海外生活における安全管理【渡航ガイド】

留学先での安全管理

(2023年9月時点での情報です。本ページだけでなく、公式のホームページなどを必ず参照してください)

こちらは、毎年渡航前時期に開催されている安全講習・ヘルスケアイベントの内容を元に作成された記事です。海外在住経験者に対して事前にアンケートを行い、実体験を参考にしています。
留学先で、安心安全な留学生活を送るために知っておいた方が良いことの事例や対策を紹介します。留学先として実際に住む地域以外にも、学会や旅行で別の地域を訪れることもあると思います。これらを参考にして安全な海外生活を送りましょう!

目次

1. 銃の危険

銃声ってわかりますか?

日本では銃を使用した犯罪が少ない(令和4年は9件)ため、銃が身近なものではなく危機感を持ちにくいという事実があります。2023年に元首相に対する銃撃事件があった際に筆者は海外の友人たちから「日本人は銃声がしても立ったまま」ということを指摘されました。
必要以上に怯える必要はありませんが、安全対策として以下のようなことを一度意識しておくと良いでしょう。

  • 銃声の音を知っておく(「花火のような音」「パンクしたときのような音」と表現されることも)
  • 何かがあったら伏せる、物陰に隠れることを意識しておく
  • 「もし銃の乱射などの事態に巻き込まれたら?」というイメージを一度しておく(避難経路など)
Office of Public Safety
Run, Hide, Fight – Active Shooter Protocol An Active Shooter is an individual actively engaged in killing or attempting to kill people in a confined and populated area; in most cases, active shooters use...

銃社会の国や地域では、ポケットに手を入れたまま、や片方の手が胸元に入るなどがあると、「銃を持っている」と勘違いされてしまうことがあります。大事の場合は銃を向けられることもありますので、最初何を言ってるかが分からない際には両手を上げた(両手を見せる)状態で聞き返しましょう。

2. ドラッグの危険

国によっては、日本では違法な大麻やその他のいわゆる「ドラッグ」が合法の場所もあります。知らないことを自覚し、周りをよく見て動きましょう。

  • 香りが強いものは分かりやすいですが、お菓子の形になっていたり、巻煙草の様だったりと、なかなか最初は気づけないこともあります。
  • 特に、既製品ではない手作りのブラウニーなどは特にドラッグが入っている事例が報告されているので、気をつけましょう。
  • お隣さん、ホームパーティ、ナイトクラブなどで、知らない人からの飲み物や食べ物を受け取ることは避けましょう
  • 空港などで荷物を放置している間に薬を入れられ、知らない間に密輸に協力させられているという事例もあります。荷物は必ず手元に置いておきましょう。

3. 詐欺の危険

どのような実例があるか知っておくことで詐欺の被害を防げる可能性が高まります。以下に代表的な詐欺の事例を紹介します。

テキストメッセージ詐欺

「郵便物が上手く届かなかった」「抽選に当たった」などという偽のメッセージを送り、そのメールに含まれているリンクで詐欺サイトに誘導する手口。日本よりも巧妙かつ数が多い。

テキストメッセージ詐欺の例(筆者撮影)。USPSはアメリカの郵便局に相当。
電話詐欺(なりすまし)

テキストメッセージ詐欺の電話版。クレジットカード会社や政府機関などを名乗り、カードの番号やソーシャルセキュリティナンバーなどの個人情報を聞き出して悪用する手法が多い。

チケットサイト詐欺

特にイベントのチケットの転売が合法である国で、日本より転売が一般的な傾向があるためか横行している。
イベントのチケットや航空券の予約サイトで、「公式サイトと似た様相のサイトなのに料金を振り込んでもチケットが送られてこない」「送られてきたチケットが使えない」などのケースや、転売した人が意図的に詐欺行為をしていることなどが頻繁にある。

中古品マーケット詐欺

チケットサイト詐欺などと同様、オンラインで個人同士で物をやり取りする時は、品物に振込後、売り出し者から音沙汰がないことなどがある。
できれば直接会って金銭と物のやり取りを行うのが良い。

