渡航後の薬、病院、医療保険【渡航ガイド】

留学先での薬・病院・医療保険

(2023年11月時点での情報で、主にアメリカにおける情報がについて書かれています。本ページだけでなく、公式のホームページなどを必ず参照してください)

目次

渡航後の薬・病院・医療保険に関する体験談・疑問

2023年2月にXPLANEコミュニティで留学経験者に向けて実施したアンケートでは、渡航後の薬・病院・保険に関して以下のような体験談・疑問がありました。

  • 規制や流通の観点でアメリカで日本と同じ薬が処方してもらえるか分からなかった。
  • アメリカでは保険等の関係でどの病院でも気軽に受診できるわけではないので、まず主治医を確保するところから大変だった。
  • アメリカだと特に病院にかかるのが非常に高いので、苦労している。また自分の症状を説明するのも少し大変だった。
  • 持病や低用量ピル服用のため、定期的に複数の病院に行っていたため、引き継ぎをどうするか困った。常備薬は渡米前にひとまずもらえるだけもらっていったが、実際はアメリカの方がワクチンやピルが無料だったため、必要なかったかもしれない。
  • カウンセリングを受けるのは日本よりも楽なことが多い。

この記事では渡航後に知っておきたい薬の準備・病院・保険の基礎知識についてまとめました。渡航前に行う準備については別の記事でまとめてあります。

また、渡航後にメンタルヘルスに問題が生じてしまった際の対策については下記の記事でまとめてあります。

一時帰国した際の保険の問題については以下の記事でまとめてありますので併せて参照してください。

1. 処方薬

近年日本でも様々な形態の処方箋がありますが、現時点は紙の処方箋を医療機関で受け取り、調剤薬局で実際に処方薬を購入する手順が一般的です。しかし海外では処方箋の受け取りや処方薬の購入の手続きが異なることがあります。詳細は国ごとに様々ですが、ここでは主にアメリカと日本での仕組みを比較してご説明します。

  1. 電子処方の場合が多い
    アメリカでは電子処方がメジャーであり、医療機関から直接特定の薬局に送られることが多いです。処方箋発行後は該当する薬局にて処方薬を購入します。初回などは保険情報の提示が必要となります。
  2. 「リフィル」という仕組みがある
    繰り返し同じ処方薬が必要になる場合、日本ではその都度医療機関を受診し新たに処方箋を発行してもらうことが基本かと思います。アメリカでは、「リフィル(補充)」という仕組みがあり、場合によっては処方薬が少なくなってきた際には直接薬局で追加購入を行うことが可能です。どの処方薬がリフィルの対象であり、それぞれ何度までのリフィルが可能かは処方薬の容器などに記載されています。ご自身で内容を確認するか、不安な場合は担当医師あるいは薬局に確認を取りましょう。

2. 日本での通院・治療を海外の病院でも継続する場合

日本で通院・治療を継続していて海外でも同様の医療を継続する必要がある場合、いくつか注意すべき点やオススメする手続きがあります。

  • 渡航前に日本の医師に診断書(可能であれば現地の言語)作成をお願いする
    既往歴や現時点の治療内容等について正確に現地の医師に伝えるために、日本の医師に診断書を作成してもらうことをおすすめします。可能であれば、現地の言語で書いてもらうのが理想です。
  • 処方薬の内容を確認し、現地で継続可能か確認する
    国によって許可されている薬が異なることがあります。あるいは「2.医療保険の仕組み」でご説明した通り、薬に対する負担額が日本と海外で異なる可能性があります。現地での治療にスムーズに移行するためにも、現地で現在の薬が使用(または持ち込み)可能かや加入予定の保険でカバーされているかなど確認することをおすすめします。もし、不都合が生じるようであれば渡航前に日本の医師に相談し対応を検討してもらえると理想的です。処方薬に限らず、よく使う薬があれば、薬の空き箱を持っていくと、現地で類似のものを探す時に便利です。
  • 薬の持ち込み等に特別な対応が必要となる場合がある
    日本から現地に渡航する際、普段使われている薬はある程度の期間分、日本から現地に持ち込まれることになると思います。しかし、先述の通り、国によって許可されている薬は異なるため注意が必要です。場合によっては持ち込みそのものが禁止されている場合もあります。また、持ち込みは許可されていたとしても薬によっては医療機関からの英文での証明が必要となる場合があります。

3. 医療保険(アメリカの場合)

医療保険の基礎知識

日本では国民皆保険制度が採用されており、基本的にどの医療機関でも保険証を提示することで医療サービスを全体の3割などの負担で受けることができます。しかし、海外では国によって様々な医療保険の仕組みが採用されており、ご自身の滞在する国でのルールをしっかりと把握することが重要です。処方薬と同様、アメリカと日本の違いをまとめました。

