【イベントレポート#2】海外大学院留学後の進路

「キャリア」「就職」・・・大学院進学を考える際も、進学後も常に気がかりなテーマですよね。まさに今現在、キャリアで悩まれている方も多いのではないでしょうか。
2020年8月1日にXPLANEでは「海外大学院卒業後のキャリア」をテーマにしたオンラインでのパネルディスカッションを開催しました。海外の大学院に進学したあとは、どんなキャリアパスが可能になるのか、また長期的に見たキャリアプランなどのトピックで話が盛り上がりました!
第1回の今回は、アカデミアや民間企業で大活躍の以下のパネリストの皆さまに登壇していただきました。
パネリスト | プロフィール | |
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![]() | 中島 美紀 Miki Nakajima, Ph.D. | Assistant Professor, University of Rochester Ph.D in Planetary Science, California Institute of Technology 東京工業大学出身 |
![]() | 麸沢 美裕 Miyu Fuzawa, Ph.D. | ORAU Research Scientist, US Environmental Protection Agency Ph.D. in Environmental Engineering, University of Illinois at Urbana-Champaign 北海道大学出身 |
![]() | 中込 翔 Sho Nakagome, Ph.D. | Research Scientist, Facebook Research Lab Ph.D. in Neuroengineering, University of Houston 慶應義塾大学出身 |
![]() | 末永 遥己 Haruna Suenaga. M.S. | Programme Analyst, UN Development Programme MSc in Environmental Change and Development, The University of Oxford シドニー大学出身 |
![]() | 宮﨑 勇典 Yusuke Miyazaki, Ph.D. | Principal, ANRI Ph.D. in Biological Science, Stanford University 東京大学出身 |
![]() | 上原 大樹 Daiju Uehara, Ph.D. (進行役) | Honda Aircraft Company Ph.D. in Aerospace Engineering, The University of Texas at Austin, 2019 XPLANE 東京大学出身 |
イベントの本編はこちらの動画からご覧ください!
いつ、どのように就職活動をしましたか?

中込さん:PhD課程が終わる2年くらい前から就職活動を意識し始めました。当時はアカデミアにいることに嫌気がさしていたと、銀行口座の残高がマイナスになり始めて「民間企業のインターンはたくさんお金が貰えそう」というのを聞いていたので、軽い気持ちでインターンを始めました。やってみたら思いのほか楽しかったです。
僕の分野は機械工学やハードウェアなどの専門家たちと連携していく特徴があります。当時はアカデミアだと先行きが見えなかったということもあり、民間企業のプロたちと仕事ができる企業の研究所での就職を志望しました。最終的に行き着いたのがFacebookの研究所でした。

麸沢さん:わたしは博士課程で研究している間、政府機関で働きたいという気持ちが強かったんです。大学に残ろうと思ったことがありませんでした。私も学位取得の1年半前ほどから就職活動を始めました。政府機関は募集もあまり多くはないので、企業も視野に入れながらキャリアフェアに参加したり、先輩の話を聞いたりしていました。そこで100ポジション応募して1つ内定という先輩の話を聞いたりしていたので、かなり前から就職活動の準備はしていましたね。

上原さん:厳しい!

中島さん:学位取得の半年ほど前にポスドクの仕事が決まっていたので、教授職の就職活動をそのころに始めました。私は他の世界をまったく知らなかったので、アカデミアに残りたいと思っていました。就職活動は2年くらいしていました。アプリケーションは20くらい出し、面接に呼ばれたのは4つほど。そして最終的にオファーを受けたのが今の大学という感じでした。就職活動のときって心の波があって大変ですよね。

上原さん:アカデミアでも20くらいのポジションに応募するのはよくあることなのですか?