家探し/賃貸契約の際の詐欺

現地に行く前にオンラインだけでコミュニケーションをすると、振り込みなど全て済んでいざ現地に行ったら家がない・家の状態が悪いなどの問題が発生することがある。可能ならば現地に行ってから探す、契約をする前に内見をする、または現地の人に聞くのが良い。

無許可タクシー詐欺

NYの通称”白タク”など。空港の到着口を出ると「taxi?」などと声をかけられ、そのまま着いていくと通常価格を大きく上回る値段を請求される。大きい荷物を後ろに入れていたりすると、払わなければ荷物を出さないなどと脅されることもある。係員のような服装をしていることもあり、存在を頭では知っていても被害に遭ってしまう人が多々いる。

路上勧誘詐欺

「無料だ」と言って物を無理やり渡してきたり、着ぐるみを着た人が写真を一緒に取ろうと声をかけてくるが、いざ物を受け取ったり写真を撮ると高額の料金を請求される。

募金詐欺

募金の名目でお金を集めつつ、募金先に正しく送られず懐に入るだけの詐欺を働いているケースがある。路上で声をかけてくる募金活動、修行僧のふりをするなどの事例がある。

警察なりすまし詐欺/劇場型詐欺

警察のふりをし、身分証の確認と言って財布を確認しながらお金などを盗む。トラブルを自作自演する可能性もあり、例えば不審者から一見助けてくれる人を演じることもある。

日本について言及して警戒を解くケース

日本が好き、などと言って油断させ、会話し相手が親近感を感じたところでお金を貸すなどの依頼をしてくるが、その後言い訳をつけて返さず、雲隠れするといったケースがある。

これらの多様な詐欺のための対策として、以下のことに注意すると良いでしょう。

  • 情報力や言語力が弱いとターゲットにされやすいので、事前に情報収集をすること(タクシーであれば適正価格等)。
  • 旅行者に見えない工夫をする、外に出ている時は隙を見せない(携帯や地図を見ながらキョロキョロする、立ち止まるなどは旅行者に見えやすい)
  • 人助けをしたくなってしまう気持ちも分かるが、基本的には「人を疑う」スタンスでいる。毅然と対応することが大切。
  • “Taxi?”などと話しかけてくる人は無視し、安全とされているサービス(UberやLyftなど)を使うこと。また万一のためにナンバーを控えておくこと。
  • 問題発生時の連絡先を知っておくこと。大学のオリエンテーションで紹介されたり、州のサイトに載っていることが多い。
  • 日本領事館からのメーリスを確認する。在留届またはたびレジに登録するとメーリスが届くようになる。

4. 窃盗スリの危険

窃盗の起こりやすいタイミング

  • どこで起きやすいか知っておく
    駅、観光地等の人混みは要注意。
  • どういう状況でスリが発生しやすいか知っておく
    Distraction(事故や乱闘など目がそれる出来事が発生したとき)
    QuickEscape(電車で扉が閉まる直前等)
  • スリは見分けづらい
    女性、子供の場合もあり、旅行者に扮している場合もある。
  • 必要なものだけ持ち歩く
    パスポートは持ち歩くより、安全な場所に保管するほうが良い場合もある。
  • スリは貴方のポケットから狙う
    服でもカバンでも。ズボンの後ろポケットは標準ターゲット。
  • 現地に馴染む服装が無難
    人混みで地図を見たりガイドブックを見ているとターゲットになりやすい。ブランド品等の金目のものが見えるとターゲットになりやすい。
  • 盗難防止グッズを活用する
    防犯用パスポートケースなど、見せずに携帯する装備が良い。南京錠等で鞄をロックするのも有効。

窃盗・スリのよくある手口

  • 署名活動/The Petition
  • 「写真撮ってくれませんか?」/“Take My Photo”!
  • ニセ警官/The Fake Police

などの他、グループで囲んできて、一人に気を取られている間に別の人が物をスるなどの手口もあるので注意しましょう。

窃盗・スリ多発地域 (ヨーロッパ留学中の学生の経験談)