  • 民間保険が基本
    アメリカでは公的な医療保険は高齢者、障害者、または低所得者を対象としたものしかなく、その他に該当する人は民間保険に加入することになります。多くの大学では大学が用意している民間保険があり、特別な事情が無い限りはこちらの保険に加入することで問題ないと思います。保険の加入については後程解説します。
  • 加入する保険が使用可能な医療機関には制限がある
    アメリカでは、保険会社と契約した医療機関以外で医療を受けると保険が適用されず全額自己負担となってしまいます。保険が有効な範囲をネットワークと呼び、サービスを受けることを予定している医療機関が「ネットワーク内かネットワーク外か」という判断が必要となります。
  • すべての診療科がカバーされているとは限らない
    日本では医療保険で基本的にすべての診療科にかかることができますが、アメリカでは保険によってカバーされる診療科に違いがあることがあり、診療科の追加に別途費用が必要になることがあります。特に歯科(Dental)と眼科(Vision)はオプション加入の場合もあります。
  • 保険によって薬の負担額が異なる可能性がある
    アメリカの保険では処方された薬の分類によってどの程度自己負担をする必要があるかが決定されます。例えば比較的新しい薬などの場合、保険によっては自己負担額が高額になるケースがあるため、医師から処方を受ける際には自身の保険を必ず確認しましょう。
  • 健康診断がカバーされている
    多くの民間保険は年に1回の健康診断の受診費用をカバーしています。所属している大学に大学病院がある場合は学内で健診を受けることも可能です。
  • 低用量ピルがカバーされている
    多くの民間保険は低用量ピル(Birth control)を保険適用可能としており、無料もしくは日本に比べてかなり安価で入手することができます。処方箋を作成して貰った後は院内処方の場合は病院内の薬局で、院外処方の場合はウォルマートやターゲットなどの大型スーパー内の薬局で受け取ることができます。
  • 救急車が有料
    アメリカの場合は救急車が有料です。具体的な金額は州・搬送された距離などによって異なりますが、1回あたり300ドル前後です。

医療保険の加入について

  • 大学から加入する保険を指定される場合が多い
    • 前述の通り、学位留学では留学先の大学が指定した民間保険があり、特別な事情がなければこちらに加入することになります。筆者の大学の場合、基本的には大学院生は全員指定された民間保険に自動的に加入します。特別な事情があり別の民間保険に加入する場合のみ別途手続きが必要となります。1年更新の場合が多く、単位数などで自動・手動が変わる。手動の場合はさかのぼって適用できるサービスがある場合もある。
  • 別の民間保険に加入する場合は大学の条件をクリアする必要がある
    • 特別な事情で大学が指定した保険会社以外の保険に加入する場合は、大学から提示された条件をクリアしている保険を選ぶ必要があります。この条件には、「免責額が●●ドル以下であること」、「年間の保険給付金が無制限であること」などが含まれます。もし大学指定の保険以外に加入する場合は、別途問い合わせをして条件を確認してください。

医療費の自己負担で気をつけたい3つのポイント

実際に怪我や入院で医療費の支払いが発生した際、医療保険を適用した場合でも、一定額は自身で負担することになります。このときの自己負担額を計算する際には3つの点に留意しておく必要があります。以下で解説します。

  • 医療費の一定の割合を負担する必要がある(自己負担割合, Co-insurance)
    • 日本の保険と同様、医療費の一部を負担する必要があります。加入する保険によってこの割合は多少異なりますが、20%から30%程度とされています。
  • 医療サービスを受ける度に一定額を別途支払う必要がある(自己負担金, Co-payment)
    • 具合が悪くて医師の診察を受けた、怪我で入院してしまった、など医療サービスを受ける度に所定の金額を別途支払う必要があります。
  • 医療費が一定額を超えるまで保険を適用できない(免責額, Deductible)
    • 年間の医療費が保険会社が定めた額を超えるまで保険が適用できない場合があります。

具体例として、自己負担割合が20%・免責額が300ドルの医療保険に加入している人が500ドルで歯科治療を受け、自己負担金が50ドルだった場合の自己負担額を計算してみましょう。

この場合、免責額+自己負担金の350ドルと、医療費500ドルから免責額300ドルを引いた200ドルに自己負担割合を掛けた額の合計額が自己負担額になりますから、以下のように計算できます。

300 + 50 + (500 – 300) * 0.2 = 390 ドル

4. 参考資料

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