志望校選び

志望校選び

1. 大学院選びは、自分とのマッチングである

海外大学院受験を決意してから出願まで、さらには合格のオファーを受け取った後でさえも頭を悩ませるのが大学院選びです。

大学ランキングも複数存在しますが、ランキングが全てではありません。海外の大学院それぞれが強い研究分野や学校のカルチャーなどの様々な点において異なる特色を持ちます。その多様な大学院の中から、自分とマッチする大学院を見つけることが大切です。

そのためには、自分を良く知り、大学院を知る必要があります。では、どのような点で大学院とのマッチングを考えるべきなのでしょうか?

(1) 自分がやりたいこととのマッチング

まず始めに、自分がなぜアメリカの大学院に行きたいかを明確にしましょう。

      • 今の研究を深く追求したいから
      • 卒業後に海外企業へ就職したいから
      • 心機一転、分野を変えて再挑戦したいから

など、それぞれの理由があると思います。その目標に向けて、アメリカの大学院で何を学び、何を成し遂げ、卒業後に何をしたいかをはっきりさせましょう(これは出願書類の1つ、Statement of Purposeで求められることでもあります)。明確な目標があるのならば、それが可能となる大学院を選ぶべきです。

(2) 自分が楽しいと思えるかのマッチング

大学院生活は、語学留学などの短期留学とは異なり長期にわたります。その生活を十分に楽しむために、(1)の「自分のやりたいことができるか」に加えて、「その道のりが楽しめるか」もマッチングを考える上で重要です。いくら研究資金や施設が充実し、自分の興味のある研究ができる場であっても、例えば非常にプレッシャーが大きな研究環境であったりなど、それを楽しめる環境にない場合は、自分と大学がマッチしているとは言い難いです。ストレスの多い日々を過ごすことになるかもしれません。

(3) 大学(または研究室, 指導教員)が自分を求めるかというマッチング

マッチングとは双方向のものです。自分がその大学と合うかに加えて、「大学(や研究室)があなたを受け入れたいか」という相手側からのマッチングの要素もあります。その大学をどれほど強く志望していても、大学側がマッチングしていないと判断すれば片思い(=不合格)で終わってしまいます。大学院に関しては、学部(undergraduate)とは異なり、その大学のカルチャーとのマッチングだけでなく、あなたがその大学や研究室の中で研究成果を出せるかという能力も重視されます。

これらのマッチングを考えるうえで重要なのは、

– 自分が大学や研究室に何を求めているか
– 逆に、大学や研究室が何を求めているか

を明確に理解・認識することです。以下では、自分が希望する大学院の選び方として、(1), (2)について詳しく見てゆきましょう。

2. マッチングを考える上でのレイヤーとファクター

・マッチングのレイヤーは5つある?

大学院と自分のマッチングを考えるうえで、大学院には5つのレイヤーが存在することを認識しましょう。それは、

1. (大学のある)地域
2. 大学
3. 学部
4. 研究室
5. 指導教員

です。それぞれのレイヤーの中で、考えるべきファクターが多数存在します。

マッチングレイヤー概念図

・それぞれのレイヤーでの考えるべきファクター
以下にマッチングに関わるファクターをレイヤーごとに列挙しました。
また、それぞれのファクターについて知る方法を以下のように色分けしています。

黒字:webで調べられるもの
青字現地の学生に聞いて調べられるもの
赤字自分が直接訪問することでしかわからないもの、事前情報と訪問したときで印象が強く変わりうるもの

ファクターの具体例

レイヤーごとのファクターの具体例を以下に列挙しています。レイヤーの横の矢印をクリックすると説明が出てきます。

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地域におけるファクターは、住みやすさに直結します。ここのファクターをどこまで重視するかは本当に人それぞれです。どこでも住めば都という人もいれば、気候が好きでなく卒業後二度と戻ってきたくないという人もいます。

