もう後がない二度目の受験、徹底戦略で掴んだ米国博士課程への切符【海外大学院受験記2024-#3】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2024年度の第3回である今回は、この秋からCaltechの博士課程(地球微生物学)に進学予定のめんだこさんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

2024年9月からカリフォルニア工科大学の博士課程(Geological and Planetary Sciences)に進学するめんだこです。私が海外大学院受験を本気で決心したのは修士2年の夏ごろで、この時点での残り準備期間は約5ヶ月でした。マルチタスクが得意でない私は受験準備を修論執筆や論文投稿と同時並行できる気がせず、結局1年目は1校に絞って受験しました。ここで1年目と書いた通り、結果から先に申し上げると私はギャップイヤーを経て再受験でリベンジを果たすことになるのですが、これについては以降の項目で見ていけたらと思います。

なお、私は修士課程までは深海熱水活動域に生息する硫黄利用細菌の生理生態に関する研究に取り組んでいました。もし興味の近い方がいらっしゃれば、ホームページを参照していただけたらと思います。

(カリフォルニア工科大学のキャンパス。キャンパスビジットの際に撮影したものですが、カリフォルニアのイメージ通り快晴でした)

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

・受験校の選択肢が多かった

私はもともと微生物生態学にのみ興味を持っていたのですが、研究を進めるうちにその生息環境など地球化学的・地質学的側面をもっと深く理解する必要があると感じ、微生物+地球化学=ジオバイオロジーを学べるプログラムを探していました。国内ではそんなに選択肢が多くなかったのですが、結果的にアメリカでは30校近くコンタクト先を見つけることができたので、その選択肢の多さもアメリカを選んだ決め手の1つと言えると思います。

・オリジナリティを培いたかった

私は修士の間は大学と研究所の二拠点で研究をしていて、あわよくばそのまま研究所に就職したいと企んでいました。しかし研究者の方々を間近で見るにつれ、ここで生きていくためには自分独自の研究フィールドを開拓できるようなオリジナリティを養う必要があると感じ、そのために敢えて一旦外に出てもっと幅広い考え方やアイデア、研究にふれたいと考えるようになりました。そんなことしなくても優秀な人はたくさんいると思いますが、自分は頭が固いタイプなので、外に出るほうが手っ取り早いなと考えたのです。

他にも、

  • 人間的に深まりたかった
  • そもそもせっかく海外に行くなら長く行きたかった
  • ポスドクから行く場合よりお客さん扱いされない
  • 修了卒業後の進路が幅広い
  • 経済的に自立できる
  • 英語力を実用レベルまで伸ばしたかった

などが挙げられますが、ほとんど後付け設定な気もします。

3. 受験結果

最終的な受験結果は、1年目は1校専願で不合格、2年目は以下の計10校に出願し最終的に6校合格となりました。この出願数はおそらく平均的で、周囲の現地学生は2~8校程度に出願している人がほとんどでした。留学生の場合は10~15校出願することも少なくないようです。

受験を通じて特に強く感じたのは、「アメリカの博士課程受験は(日本よりも)指導教官とのマッチングやタイミングによる影響が大きい」ということでした。だからこそ、出願前に事前コンタクトを行って、研究内容や指導方針について確認しておくことはほぼ必須と言えると思います。私は上記の大学を含めて10回以上はオンラインミーティングを行いましたが、先生方が学生のリクルートに本気かどうかは一度話すだけでも分かるものです。また、後ほども触れますが、プログラムもしくは指導教官の懐事情というのも当然重要になってきます。アメリカの博士課程は多くの場合”Stipend”という形で学生に給与が支払われるので、指導教官のファンドの有無が学生の採用状況に直結してきます。なお私の1年目の受験時に障壁となったのもやはり経済面でした。

4. 進学先選びに関して

【研究室探し、コンタクト】

海外大学院受験で最も苦労するポイントのひとつが研究室探しだと思います。私は日本の研究者の方々にアメリカの研究室情報を教えてもらったり、興味のある論文の著者を自分で調べたりして、最終的に約30名の先生にメールを送りました