以下の地域は特に多いことが知られています。注意しましょう。

  • スペイン、バルセロナ、ランブラス通り
  • フランス、パリ、エッフェル塔
  • フランス、パリ、サクレ・クール寺院
  • イタリア、ローマ、トレビの泉
  • イタリア、ローマ、コロッセオ
  • チェコ、プラハ、カレル橋
  • チェコ、プラハ、旧市街広場

5. ハラスメントの危険

犯罪に限らず、海外留学で様々な種類のハラスメントに遭遇する(被害者としても、加害者としても)可能性は大いにあります。

ハラスメントの具体例

ここでは、海外大学院進学者に一番関係しうる「パワーハラスメント」「アカデミックハラスメント」「セクシャルハラスメント」の3種類について、いくつか具体例を紹介します。

【パワーハラスメント(パワハラ)の例】

  • 地位や立場を利用して、強い言葉を言う、無理な指示をする
  • プライベートな誘いを断ったことが理由で、悪い成績・評価をつける
  • 就職希望先の社員に「能力が足りない」などと言われ受け入れるしかない状況

【アカデミックハラスメント(アカハラ)の例】

  • 学習や研究に必要な文献や実験機器を、使用できないようにする
  • 「一度だけ講義を遅刻した」など正当な理由ではないのに、単位を与えない
  • 推薦状を書くに値する人物でありながら、理由をつけて推薦状を書かない
  • 「研究者としての資質がない」「他大学への博士過程進学は許さない」などとの発言
  • 共著者に入れるよう圧力をかける
  • 研究の協力の強要、雑用を押し付けて研究の時間を奪う
  • 給料をもらっている指導教官の印象を悪くしないよう、タスクを振られても断れない

【セクシャルハラスメント(セクハラ)の例】

  • 関係のない状況でパートナーの有無を聞かれる(例「彼氏いるの?」)
  • 見た目や体型のことを言われる(例「目が大きいね」「足細いね」「肌白いね」)
  • ジェンダーや恋愛・結婚観の決めつけをされる
  • 身体を触られ不快な思いをする
  • 「女性はこの研究に向かない」「男子はこうした方がいい」などの性別による決めつけ
  • 人種や宗教、見た目に関係する不快なジョーク

<自分が被害に遭った際は>

  • 大学にハラスメント対応窓口があれば相談
  • 記録に残す、周りに話す、労働組合(Union)に相談

<自分が加害者になることも>

  • 日本では問題になることが比較的少ないような発言(「顔小さいね」「彼氏いるの?」など)もセクハラとみなされることが大いにあります。「冗談のつもり」「場を盛り上げるつもり」「褒め言葉のつもり」でも関係ありません。よく注意しましょう。
  • 他意なくしたことがハラスメントと認識される可能性もあります。特にアメリカは訴訟社会のため、いざ起こった場合はできるだけ第三者を挟んで事を進めるようにしましょう。
  • 自分ではハラスメントであることに気づかないことも多いため、普段から些細なことでも話せる友人グループを持っておくと、気づくきっかけになって良いでしょう。

6. 性被害の危険

性被害に遭ったら、性被害を目撃したら

留学先での性被害は現実に起きており、外国人の方からのみならず、頼りにしている日本人などからの性暴力などの例も報告されています。また、マッチングアプリなどを使用する人も増加する中、海外で知らない人と会う、ということはとても大きなリスクがあるため、友人に外出先を伝えたり、飲み物を放置してお手洗いに行く(ドラッグを入れられる可能性も)ことを控えるなど、危機感を忘れないようにすることも大切です。「国や文化が違うから」ではなく、嫌なこと、不快なことにはしっかりとNOと言えるようにしましょう。

留学中の性被害については、XPLANEでも過去のヘルスケアイベントを共同開催した外部団体【SAYNO!】ホームページに大変詳しいので、ぜひ参考にしてください。特に、「留学生のための性暴力マニュアル」は必見です。


