Statement of Purpose (SOP)

Statement of Purpose (SoP)

1. Statement of Purpose (SoP)とは?

出願の際に提出するエッセイは一般にSoP (Statement of Purpose)と呼ばれます。日本語ではいわゆる「志望理由書」にあたります。海外大学院は、主に試験の成績や実績で判断される日本の大学院受験とは異なり、ただ優秀である学生が必ずしも合格するわけではなく、SoPは海外大学院の受験においてかなり重要視されます。

SoPでは、大学あるいはSoPを実際に読む教授に対し、
(1) なぜ自分がその大学に行く必要があるのか?
(2) なぜ大学が自分を取る必要があるのか?
の二点を示し説得する必要があります。

(1) なぜ自分がその大学に行く必要があるのか?

海外大学では、大学それぞれでカルチャーやプログラムのカラーが大きく異なり、かつ大学ランキングなどの指標においても上位に入る大学が数多く存在します。それらの中で、他の大学ではなくその大学に行かなければいけない理由を論理的に説明しましょう。

具体的には、
A. 今の自分は何者か、何が今の自分を形成してきたか
B. 将来の目指す自分や叶えたい目標
を示し、
C. その現在と将来を繋げる道筋に大学、研究室が必要である
という流れで説明します。

(2) なぜ大学が自分を取る必要があるのか?

一方で、「大学に行く必要がある」ことだけを示しても良いSoPとは言えません。「この学生を取りたい」と思わせる必要があり、学科や大学に向けての自分の価値のアピールが必要となります。。
特に自然科学系のPhD課程の場合は、PhD学生の授業料や給料を大学や指導教官が支払う必要があります。そのため、大学側も在籍中に大学に価値を提供してくれる学生を入学させます。ここでいう価値とは、大学院の場合は主に研究遂行能力です。この研究遂行能力には、個人として研究を実際に進める能力の他にも、研究室の仲間とコミュニケ―ションをとって、グループとして研究を発展させる能力、研究を学会発表や論文、研究資金の出資元へのレポートや発表として伝える能力も含まれます。学部への出願の際に重要視される、自分の人柄の紹介や大学のコミュニティの多様性への貢献といった価値については大学院出願の際のSoPでは字数を割かないようにしましょう。

2. SoPに書く内容の書き起こし (Generating Ideas)

前述の(1)、(2)の内容に、どう説得力をもたせることができるのでしょうか?実際に書き始める前に、一度自分の志望理由について整理してみましょう。
以下に質問を用意したので、それに答える形で書き起こしてみましょう。最後の具体例も参考にしてみてください。

質問リスト① なぜ自分がその大学に行く必要があるのか?

A. 今の自分は何者か、何が今の自分を形成してきたか

  • 今までどんなビジョンをもって行動、選択してきたか?
  • それによりどんな結果が得られたか?
  • その結果から形成された自分の強みとは何か?

B. 将来の目指す自分や叶えたい目標/社会

  • 今の自分のビジョンは何か?
  • 過去に持っていたビジョンとは異なっているか?

C. その現在と将来をつなげる道筋にその大学、研究室が必要である

  • A, Bを踏まえて、その大学、その学科、その研究室でなければいけない理由は明確か?
  • ビジョンと現在の間に大学が必要なことが明確であるか?
  • 大学/学科/研究室がそのビジョンのためにできることが明確に言語化できるか?

質問リスト② なぜ大学が自分を取る必要があるのか?

  • 自分の研究スキルの強みは何か?それを証明するものはあるか?
  • 具体的な研究スキルはなくても、経験から示せるポテンシャルはあるか?
  • 志望大学、志望研究室はどんなプロジェクトを行っているか?
  • その研究室やプロジェクトはどんなスキルを求めているか
  • その求められるスキルと自分のスキルはマッチしているか?していない場合は、どのようにその研究室に貢献できるか?