問い合わせをする上で特に気をつけた点は、

・「研究室に興味を持った理由(論文)、論文の感想や疑問点、今後研究したいこと、あればアイデア」を含める
・自己紹介は簡潔に(CVを添付するので大丈夫)

の2点です。

もし好意的な返信をいただけたら、ダメ元でいいのでオンラインミーティングの機会をいただけないか聞くことをおすすめします。返事をいただけている時点でチャンスなので、この機を逃すともったいないです。一度目は返事が来たのに、期間を空けて二回目以降連絡したら返信が来なくなったことも度々ありました。

【ミーティング】

オンラインミーティングではお互いの自己紹介・研究紹介のあと質問タイムに入るパターンが多いのですが、中には「Good Morning!さぁなんでも質問してくれ!」から始まるパターンもあって面食らいました。いずれの場合にせよ、ミーティング時間は30分~1時間程度と限られているので、ミーティングまでに以下の項目についてしっかり準備しておくと安心です。

・自己紹介と研究紹介
・自分の研究プレゼン
・プレゼンに対する予想質問への回答
・質問リスト(学生を取る予定か、プロジェクト、資金、修了卒業生の進路、プログラムの特色など)

研究プレゼンは相手から要求されたことはありませんが、少しでも覚えてもらうためにほぼ毎回自主的にやっていました。個人的には、研究プレゼンはアピールに非常に効果的で、このおかげで良い印象をもっていただけた先生も多いと感じています。また、プレゼンはちゃんと事前に準備できるので、ミーティング中の英語が多少ダメでも、「あ、この学生は研究のことならちゃんと喋れるんやなと挽回のチャンスが得られる点も留学生にとっては強みかなと思います。

また経済支援については必ず確認するべきだと思います。特に、授業料の支払い有無や、卒業までの期間をカバーする分の資金があるか、資金の出どころ(プログラムからなのか、指導教官の研究費からなのか、ティーチングアシスタント・リサーチアシスタントとして働くことで払われるのか…)についての確認は必須です。

5. 奨学金について

私は1年目は3つ、2年目は2つの奨学金に応募しました。応募可能な奨学金はもっとたくさんあったのですが、月額奨学金・支給年数・授業料サポートの有無などを総合的に考慮して選択しました。奨学金探しはXPLANE 海外大学院向け奨学金データベースが参考になります。

ここで奨学金応募に関して2点「やってしまった」と思ったことがあったのでご紹介します。

・既卒は格段に応募できる奨学金が減ること

当然ですが、多くの奨学財団は「応募時点で大学・大学院に在籍している者」を募集対象としているので、既卒の人は要件を満たさないこととなります。よって、ギャップイヤーなどを考えている方は、応募できる奨学金が少なくなるということには注意しておいた方がよいかもしれません。

・学内締切が早めに設定されている場合があること

私は奨学財団の公式サイトだけをチェックしていたため、大学に学内締切があることに気づかなかった…というパターンがありました。所属大学の留学ページも定期的にチェックしておくのが吉です。

6. 出願書類作成に関して(SOP, Background Statementなど)

【Statement of Purpose (SOP)】

SOPはいわゆる志望理由書のことで、詳細はXPLANEさんの記事を参照していただけると良いと思います。多くの場合は大学側から「こういうことを書いてね~」と指示されるので、その内容にそって書くといいでしょう。とは言っても最初はどのように書いたらいいのかイメージが沸かないと思うので、まずはSOPのサンプルをいくつか読んで、お気に入りを見つけることをおすすめします。「自分だったらこの部分にこういうことを書くな~」とイメージしながら読むといいかもしれません。

なんとなくイメージが湧いたら、(1) CVを元にアピールしたい内容を厳選して (2)アウトラインを作成し (3)プログラムにマッチするように内容を調整する といった手順で作成しました。各校ごとに内容を微調整するのはかなり大変だと思いますが、マッチングこそがキモなので、全大学に当てはまるような当たり障りない内容は極力書かないようにすると良いと思います。書き上げたらできるだけたくさんの人に添削してもらってください。私はXPLANEさんのSOP(Statement of Purpose)執筆支援プログラムにもお世話になりました。

