海外PhD留学生のリアル〜遠距離恋愛の秘訣〜(山口直哉さん、山口真友子さんインタビュー)【XPLANE TIMES 留学生活だより】

複数のタイムスケールの連絡手段を持っておく

海外に渡航する前提で交際が始まったということでしたが、お互いアカデミアとビジネスのキャリアにいらっしゃって、時差の関係もあり、生活時間が合わないこともあったと思います。どういった困難を経験し、どのように乗り越えられましたか?

正直に言えば、遠距離での交際自体にあまり大きな問題はありませんでした。二人ともお互いの場所でとても忙しい生活をしており、僕は研究に没頭してなんとかPh.D.を取らなくてはならない状況でしたし、妻は朝から夜まで働き詰めで、よく海外にも出張していました。お互いがお互いの場所で没頭できるもの、やらなければならないことがあったので、そのことが良かったのではないかと思います。
しかし、大きな不測の事態が発生しました。コロナ禍です。当時、私はニューヨークにおり、妻はシンガポールに駐在していましたが、ビザや各国の水際対策に伴う入国・出国制限で行動が大きく制限されました。そのため、およそ二年間直接会うことができませんでした。禍中では、より意識的に連絡を取るようにしたり、同じ動画を流しながら部屋でエクササイズしたり、それぞれの場所の宅配サービスを見つけて贈り物を送り合うなど、そういうことを少しずつ取り入れてなんとか乗り越えました。また、ニューヨークと東京、もしくはニューヨークとシンガポール間は、時差がおよそ十二時間だったことも幸いしました。私が起床すると妻が仕事を終えている時間で、私がラボから帰ってくると妻が出勤する前の時間というふうに、テキストベースの連絡が取りやすかったのです。時差が中途半端な国家間では時間調整が難しいと思うので、とても幸運だったと感じています。

コロナ禍の前はどれくらいの頻度で会っていたのですか?

これは、妻にとても感謝していることです。彼女のおかげで年に四回ほど会うことができていました。
私が年に一回日本に帰国し、妻が忙しい仕事の合間を縫ってニューヨークまで年に三回程度来てくれました。

弾丸旅行で三日間だけニューヨークに行くこともありました。大変でした。ニューヨークに三日間滞在する旅程では、どうしても五日程度必要です。三連休に二日間の有給をつけて会いに行くというような旅行を沢山しました。シンガポールからニューヨークへの旅行はさらに大変でしたので、余計に休暇を取り会いに行きました。

とても妻に助けられました。

とても参考になります。次に、海外での勉強・研究とお仕事がある中で、「関係性を長期的に維持していこう」とする場合、どういうところに気を遣うべきだとお考えですか。何か結果的に良かったことはありますか?

そのことに関して二人で振り返ってみました。そして、結果的に良かったと感じていることは、連絡を途切れないように取るということです。その点に関して、私たちはいくつかの異なるタイムスケールで連絡手段を用意していました。具体的には、LINEなどテキストメッセージのやりとりを毎日欠かさず続けていました。たとえ数通のやりとりでも、起きた時や寝る時など、簡単な内容ばかりでしたが。次に、週末にはテレビ電話の時間を設けていました。そして、私たちは二人とも筆まめでしたので、毎月欠かさず一通ずつ手紙を送り合うようにしていました。季節やイベントに合った手紙を選ぶことや、妻の出張先から手紙が来ることもあり、毎月の楽しみでした。私はGlobal Forever Stampをまとめ買いし、毎月それを貼って日本やシンガポールへ手紙を送っていました。最後に、年におよそ四回、つまり三ヶ月に一回程度、会えるようにしていました。異なる時間のスケール—毎日、週に一回、月に一回、年に数回—で連絡を絶やさないようにしていたのが良かったのではないかと考えています。

関連して、次のイベントをなるべく具体的に設定しておくことで、私は前向きに待つことができました。気がついたら長い年月、五年・六年が経っていました。それが、遠距離の交際期間中でもポジティブにいられた一因かなと思います。

「次は夏に帰ってくるね。」とか、「次は私が冬に行くね。」という感じでしょうか。
僕は当時、およそ一世代が三ヶ月かかる動物を使った研究をしていましたので、「次は二世代くらいで会えるかな。それまでにこの実験の準備ができているだろうな。」というような感じで生活していました。

加えて、会話の中で、相手の仕事の話や交友関係などを意識的に一歩踏み込んで聞くようにしていました。研究の話をされても難しいけれど、踏み込んでいろいろ話してもらい、なるべく向こうの生活を想像できるように意識していました。長期間関係を維持していくうえでよかったと思います。実際に相手を訪ねた際に、会話に上がっていたもろもろを体験することも楽しかったです。
また、言葉にして気持ちを伝えることも意識していました。例えば、LINEで楽しい顔のスタンプを送っているけれど、実はとても悲しい気持ちのときもありますよね。距離が近ければ、会うことができて、言葉にしなくても伝わるかもしれません。しかし、遠距離では絶対に気がついてもらえないので、全てを言葉にして伝えようということを意識していました。

次:自分の生活を犠牲にするのではなく、柔軟に調整する、遠距離はいつか終わるという期待

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