生のテーマを再認識できています。学位留学は辛いことも楽しいことも濃度が高い印象で、その振り幅こそが人生を豊かにしてくれるのではないでしょうか。また、今のところ一番辛いとされる冬しか経験していないのにこれだけ楽しめているのだから、夏にはさらに充実した留学生活を満喫できるのではないかと期待しています。