Background Statement

SOPが研究面に基づいた書類であるのに対し、 Background Statementはより幅広い、時に個人的なモチベーションを記述するためのStatementになります。応募者の境遇や人生経験など、SOPに書ききれなかった自分のアピールポイントを売り込むことができます。

私はこれまでのフィールドワーク経験(研究航海)、ティーチングアシスタント、研究面での後輩指導などについて書きましたが、いずれの場合も失敗や困難を乗り越えた経験から、どういう価値観・教訓を得てそれをどう活かし、今後どのように大学コミュニティに貢献できるかを伝えることを意識しました。また、学びに対する価値観にも触れました。

【英語のスコア】

私は出願校の基準点に合わせてTOEFL100点以上を目標に勉強しました。結果はギリギリ最低ライン通過の103点で合否に響くのではないかと心配しましたが、受験してみた個人的な印象としては、英語のスコアはあくまで要件であり、むしろ面接できちんと話せるかのほうが重要になってくるのではないかと感じました。ただこれはあくまで私の感想ですのであしからず。

【成績表 (Transcript)】

私のもう一つの懸念は学部のGPAが3.5しかないことでした(トップスクールはほぼみんな4.0近い)。実際、面接の際にも成績について指摘されたのですが、私の場合は

  • 苦手を克服したい分野を一般教養科目として多く履修したことが成績に影響していること
  • 専門科目は好成績を保っていること
  • 成績を修士で挽回したこと

の3点を言い訳にしました。受験において、欠点は何かを乗り越えた力として読み替えることができるので、変えられない成績を嘆くよりは克服した経験として活かすほうがいいと判断したためです。また専門科目だけの成績を開示する必要がある大学もあるので、計算しておくとよいかもしれません。

7. 面接対策

私は計5校から面接に呼んでいただいたのですが、4校はZoomで、1校はキャンパスビジットと兼ねた現地面接でした。面接日のスケジュールはプログラムの概要紹介→教員4人と面接(各30分程度)→現学生との交流(Q&A)という流れが多く、9-17時までかかることもザラでした。厳しい面接はほとんどなく、多くの先生方は学生と話すのを楽しんでいる印象だったので、必要以上に怖がらなくていいと思います。

私は英語に自信がなかったので、とにかく徹底対策で臨みました。具体的には、50ページに及ぶ予想質問&回答集をつくり、どんな質問が来ても臨機応変に答えられるようにしました。面接の質問については私の個人ページにもまとめているので、参考にしていただければと思います。

8. 最後に:ギャップイヤーはそこまで気にされない?

ギャップイヤーは日本ではまだかなり珍しい概念で、積極的に選択する人は少ないと思います。しかし、アメリカの博士課程受験界隈に限った話ではギャップイヤー取得は全く珍しい事例ではなく、受験にはほとんど響かない(経験によってはむしろプラスになる?)というイメージを持たれている印象でした。

特にトップスクールに上位合格するためにはより高度な研究実績を求められるので、経験を積むために学部卒業後にラボテクニシャンやラボマネージャーとして1~3年働き、博士課程を再受験する人も多い印象です。

面接においてもギャップイヤーについて深堀りされることは一切なく、ギャップイヤー中は受験準備に専念していた旨を伝えるとどの先生方も納得してくださいました。中には、出願システム上でギャップイヤーの有無とその理由を書かなければいけない大学もありますが、とにかく正直に申告さえすればネガティブには働かないと感じました(もちろんデメリットもたくさんありますが、想像に難くないと思うのでここでは省略します)。

9. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

ここまで長々と書きましたが、日本であろうと海外であろうときちんと対策すれば実力相応の大学院には食い込めると思います。ただ、実力さえあれば必ず受かるというわけではなく、先生の資金事情や研究室の席の空き具合、募集しているプロジェクトなど、よりマッチングの要素が強く影響します。なので縁があったら受かるし、落ちても実力不足というわけではないという風に考えれば、少し気楽かなと思います。応援しています!

(キャンパスからの夕焼け。こちらもカリフォルニアっぽい一枚です)

関連外部サイト:めんだこさんのブログ

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