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大学におけるファクターは、自分の学部や研究室の外で、どういう活動ができるかということを主に表します。研究以外でも大学院生活で得たいものがある(例、アントレプレナーシップ)場合は、ここのファクターも重要になってきます。

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学部におけるファクターは、あなたの卒業後の進路や、研究や授業の充実度を大きく左右します。

  • 気候
  • 都市の大きさ
  • 物価
  • 娯楽の多さ
  • 人の多様さ
  • 車の必要性
  • 日本人の多さ
  • 日本食の手に入りやすさ
  • 周りの大学の数
  • 治安
  • 分野の多様性
  • 専門大学院・附属病院の有無
  • スタートアップへのサポート
  • キャンパスデザイン
  • メンタルケアのサービス
  • Alumniとの交流
  • 学科間の共同研究の盛んさ
  • 知名度
  • 学科変更の可否
  • 授業
  • 先生の多様性
  • 学生の数・交流
  • 先生と学生との近さ
  • 共有研究設備
  • 共同研究の盛んさ
  • セミナーの多さ
  • Almuniの進路
  • Alumniとの交流
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研究室は、あなたがこれから数年間通い続ける場所です。どのファクターも自分が満足するレベルであるか、そうでない場合は妥協できるファクターかはっきり認識しましょう。

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指導教員とのマッチングは、最も大事であると言っても過言ではありません。実際に会って見ないとわからない事も多く、指導教員とのマッチングは出願後の大学への訪問 (on site interview, visiting weekend, etc)時だけれなく、入学後にも時間をかけてみていくべきものです。

  • 研究内容
  • 研究の多様性
  • 研究設備
  • ファンディング
  • 論文の投稿頻度・レベル
  • 学生同士の交流の仕方
  • ポスドクの数
  • 学生の数
  • ミーティングの頻度
  • 共同研究の盛んさ
  • Almuniの進路
  • Alumniとの交流
  • 平均卒業年数
  • 研究室の中のカルチャー
  • 財政力
  • 専門分野
  • 指導の方法
  • 学生への期待
  • 知名度
  • 忙しさ
  • 人としてのマッチング
  • 退官・移動までの年数
  • テニュアの有無
黒字については、大学や研究室について調べている段階で自然と入ってくる情報、または意識して調べる情報であることが多いです。青字赤字はネット上では調べきれない情報になります。もし留学中の先輩方と話す機会があったり、大学や研究室へ訪問する機会があれば、青字赤字のファクターについて聞くようにしましょう。 また、なぜ重要となるかわかりづらいファクターについては以下に説明を追記しています。

気候:天気は意外と人の気持ちを左右させるものです。

物価:アメリカは国内でも物価が大きく異なります。物価も考慮したうえでの給料の比較調査が参考になります。

日本食の手に入りやすさ:場所によっては全く日本食が手に入らないところもあれば、日本とまったく同じものが手に入るロサンゼルスのような場所も存在します。

周りの大学の数:ボストンのように近くに大学が密集している地域は、共同研究や装置の貸し借りが比較的風邪通しよく行われます。

治安:(大学周りは治安が良い場所が多いですが、)アメリカで治安が悪い場所は、日本の比ではなく、日中でも歩くのも危ないこともあります。

附属病院の有無:バイオエンジニアリング系学科では、附属病院の有無が研究をすぐに臨床応用まで持っていけるか、実際の医者の意見を聞けるかに関わってきます。

学科変更の可否:大学によっては、入学後すぐに簡単に学科を変えることもでき、入りやすい学科に最初に入るという受験戦略をとることもできます。

人数:同期の人数が、卒業後のコネクションの大きさにも関わってきます。

授業:アメリカの授業は質がよいと言われますが、実際は大学により大きく異なります。

セミナーの多さ:アメリカの大学院で特徴的なのが、学外の先生方を呼んでのセミナーです。自分の大学にいながら、新しいコネクションを作ったり、他の大学の最新の研究を知る良い機会になります。