中島さん:仕事の空きがあれば応募するというのは普通のことですね。自分の研究の方向性と学科が求めているものが合うかどうかな面が強いので、受かるかどうかは運です。ひとつのポジションに100〜数百の応募があるので、博打勝負なところがありますよね。

宮崎さん:僕は博士の卒業が見えてきた1年ほど前に次のポスドク先を探し始めていました。生物学の博士で民間の製薬会社に入りたいとなったときに、グリーンカードがないとアプリケーションの時点で落とされてしまうんですよね。そのため、まずはポスドクで就職をし、ポスドク中にグリーンカードの取得をしようと思いました。

末永さん:私が国連に入りたいと思ったのは、大学院在学中の頃でした。国連の多くのポストは職務経験がないと獲得ができないので、まずファーストキャリアはどこから始めようかと考え始めました。幼少期から人生の大半を海外で過ごしてきて、日本人だと日本のことをよく聞かれるということを経験してきました。そのためまず自国の知識を深めることが大事と思い、日本で環境という専門性の中での知識を構築するために、日本で就職することに決めました。大学院卒業後、数ヶ月間日本で就職活動をし、最終面接を終わらせた状態でニューヨークでのインターンを開始しました。
就職活動時に悩んだことはありましたか?

上原さん:一度、民間企業に行くと、アカデミアに戻るのは大変という話がよくあります。中島さんはアカデミアでキャリアを積まれていますが、周りで民間企業にいくなどという話は聞くことありますか?

中島さん:私は考えたことがありませんでしたが、他にはやはりちらほらいました。シカゴ大学の有名な教授も数年アカデミアの外で働いた経験があるそうです。そのため、民間からアカデミアという方向性も可能なキャリアパスであると思います。ただ、あまり民間企業に在籍する期間が長くなると、戻ってくるのは厳しいと聞いたこともあります。

麸沢さん:私は就職活動時にどこで働くのかといったことはすごくよく考えました。夫の転職も伴うことなので、お互いが住みたいところで、お互いの仕事があるところというポイントに軸を置きました。また自分の英語力にも悩みました。履歴書や自分の研究内容を募集要項にどれだけ近づけるかということは、自分の中で大事なポイントでしたね。募集要項を読み込みながら、自分の研究内容とリンクさせる作業は難しかったですね。

末永さん:大学院卒業後すぐには国際機関に入れないので、どのようなルートでキャリアを形成していくかということで悩みました。若い頃には途上国の現場にたくさん足を運べることが大事だと思ったので、そのような機会があるコンサルに入るべきかなとか。ただ実際にコンサルに入ってみるととても専門的なので、日本の支援や政策がより多く学べるところはJICAかなとか。国際機関に入っても次のポストは自分の力でつかんでいかないといけないので、キャリアをどういうルートで繋いでいくかという悩みは生涯続くものなのかなと思います。
もし今、就職活動をするとしたら何を考えますか?

上原さん:もし今、自分が大学院生だったら、「こんなことを気をつければよかった!」「どういうことをすればよかった」と思うことはありますか?

麸沢さん:私は他の人を観察しながら、「自分はこの立場に立ったら仕事を楽しめるのか?」ということをよく考えましたね。

宮崎さん:就職活動中はモヤモヤ考えることが多いと思います。そんな中で一歩前に踏み出してみると、世界が広がって見えるものですよね。なんでもトライすることが大事です。

上原さん:試せることってたくさんありますよね。キャリアフェアに行きまくるとか、気になるラボに履歴書を送ってみるとか。

宮崎さん:学会に行ってみたら、行きたいポスドク先かどうかもわかると思うので。

中込さん:自分を他の候補者たちと差別化するっていうのが、アメリカでは本当に大事ですよね。自分を売り出したり、コネクションを作ったり。ひとつのポジションにたくさんの候補者がいる中で、自分が光り輝く候補者になれるかどうかが重要です。自分が得意なところで攻めることが差別化しやすいです。

麸沢さん:中込さんは就職活動のときはモヒカンにしていたんですか?

中込さん:就職活動のときは剃り込みだけです。笑
今後のキャリアプランを教えてください!


麸沢さん:私は今のラボがすごくいいところだと思います。ここでキャリアを構築していきたいです。いずれは他の機関に移るのも考えていますが、まずは今のラボでサイエンティストとして業績を作っていきたいです。

末永さん:今はスイスのジュネーブにいるので、地域や国事務所など、将来はもう少し現地に近いところにも行きたいと思います。また国連でなくとも、JICAの専門家とか、他にも色々なオプションを検討しながら考えていきたいなと思います。

宮崎さん:あまり先まで考えすぎないようにしています。技術の事業化を日本でも起こして行けたらと思います。

中込さん:僕のキャリアプランはクビにならないことです。生き残りさえすれば、いいところまで行けるかなと思っています。