【SAYNO!】とは:留学中に性暴力に遭った被害者が声を上げ、「これから留学に行く全ての学生たちに自分たちと同じ思いをさせたくない」という願いから2020年5月に設立した団体です。

「アクティブバイスタンダー」の考え方について

自分自身が被害に遭ったわけではなくとも、身の回りでことが起きた時、第三者としてできることがあります。積極的に行動を起こす第三者、「アクティブバイスタンダー」のコンセプトはご存知でしょうか?誰にでも起きうることですので、自分ごとと捉えて普段からイメージトレーニングをしておくと自分の大切な友人・周りの人を助けることができるかもしれません。詳しくは以下のリンクをご覧ください。

アクティブバイスタンダープロジェクトのホームページより

7. 留学生が活用できるリソース

留学生が利用できるリソースとして、警察などと所属大学の両方の情報を押さえておきましょう。

  • まずは警察等のSOS先を知る: http://www.anzen.mofa.go.jp/m/mbemergencycontactnumarea.html
  • 自分の大学のリソースを知る
    • 連絡先を知る:キャンパス警察、大学のクリニック、
    • メンタルヘルスケア、性被害
    • キャンパスセーフティサービス(セルフディフェンスクラス、夜間の無料送迎サービス)
    • アラートの設定(銃撃、性犯罪、気象災害などに関する情報が届く)
    • 各大学のDepartment of Public SafetyのHPに纏まっている(米国の場合)
    • 人種差別やハラスメントを大学に報告したい場合、Diversity, Equity, and Inclusionオフィスなどが窓口に

8. まとめ:留学先で覚えておきたい普段の心得10か条

1. 「お金で安全を買う」という認識を持とう

例えばホテルや家賃など、安いところには実際には治安が悪いエリアだったり、セキュリティがしっかりしていなかったりとそれ相応の理由があります。その地域を知る前には、ある程度の金額を払っても安全を優先しましょう。

2. 夜1人で出歩かない、知らない人についていかないようにしよう

学校のセキュリティサービスを知る/セキュリティライトの場所を知ろう!そのほかにも、犯罪アラートの登録と設定、キャンパス内エスポートサービス、キャンパスCitizenアプリなど活用できるものが沢山!

3. 保険について理解しよう、救急車はアメリカだと有料

自身の保険内容をしっかり確認しましょう。また、ファーストエイドキットのありかや学校の建物のAEDの場所は最初に確認することをおススメします。

4. 自分に非が無い場合はむやみに謝らないようにしよう

アメリカなどの自己責任社会では、謝る=非を認めると認識されることがあります。交通事故、アパートの破損など、気をつけましょう。

5. 交通事故の際には、警察に連絡しよう

交通事故の場合、どんなに小さい事故でもまずは警察へ連絡することをおススメします。(そうしないと保険が使えないため)相手が無保険の場合もありますが、その無保険に対しての保険などもあります。考えられる事態について対策をしておくと理想的です。

6. 持ち歩くものは最低限にし、自分の荷物を目の届かないところに放置しないようにしよう

放置している荷物に物を入れられたり、盗難の被害に遭ったりとトラブルの元になります。

7. 衛生環境や清潔観念の違いを知ろう

生水、生卵が食べられなかったり、賞味期限が異様に長かったり(日本はかなり短く設定してある場合もあります)、トイレが日本と比べて不潔だったりなど、日本とはかなり違う生活環境を理解しましょう。

8. 何かしら契約を結ぶ際には、法律関連について注意しよう

就労条件/賃貸契約(大家さんとの直接契約の場合など)などは、理解した上でサインをしましょう。大学などに法律関連のサポートをしてくれる部署があることもあります。

9. 知らない土地では、土地勘のある信頼できる人と行動しよう

国や都市が変われば文化や環境も変わります。その地域特有の情報を可能な限り得て、準備することが大切です。

10. しっかり休息をとり、睡眠時間をとろう、自分を自分でケアしよう

何かトラブルがあった時にもすぐに対応できるよう、体や心を良い状態に保っておくことが大切です。

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