【イベントレポート付き】「留学 × 女性のキャリア」をXCEEDと共同開催しました

【イベントレポート#3】
女性 × 留学後のキャリア

2020年9月12日に、XPLANEの姉妹団体であるXCEEDにより、留学後のキャリアに関するオンラインでのパネルディスカッションが開催されました。先月開催された第1回では「海外大学院卒業後のキャリア」全般がテーマでしたが、第2回となる今回は「女性のキャリア」について、各地で大活躍されているパネリストの皆様に大いに語って頂きました。なお今回のイベントはXPLANE/XCEEDのサポーターである孫正義財団に加えて、米国大使館にも後援頂きました。

パネリストプロフィール
Kanako SakaiハーバードMBA留学中
外資系戦略コンサル
3歳の息子+夫とボストン在住
女性向けメンターマッチングサービス立ち上げ
Aki Higuchi北京大学国際関係学部卒業
2015年に起業、教育スタートアップCEO
幼少期から大学までを日本・アメリカ・中国・韓国で過ごす
Reika Katsumataテキサス大学オースティン校 Ph.D.卒業
University of Massachusetts Amherst 助教授として米国マサチューセッツ勤務(ソフトマター/ナノテクノロジー)
Aki Jiang
(進行役)
スタンフォードMBA卒業
ベンチャーキャピタルにて米国カリフォルニア勤務
当イベント運営団体XCEED所属

イベントの本編はこちらの動画からご覧ください!

Q. 女性ならではの壁を感じた瞬間は?

Aki.H: 私の家族は祖母も母も働いていたため、幼少期に「女性ならではの壁」を強く意識したことは特にありませんでしたが、ここ数年起業家として自分の会社をスケールさせていく中で「皆が言っているのはこれか!」と感じた場面が何度かありました。例えば会社の資金調達について投資家と話をしているときに、事業とは直接関係のないところで「女性である」「結婚適齢期である」ということをリスクとして挙げられてしまうといったことです。これは女性起業家にはよくある話ですが。

Aki.J: アメリカだと、そんなことを投資家が言えば訴訟されてしまいそうですね。

Kanako: 自分の場合、大きく分けて2回ありました。1回目は入社直後、コンサルとして働いていたものの「クライアントからは若い女の子としか見られていないよ」と上司から指摘されたときです。プロとして仕事に取り組んでいたつもりでしたが、話し方や振る舞い方で「若い女の子」というレッテルを張られてしまっていたと知って傷つきました。2回目は子供を生んだ後。育休を2年間とったことで「自分はキャリアを止めてしまった」と自信をなくしてしまったことがありました。コンサルでの業務経験やHBSへの留学など、レジュメ上の経歴はそこまで悪くない筈だと自分に言い聞かせようとしても、自分に自信が持てず悩みました。

Aki.J:「若い女の子」というレッテルを貼られてしまうというのは良く分かります。会食時にクライアントの隣に座らされたり、といったことはありますよね。

Reika:アカデミアというのは総じて民間より古い体質なので、「女子学生は偉い先生の隣に座ること」みたいなことは今でもあるかもしれません。自分は日本の大学時代に周りが90%男性でしたので「女性である自分が目立つのは仕方がない」という環境でした。その後、アメリカに留学してまったく違う環境に入ることで「そういえば日本にいた頃は色々変だったな」と気付かされたという順序でしたね。留学先では基本的に男女平等でしたが、いま教員になって「気が付くと書記係になってしまう」「郵便配達員に秘書だと勘違いされる」など、気を抜くとなめられてしまうような場面はあります。書記係の件については「私だけがやるのではなく、きちんと順番に書記係を回してほしい」とオフラインで同僚に伝達しました。

