CV/Resume

CV/Resume

1. CV/Resumeとは?

多くの大学院で出願に必要な書類の1つとして、CV(Curriculum Vitae)またはResumeがあります。両者は共に日本でいう履歴書、職務経歴書のようなものですが、厳密には形式や内容に違いがあり日本の履歴書をそのまま英語に直訳するというわけにはいきません。殆どの大学からCVの提出が課されますが、CVの代わりにResumeを必要とするところもあります。CVとResumeの基本的な違いとは何か、以下の表にまとめました。

上の表のように、CVはアカデミア内での用途を主な目的としている一方、Resumeはアカデミア外での就職、転職活動時に用いる履歴書、というのが一般的な認識です。但し、海外大学院への入学出願書類の1つという立ち位置でのResumeはCVの要素も兼ねることもあり、募集要項をしっかり確認することが大切です。ここではアカデミアで一般的に用いられるCVを重点的に解説していきます。

2. CVに必要な項目とは?

CV、Resumeには決まった形式、レイアウトは無く、出願者が自分自身で一から作成することになります。自由度が高い分、今までの経歴やスキルなどを受け手側に伝わりやすいようにまとめる必要があります。とはいえ、CVは一般的に自分の今までの経歴を全て記すものであり、必ず含めるべき基本事項、ルールさえ押さえておけばSoP作成など他の出願書類に比べて比較的短時間である程度形になるため、後回しにせず早めに取り掛かりましょう。CVに含まれる一般的な項目は以下の通りです。

Note: 以下の項目は一般的なCV記載順に沿って紹介されていますが、実際にどのような順番でそれぞれの項目を自分のCVに記載するかは分野・好みにもより、千差万別です。原則として「自分がアピールしたいことを先に記載する」こと(例:実験のスキルをアピールしたいならResearch skills & capabilitiesを前に、奨学金を獲得しているならScholorshipsを前に、PublicationやConferencesなどは長くなるので後ろに、等)を心がけましょう。

(1) 名前と連絡先(Name and Contact Info)

CVの最初に自分の名前や連絡先を明記します。自分の名前は最も重要な情報の1つなので大きめのフォントを使って強調することが一般的です。

・名前(Name)
・住所(Address)
・電話番号、メールアドレス(Contact info)
最近は電話面接等では主にSkype等が使われるので国際電話をする必要性はほぼありませんが、必ずカントリーコードを含めた電話番号を明記しましょう。教授へのコンタクトを含めた全ての出願プロセスで、使用するメールアドレスは1つに統一させましょう。

Tips:日本の履歴書やエントリーシートとは違い、アメリカでは自分の個人情報(例:誕生日、未婚/既婚、人種、性別、国籍、顔写真)などはCV/Resumeには載せないことが一般的です。ただ、ヨーロッパでは国籍、顔写真を載せている方の割合が大きく、どの国の大学にアプライするか、その国の一般的なスタイルはどういったものかをしっかり確認することが大切です。

(2) 学歴(Education、Educational Background)

アカデミアで主に用いられるCVを作成するにあたって、学歴の項目はとても重要です。名前と連絡先の項目の次に明記しましょう。この項目に記す情報は以下の通りです。

・過去に卒業した or 現在所属の大学、大学院とその場所(国)
・上記の各大学で修めた or 取得予定の学位(B.S., M.Sなど)・学部、専攻
・学位を取得した月日、卒業予定時期
・学部卒業論文、修士論文のタイトル

ここで指導教官の名前を載せるパターンもあります。

・留学歴
・GPA、履修したクラスのリスト

GPAと履修クラスに関しては一般的に必須項目ではありませんが、研究に直結しているクラス名などを載せるのもOKです。ヨーロッパではGPAと共に学年順位を問われることをあるので、自分自身の順位をしっかり把握しておいて出願大学のある国のスタイルに対応できるようにしましょう。

Tips:時系列はCV全体で統一しましょう。学歴の項目で新→古であれば、以降の項目でもその順番に揃えることが受け手側が読みやすいCVを作成するコツの1つです。

(3) 研究/指導経験(Research/Teaching Experience)

ここは、自分の研究及び指導経験をまとめた項目です。この項目は大学院留学を目指す学生にとって特に重要な項目で、できるだけ詳しくかつ簡潔に、今まで自分がしてきた研究経験を明記しましょう。

・研究歴とその簡潔な内容
ここに上記の学位論文の説明などを記すのもOK
・インターン歴(Research Assistantなど)
・専門分野に関連する課外活動、学生プロジェクトなど
・指導経験(Teaching Assistant、Tutoringなど)
・研究に関わった期間