以下は実際のSoP例の筆者の答えを例として書いています。SoP例自体もそうですが、この答えにはまだ改善の余地はあります。完璧な例、正解の例として見るのではなく、日本の大学を卒業し、海外大学院に合格した一学生のSoPとして見てください。

質問リスト① なぜ自分がその大学に行く必要があるのか?​への回答例

A. 今の自分は何者か、何が今の自分 を形成してきたか

今までどんなビジョンをもって行動、選択してきたか?
全てのモノの根源となる材料科学の研究に携わり、材料開発を行うことで、人々の生活を豊かにしたい。
そのために、大学での授業・研究や、他の大学・機関との共同研究に尽力してきた。
今の研究の発展には所属研究室の専門性以外の技術も必要と感じ、自らコンタクトをとり共同研究を開始した。

それによりどんな結果が得られたか?
科学や研究について学ぶことの楽しさを学んだ。
それがさらに研究への興味を引き立て、自分の研究能力の向上につながった。
その結果として、論文や賞、奨学金などの実績につながった。
共同研究での専門性や、異分野間でのコミュニケーションの重要さに気づいた。
日々の共同研究や、外への研究に関するリーチアウトがサイエンスコミュニケーションスキルのコンテストでの優勝につながった。

その結果から形成された自分の強みとは何か?
賞や論文に裏付けされる、高い研究能力を培った。
共同研究を多く行うことで、幅広い実験能力を身に着けた。
異分野間でのコミュニケ―ションの方法を学んだ。

B. 将来の目指す自分や叶えたい目標/社会

今の自分のビジョンは何か?
材料開発による人々の生活の充実。

過去に持っていたビジョンとは異なっているか?
変化することはなく、材料開発による人々の生活の充実という点で一貫している。


C. その現在と将来をつなげる道筋にその大学、研究室が必要である

上二つを踏まえて、その大学、その研究室でなければいけない理由は明確か?
1. 設備が充実しており、切磋琢磨できる優秀な仲間がいる環境で自分の研究能力を高めたい。
2. 志望研究室が他の大学にないユニークな研究をしており、その研究、材料開発を通して人々の生活を豊かにしたい。
ただ、他の大学の研究に比べ、志望研究室で自分のビジョンがより達成できる理由については曖昧。
材料開発による人々の生活の充実というビジョンが抽象的であるため、ビジョンのために得たいスキルが不明確であり、その研究室で得たいスキルに具体性はない。

ビジョンと現在の間に大学が必要なことが明確であるか?
研究能力の向上と、新しい材料の開発を大学でしたいという点では明確。もう少し具体性が必要。

大学/研究室がそのビジョンのためにできることが明確に言語化できるか?
志望研究室でのユニークな材料開発研究を通じて、研究遂行能力の向上が可能。
研究室での材料開発研究自体が、人々の生活の充実につながる。

質問リスト② なぜ大学が自分を取る必要があるのか?​への回答例

自分の研究スキルの強みは何か?それを証明するものはあるか?
論文や国際発表へつながった、高く、幅広い実験能力。
自分で共同研究をとってくる能力。
異分野の人との共同研究の経験。

具体的な研究スキルはなくても、経験から示せるポテンシャルはあるか?
学科で最優秀学生賞を得た経験から、その学科全般の知識が、現在の研究テーマとは異なるテーマにも応用可能。
サイエンスコミュニケーションスキルのコンテスト優勝の経験から、異分野間での共同研究や異分野、一般向けの講演や記事・論文執筆のスキルの高さの示唆。

志望大学、志望研究室はどんなプロジェクトを行っているか?
ナノポーラス材料とコーティング技術の組み合わせによる、サイズ効果を利用した様々な材料の開発。
Textureによる局所的相変態を利用した新しい超合金の開発。

その研究室やプロジェクトやどんなスキルを求めているか
電子顕微鏡操作や生体適合性試験等の実験能力。
材料科学、特に冶金学の知識。

その求められるスキルと自分のスキルはマッチしているか?していない場合は、どのようにその研究室に貢献できるか?
マッチしている。

3. SoPの書式

SoPの書式についてですが、大学によって様々であるため、必ず学科のホームページで確認し、指示を遵守してください。
大学によっては形式や内容の指定がHP上には記載がなく、実際に出願する際に使うWeb applicationにのみ載っている場合もあります。その場合は一度Web applicationに登録して何が指定されているか確認しましょう。
中にはSoPの内容や長さをはっきり指定していない場合もあります。

指定がない場合は基本的にフォーマットは自由ですが、

  • 500-1000 単語 
  • 1〜2ページ 
  • フォントサイズ:12 
  • フォント: Times New Roman 
  • 上下左右1インチ余⽩ 
  • 左揃え 
  • シングルスペース

を参考に書きましょう。

4. SoPの文章を書くコツ

実際にSoPを書くときに、意識するべき点を紹介します。

A. 読む人は多忙な教授

SoPを読む人は、毎日研究や授業で多忙な教授達です。大量の応募書類の中で、一つ一つのSoPを読む時間はほとんどありません。その中で最後まで読んでもらうために、簡潔にかつ論理的に文章を書く必要があります。