Q. 日本と海外の女性に対する意識の違いは?

Reika: 日本の場合、女性だけではなく「マイノリティ全般」への接し方になれていないように感じます。悪気がないのでタチが悪いというか。

Kanako:アメリカの場合、「ママが働くのはごく普通のことだし、良いことである」という価値観と育児をする人へのリスペクトがあるので、母親としては非常に過ごしやすい環境です。あと大学院の授業で感じるのは「米国企業の方が『ダイバーシティの重要性』をより戦略的に捉えている」ということです。日本の場合ダイバーシティというのはまだCSR的な側面が強く、”Nice to have” という形に留まっている。アメリカでは従業員の中でも「ダイバーシティを大事にしよう」というカルチャーが浸透しているケースが多いように思います。

Aki.J:確かに「ママが働くのは普通」という点についても、日本と海外ではずいぶん意識が違うように感じますね。これは余談ですが、今回イベントを開催するにあたってSNS上での宣伝を行いましたが、男性の友人の一人から「うわ、強そう(笑)」というコメントをもらいました。これは日本特有の反応で、学歴面・キャリア面で活躍している女性からの発信を「強そう」と反応するのは、根底に「女性は弱いものである」という無意識の観念があるからだと思うんですよね。

Kanako:特に日本は女性に対して「完璧」を求める傾向が強いですね。「理想の母親像」が無意識のうちに刷り込まれているため、「自分はこうあらねばならない」と感じて自分自身を縛ってしまい、結果として子供を生むことに対してネガティブに感じてしまう…という負のスパイラルがあるように思います。

Q. 壁を乗り越えるのはどうすればいいか?

Aki.H:突き詰めると「壁にぶち当たって将来が不安になってしまう」ところに問題の根源があるのかなと感じています。私はいつも必ずPCのデスクトップ上に”Remember how far you’ve come not jut how far you have to go”という言葉を貼っています。「これまで自分が歩んできた道のりや達成してきたことに目を向ける」ということを多くの女性は忘れがちですが、自分の足りない点・至らない点ばかり挙げていくと精神的に辛いと思います。私自身、例えば会社が潰れそうになったとき等、辛い場面というのはありましたが、それでも日々前向きに取り組んできました。

あとは周囲の支えてくれる人への感謝。世の中には「変なおじさん」もいますが、その100倍以上「素敵な人たち」がいて、そういう人にサポートしてもらってここまで来れたのだと感じています。

Aki.J:以前読んだ学術論文で「女性は100%自信がないと行動できないが、男性は60%の自信でも行動する」というものがありました。女性は完璧に感じないと中々アクションが取れない、だから (Higuchi) Akiさんが言う通り、自分に自信をつけてあげるというのは大事だなと思います。

Reika:メンターからのサポートは大事だと思います。これまで他大学や社会人も含めて、自分のメンターになってくれた人が大勢いますが、個人的に重要視しているのは「自分に『呪い』をかけてくる人とは話さない」ということです。「あんた、3年後にはこんなことがあるから大変やで」とかネガティブなことばかり言ってくる人とは極力関わらない。あと自分の苦労話を言うのが好きな人というのも多いですが、(「だからあなたも同じようにしなさい」といった呪いをかけてくる人ではなく)「自分のときはこんなこともあったが、今は違うと思うよ」といった形で前向きに話してくれる人をメンターに選んでいて、それがポジティブに働いているように感じています

また先ほど話した書記係については、いわゆるリーダーシップのステレオタイプである「白人男性」の立ち居振る舞いに寄せていく…という考え方もあり、悩みましたね。しかし、コアの専門性(私ならサイエンス)がしっかりしていれば自分の人格を変える必要はない、という結論に至りました。全員が同じような振る舞いをしている団体は、画一的で面白く無くなってしまうと個人的に思うからです。

Aki.J:呪いをかけてくる人、確かにいますね!