Tips:研究に関する説明をする際に文章がつい長くなりがちですが、CVはあくまで自分の経歴を簡潔に相手に伝えることが目的なので1項目につき大体1~2行ほどの短い文章にまとめましょう。箇条書きスタイルを使うのも一手です。

(4) 職務経験(Employment/Professional Experience)

職務経験の項目には、今までの職務経験、会社名や自らのポジション、期間などをまとめたリストを作成しましょう。出願者によっては、この項目を上記の研究/指導経験とまとめて1つの項目にするパターンもあります。自分の経験、分野にあったレイアウトを見つけましょう。

・ポジション
・会社名
・働いていた期間、場所
・役職の簡潔な説明
・インターン歴

Tips:CVに載せる職歴は、大学院留学、研究に関連したものだけを載せるようにしましょう。例えば、レストランで半年間バイトをしていた、等の職務経験は載せる必要はありません。

(5) 課外活動歴(Extracurricular Activities)

課外活動歴の項目にはこれまで自分が参加した部活動、クラブ、団体でリーダーシップを発揮した経験、もしくはボランティア活動等を記します。この項目は高校から大学への入学審査において一般的に重要視されますが、大学院に進学を希望する学生に教授が期待するのは専門分野での経験(研究、発表、論文執筆、実験スキル等)であり、その他の項目と比べると重要度は下がるといえます。ただ、自分の研究分野に関連する課外活動はとても重要なのでこの項目では研究に関係の無い課外活動をまとめるに留め、研究に関する活動は上記の研究/指導経験に含んでも良いかもしれません。

(6) 研究発表歴(Presentations)

この項目では学会参加経験、研究発表、スピーチ、もしくはセミナー、講演など過去にオーディエンスの前でプレゼンテーションを行った経験のリストを作成しましょう。

・発表の題目、学会名
・発表を行った場所(都市、国、研究機関、大学名など)
・発表を行った日程、時期

(7) 出版物(Publications)

ここでは自分が今まで著者として執筆した出版物のリストを載せましょう。ここの書式は自分の分野で使われる引用文献のスタイルにしっかり法って書くことが大切です。下に記した例のように、自分の名前がどこにあるかを強調するために太字を使ったりと工夫をしてみてください。


[1] J. B. Hartle and S. W. Hawking, “Wave Function of the Universe,” Physical Review D, Vol. 28, Iss. 12, December 1983
[2] S. W. Hawking, “Particle Creation by Black Holes,” Communications in Mathematical Physics, Vol. 43, Iss. 3, pp. 199-220, August 1975

(8) 受賞歴、奨学金獲得歴(Awards & Honors/Fellowship & Grants)

研究に関連してこれまでに獲得した賞(最優秀論文賞や学科長賞)、課外活動や大会での受賞歴、奨学金、大学での成績優秀賞、研究資金獲得歴などをここにまとめましょう。長くなりすぎない限り、それぞれの賞の簡単な概要(どんな実績に対して賞が与えられるか)を載せても良いかもしれません。

・賞や奨学金などの名前
・いつ、どの団体から受賞したか
・簡単な概略

(9) スキル(Skill & Certification)

自分が持つ専門分野に関連したスキル及び資格のリストを作成しましょう。例えばエンジニアリングでは実験スキル、電子工作スキル、機械加工スキル、プログラミング言語などが挙げられますが、研究分野によって必要なスキルは大きく異なります。このスキルは一長一短で身に付くものでは無いので、しっかり長期的な目線を持って出願に間に合うように各種スキルを磨くようにしてください。

TipsExpert…C/C++, Machining; Proficient…R, Python, Welding; Working knowledge…のように、レベル別で整理する形式もよく見受けられます 。

(10) References

CVの最後の項目としてそのCVに載せられている研究経験やスキルが本物であると証明できる人物の連絡先(References)を載せる必要があります。但し、この項目は大学院への出願書類としてのCVというより大学院からポスドク、教授職、研究職など一人前の研究者として雇用される際に重要となるものです。大学院進学の提出書類としては推薦状がその役割を兼ねているという面もあります。Referenceのリストを載せる際には必ずその人物に了承を取った上で掲載するようにしましょう。

・Refereeの名前、所属、連絡先、自分との関係(Academic advisor, Supervisorなど)

3. CVの参考例

最後に、CaltechのPhD課程を卒業した成田海さんのCV(大学院出願時)を具体例の1つとして以下に載せておきます。

様々な参考例やテンプレートがネット上に転がっていますが、決してそれらをコピーすることなく自分自身でこれまでの経験を振り返りながらオリジナルのCVを作成しましょう。自らの経験を振り返りまとめる作業というのはSoPを書く際にも必要となるプロセスなので、SoPを書きながら、もしくは書いた後にCVを作成するという方法も効率的かもしれません。