研究内容:研究室のHPでは研究内容が更新されていない・未発表のものは掲載されていないことが多々あります。最新の論文を読んだり、直接教授や学生に聞くなどして、最新の研究内容を調査しましょう。

研究の多様性:研究室内での研究内容に多様性があると、研究室内の学生それぞれが違った専門性をもち、研究室内で共同研究が可能となります。

平均卒業年数:同じ学科内でも、研究室ごとで平均卒業年数は異なります。

財政力:研究を遂行するためのお金(研究資金)以外にも、研究室で学生の学費・生活費をRA (Research Assistant)として払えるかに関わります。お金が少ない研究室では奨学金の獲得やTA (Teaching Assistant)をする必要があります。

専門分野:テニュア(終身在職権)をとった先生は自分のもともとの専門分野とは異なる分野の研究に挑戦することが多々あります。指導教員の専門とは異なる研究内容を選ぶと、専門的な内容についての指導が受けられない可能性もあります。

忙しさ:どれくらいの頻度でミーティングしている(=学生に指導しているか)は確認しましょう。ビッグラボの場合は、教授と直接話す機会が年に2,3回しかないということもあります。

人としてのマッチング:数年間お世話になり、アカデミアに残る場合はそれ以降も恩師として関わっていくのが指導教員です。研究以外でも人として合うかも重要なファクターになります。

退官・移動までの年数:アメリカでは、違う大学・研究所に引き抜かれて、突然先生がいなくなるということも多々あります。受験前の学生に前もって教えてくれることは少ないですが、機会があれば聞いてみるのは大事です。

テニュアの有無:テニュアとは、教授がその大学に終身雇用として雇われていることを指します。そのテニュアの審査までの期間(=約5年間)をテニュアトラックと呼びます。テニュアトラック中の教授は、テニュアを取るために、良くも悪くも学生に研究成果を出すことを強く求める傾向にあります。

3. 自分が重要視するファクター

多くのファクターを初めて目のあたりにした人は、どこから考えればいいかわからず暗中模索の状態かもしれません。ここで、もう一度⓵や⓶に戻って、どのファクターが自分にとって重要か考えてみましょう。最後にある例も参考にしてみてください。

 A. どのファクターを重要視するかのの考え方 

まず初めに、自分が ⓵自分がやりたいこと vs ⓶自分が楽しめること のどちらをより重要視するか考えましょう。もちろん答えはどちらか一つのみが重要と決めなくても構いません。ただ、どちらをより優先したいかを考えるとファクターの優先順位を決めるのが楽になります。

これを優先する人は、そのやりたいことや大学院に行きたい理由がはっきりしていれば、どのファクターが重要になるかは自然と決まるはずです。例えば、アメリカの大学院で自分の研究を発展させ、卒業後はアメリカのアカデミアに残りたい場合は、研究関連のファクター(研究内容、研究施設、ファンディング, 共同研究の盛んさetc)や卒業後の進路のファクター(Alumniの進路、Alumniとの交流, etc)が重要となります。

これを考慮するときは。自分がどういう環境であれば大学院生活を楽しめるかを深く考えてみましょう。やる気が気候に左右されやすい人や大学院の外での生活を楽しみたい人は、地域のファクターを重要視するべきです。研究室の学生に自分が馴染むことができるかを知るために、学生同士の交流の仕方を最重要のファクターとして置く場合もあります。

 B. ファクターの調査

自分が重要視するファクターが決まると、大学院を調べる際に何に着目すればよいか明確になります。重要視するファクターの中に、青字や赤字のWebだけでは調べきれないものが多いかもしれません。その場合は、大学に実際訪問してみたり、教授やその研究室に学生に直接メールして聞くのも一つの方法です。また、このコミュニティサイトで、希望する大学に在籍する日本人在学生に聞いてみることもできます。
自分がなぜ大学院留学を目指しているか、自分が希望する大学や研究室に何を求めているかをはっきりさせて、それが出来る大学院選びをしましょう!