Kanako:自分の場合はReikaさんの話と逆パターンになってしまうのですが、新卒当時に「若い女の子」と見られないよう工夫しました。背が低かったので高いヒールを履いたり、立ってプレゼンして目線を上げたり、ゆっくり話すようにしたりなど。それが良いことかどうかは賛否両論で、例えば「世の中の悪い風潮を助長してしまう」といった考え方もありますが、当時の自分はそれが日本社会で生き延びるために必要だと感じていました。その後、社会人3-4年目くらいになると、段々と自分なりのリーダーシップスタイルを確立できるようになりました。

2点目の育児については、優先順位を明確に持つことが大事だと思っています。Higuchiさんが言っていた通り、成功体験を積み重ねて自分を褒めてあげることも重要です。

あとはメンターに加えて「スポンサー」を見つけること。スポンサーというのは金銭の意味ではなく「機会」を与えてくれる人のことを意味します。自分の場合は、勤めていたコンサルの男性パートナー(役員)が機会面でのスポンサーでした。「何かやりたいことがあれば言ってくれ」と背中を押してくれて、それから自分に自信が持てるようになりました。

Reika:メンターとの接し方について、メンターに自分のAchievementを話すことは大事だと思います。そうするとメンターが宣伝してくれて、新たな機会を与えてくれたりします。

Aki.H:付け加えると、メンターというのは大体忙しい方々なので、その人たちのアテンションを引き続けるという意味でも、良い面に加えて弱み・悩みも包み隠さずにさらけ出すのが良いと思います。そうすることでメンターから長期的にサポートしてもらえますので。

Q. キャリアとプライベートの両立をどう考える?

Kanako:結婚や子供を生むタイミングについては周りと比べない方がいいと思います。子供は結局のところ運とタイミングで、どれだけ事前に計画してもうまくいくとは限らないものです。自分も子供が欲しいと思ってから妊娠するまでに1年くらいかかりました

キャリアとプライベートの両立については自分も思案中ですが、先ほども言った通り、優先順位は大事だと思っています。優先順位に関する「大きい石と小さい石」という寓話があるのですが、とあるビンに大きさがバラバラの石を入れる時に、小さい石から先に入れると、後で大きい石がビンに入らなくなってしまう。一方で、大きい石を先に入れると小さい石は勝手に隙間へと入っていってくれるので、結果的に全ての石が入るという話です。

あとは周りの理解を得るということ。育児は一人では絶対できないので、パートナーや他の家族、地域の児童施設など、頼れるものは全て頼るのがいいと思います。あとは「完璧じゃなくてもいい」というマインドセットを持つこと。「今日は冷凍のピザでいいや」というくらい、適当でもいいので手を抜くことが大事です。

Aki.J:ツイッターで見た「スーパーで惣菜を買おうとしたら、知らないおじさんから『母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ』と説教されたという話を思い出しました。ポテトサラダ作るの、大変ですよね!(笑)

Aki.H:母親業って本当に大変だと思います。私は中国の共働き家庭で育ちましたが、母親がテレビ局勤務で多忙を極めていたため、家に帰ってきたら人参一本だけ、みたいことは普通にありました。お弁当もキャラ弁どころか「めんとつゆ」だけとか。(笑)でも当時別に傷ついた記憶もなかったです。実際、「自由な親を子供側が受け入れる」というのはあるように思いますので、日本の「女性・母親はこうあるべき」といった社会通念については全く気にしなくていいです。あとはパートナー選びが大事だと思います。パートナーが「それでいいよ」と言ってくれることが一番の応援になります。

Aki.J:確かに。「女性がご飯を作ること」を当たり前だと思わないパートナーがいいですね!そして優先順位は人それぞれで、結婚や出産は「当たり前のようにしなければいけないこと」ではないので、社会のプレッシャーに負けないでほしいですね。

Reika:優先順位は本当にひとそれぞれで、いろんな生き方があるべきだと思います。あとは「自分のエネルギーレベルを見極めること」は大事だと思っています。自分の場合、日経やNYTではなくYahoo Japanを見始めたときが疲れているときで、そうなったら休むようにしています。(笑)

Aki.H:そういうのありますよね。自分の場合は部屋が荒れているときが心も荒れているときです。

Q. 結婚や出産などのライフイベントの前後でキャリアへの価値観はどう変わったか?

Kanako:自分の場合は出産後に優先順位が大きく変わりました。以前は「キャリアを優先する」という意識が強かったのですが、子供が産まれた後は「子供との時間を削ってまで仕事に時間を費やしたいわけではない」と思い始めました。一方で、子供が出来たことで「将来の社会に良いインパクトを与えたい」と考えるようになり、キャリアはあくまでより良い社会を作っていくための手段として捉えるようになりました。