B. 興味のある教授の名前を二人以上書く

SoPには、自分の興味のある教授/研究室の名前を2人以上書きましょう。
また、教授の名前を明記することで、その教授の目に留まりやすくなります。年度によっては予算の都合上、第一志望先の教授が学生を取るつもりがない場合もあるので、複数名の教授の名前を書いておきましょう。

C. CVや推薦状と相互補完するように

SoPは他の出願資料であるCV (or Resume)や推薦状と相互補完するように書きましょう。
例えば、CVで書いてあるような受賞歴を、SoPで列挙する必要はありません。受賞等を強調するために記述したい場合は、研究遂行能力の裏付けや、その賞で自分が何をしたかの具体性を付け加えるように書きましょう。

D. 夏から書き始めて何度も書き直す

良いSoPは一朝一夕では出来上がりません。良いSoPを書くには、夏から書き始めましょう。なぜなら、SoPの第一稿から、推敲し完成形へ仕上げるのにかなりの時間を要するからです。英語ネイティブや既に大学院留学している先輩、同時期に受験する仲間を見つけて何度も何度もフィードバックをもらいましょう。日本語での志望理由書が必要となる国内の奨学金の応募時期が8〜9月頃なので、その頃にはSoPのストーリーの原型が出来上がっているといいでしょう。

XPLANEでも、2020年8月にSoPメンターシッププログラムというSoP執筆のためにアドバイスをもらいたい出願予定者と、後輩のために執筆支援をしてくださる留学経験者のメンターをXPLANEコミュニティ上でマッチングし、出願に向けてSoPドラフトを練り上げていくプログラムを立ち上げました。詳しくはこちらをご覧ください。

E. 気を付ける表現

  • Action verbを使う (Action verbのリスト
  • “I~” の多用は避ける(あなたのSoPだということは分かっています)
  • 省略形は避ける(can’t, isn’t, aren’t, etc)
  • 略称は一番最初にフルの名前を書く。例: Carbon Nanotube (CNT)

5. SoPの実例を見てみよう!

日本の大学で学部および修士を卒業し、アメリカの大学院に合格した学生が出願に実際に用いたSoPを紹介します。(具体的な研究内容等は変えてあります。)まだ改善の余地はあり、このSoP例に関して良い点、改善できる点のコメントがあるので、それを参考にしながら自分のSoPを書き上げてみてください。

アメリカ大学院の理系博士課程合格SoP例1 コメント付き(材料系)

アメリカ大学院の理系博士課程合格SoP例2 コメント付き(土木系)

6. XPLANE SOP執筆支援プログラムについて

2020年8月より、XPLANEでは Slack参加者向けに「SOP執筆支援プログラム」と題し、留学志望者を近い分野の留学経験者とマッチングし、SOPの質を高めてゆくプログラムを実施しています。
プログラムの詳細については紹介記事をご覧ください

また、以下にSOPプログラムに先駆けて行われたワークショップの資料を紹介します。。SoPを執筆する心構えや手順、各パラグラフに書くべき内容などについてまとまっています。SoPを書き始める方にとって必読の資料です。

第1回ワークショップ「SOPの執筆方法」(2021年8月8日開催)
第2回ワークショップ「SOP執筆のためのアカデミック・ライティング」(2021年8月22日開催)

その他資料:ワークシート1(Generating ideas)ワークシート2(Formal Outline Template)ワークシート3(Formal Outline アクティビティ)

7. その他参考になるおすすめの資料

Purdue Online Writing Lab
アメリカの大学生は誰もが知っているWriting全般に関して網羅しているサイト。Academic Writingの基礎SoPに特化した項目などWritingに関するすべてがここにあるといっても過言ではありません。

The elements of style, William Strunk Jr., E. B. White
英語のNative speakerにはかなり有名なライティングの指南書です。ページ数も手頃で、シンプルかつ伝わる英作文の書き方についてまとまっています。著作権が切れているため、無料でWeb公開されています。また、日本語訳したものもあります。

UC Berkeley (Writing the Statement of Purpose)
UC Berkeleyの大学院 admissionページの一つで、SoPの書き方を分かりやすく英語で説明しています。SoP執筆前に目を通しておきましょう。

2015年SoP講座資料 presented by 米国大学院学生会 & UT-OSAC
2015年に米国大学院学生会とUT-OSACの共同で開催された、海外大学院受験者向けのSoP講座資料。スライド形式で、SoPの書き方についてまとまっています。