Q. 日本の大学院生と海外の大学院生で就活のタイミングが大きく異なると思うが、どう違うのか教えてもらえないか?

Reika:アメリカの理工系だと多くの分野でポスドク(医者でいうところの研修医)が3-5年間あります。通年採用で、ポストが空きそうになった時点でコンタクト先のことを知っている必要があるので、学会できちんとネットワーキングしておくことは重要です。

Kanako:ビジネススクールに関して言うと、1年目の留学後すぐにサマーインターンの就活が始まります。スケジュールは業界によって異なりますが、コンサル・IBD・テックは早いです。6-8月の夏休み期間にかけてサマーインターンを行い、そこでフルタイムのオファーが出れば就活終了、オファーが出なかった場合や引続き就職先を探したい場合は2年目にも就活します。アカデミアと同じく、とにかくネットワーキングが大事です。具体的には卒業生などに「15分で良いので電話で話をさせてほしい」と伝えて相手に自分の名前をインプットさせることで、インタビューに呼ばれる確率を上げるといったことが行われています。

Q. 留学やキャリアを通じて、女性だからこそ良かったことはあったか?

Reika:今の自分のポジションは、女性に絞って探していたと聞きました。

Kanako:MBAについて言えば、女性のアプリカントは少ないので競争率は相対的に低いです。どこの大学もジェンダーの比率を均等に近付けたいと思っているので、女性であることによって入学できる確率が上がる可能性はあります。また、キャリア上で言えばメンターを探すのは割とやりやすいように感じます。あまり一般化するのは良くないですが、女性の方が「人の懐に入っていく」ことが得意な人が多いという印象はあります。「自分の弱さをさらけ出しながら関係性を築いていける」というのは女性の強みかもしれません。

Q. どのようにメンターを見つけたか?

Kanako: メンター見つけるのって大変ですよね…私の周りにもそういう友人が多く、その声を聞いて立ち上げたサービスがRolemyです。Rolemyでは自分のプライベートやキャリアに関する悩みについて相談にのってくれる、経験豊かな女性メンターを探すことができます。

Reika: 学生のときは学会で憧れの先生や、興味深い発表をしている方に話しかけていました。当時は研究の議論に夢中でメンター探しの意図はありませんでしたが、結果的にそうなったケースがあります。教員になってからはそれに加え、大学のメンターに対する金銭的・制度的補助を有効活用するようにしています。

Aki.J: 私も学校が卒業生に提供してくれるキャリアコーチサービスを利用したり、自分でキャリアコーチを探したりしていますね。元ビジネススクールのクラスメイトとコーチングし合うということもあります。

Q. 最後に一言

Reika:今日は自分自身も勉強になり、また人生を振り返るいい機会になりました。自分は留学して人生が生きやすくなったので、もし皆さんの中で躊躇している人がいるなら、是非ためらわずに一歩を踏み出してもらえればと思います。

Aki.H:留学にせよキャリアにせよ、今後の人生では大きな変化があると思いますが、正しい人に出会って相談することができれば、どんな解もきっと正解になります。あとは「自分の解を正解にする」という自信を持つことです。私の周りで話を聞いていても「留学をして人生が変わらなかった」という人には会ったことがありませんので、迷っているなら行ってみるのがいいのではないでしょうか。

Kanako:人生、無駄なことは一つもなく、たとえ失敗であっても何かしらの意味があります。留学すれば必ず持って帰るものはありますので、まずは軽い気持ちで色々相談してみるのが大事だと思います。また、子供ができてからの人生の方が自分は楽しいし、人生が豊かになっていると感じています。キャリアとの両立は大変ですが、怖がらずに選択してほしいですね。

XPLANE/XCEEDでは今後もキャリアにまつわる様々なパネルディスカッションを開催予定です。今後のイベント情報はXPLANEのSlackやTwitterXCEEDのFBページなどでチェックしてください!

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