米国大学のPhDにはこんな入り方もあります!【海外大学院受験記2023-#3】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2023年度の第3回である今回は、この秋からジョンズホプキンス大学の博士課程(機械工学)に進学予定の土屋さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

皆さん初めまして。2023年の秋から、アメリカのメリーランド州にあるJohns Hopkins University (JHU) School of Engineering, Mechanical EngineeringのPhD programに進学する土屋諒真と申します。Biomedical Engineering (BME)、特に細胞生物学を専攻しており、修士課程まで日本で修了しました。 進学先のJHUでは、3Dバイオプリンティング技術を用いて様々な疾患の原因解明や、そのメカニズムを応用したドラッグデリバリーシステムの構築を目指して研究する予定です。

ジョンスホプキンス大学の正門にて(筆者提供)

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

大学院留学を目指し始めたのは学部3年が始まるころで、半年間のアメリカでの交換留学を終えたときだったと記憶しています。

BMEを専攻していたので、大学進学の時から漠然と医学の発展を後押ししていきたいと考えていました。また、目指すのであれば第一線で活躍できるグローバル人材になりたいと思っていたので、その第一歩として大学進学のタイミングで交換留学に必ず行こうと決意していました。結果的に学部2年の後期をアメリカの大学で過ごし、主にBiologyを学んでいたのですが、そこで出会った友人や一緒に授業を受けていたクラスメイトの学ぶ姿勢に感銘を受けたのと同時に、将来このような人たちと競い合っていかなければならないのかと強く感じました。少なくとも対等に、願わくは競争に勝っていくためには自分自身がもっと努力する必要があり、そのためには高いレベルに身を置くのが一番の近道なのではないかと考えるようになったのが大学院留学を目指し始めたきっかけです。

加えて欧米や中国といった国が研究成果において台頭してきているという話や、研究費や研究環境の点で上記の国と比較すると日本の若手研究者は肩身が狭い思いをしているという話を聞いており、研究者としての道を歩むのであれば日本よりも海外の方が比較的待遇が良いというところも大学院留学の選択をするきっかけになりました。

3. 出願前の所属での専攻分野・研究内容に関して

私はPhD進学前まで合計6年半を東洋大学にて過ごしました。飛び級して修士課程へ進学したため学部は3年で卒業し、大学院理工学研究科生体医工学専攻にて修士2年と修士修了後にも研究生として1年半を過ごしました。細胞を用いた様々な研究を行っている研究室に所属しており、私はiPS細胞の分化誘導の研究、ある幹細胞から分泌されるタンパク質の脳神経疾患に対するスクリーニングを行い、そのメカニズムを明らかにするという研究を行っていました。

また、修士課程修了後は順天堂大学医学部にも医学部研究生として在籍させていただき、パーキンソン病の原因と言われているα-synucleinとある臓器の関係性に着目した疾患の原因解明の研究をしていました。さらに、進学先であるJHUとの共同研究として行っていた胃がんの研究にも参加させていただきました。

4. 出願の流れに関して

学部3年生のころから海外大学院進学を目指し始めたということもあり、実際に進学が決まるまでに何度か挑戦するタイミングがありました。

1度目のタイミングは進学を目指し始めてすぐ、修士課程に上がるタイミングで海外の大学院に進学するときでした。しかし、自分の知識、英語力、情報力、準備不足など多くの懸念があり、何よりそもそも合格をもらえないだろうという不安とともに、もらえたとしてもその時点では現地でうまくやっていけるビジョンが全く見えなかったため、断念しました。

2度目は修士課程を卒業するタイミングで、この時は実際に出願しました。最終的に海外で働きたいという気持ちもあり、そのためにはPhDを海外で(働きたい国で)取っている方が有利に働くだろうと考えていたので、日本で修士を修了したタイミングで進学をしたいと思っておりました。1度断念したときから継続して英語は学んでいたので、ある程度のスコアやコミュニケーションが取れるようになっていましたし、修士課程で専門的なことを学んでいたので、稚拙ながらもどうにかやっていけるのではないかと思っていました。ただし、受験を突破するという点において全くと言っていいほど対策しておらず、半ば勝機の無い状態で、「ダメ元」のような受験でした。結果は、文面から察せられる通りいずれも不合格で1度目の挑戦は失敗に終わりました。

幸いなことに、大学院研究生として、そして医学部研究生として東洋大学および順天堂大学に所属して研究できることが決まっていました。ですので、今度はこの1年を通して合格を勝ち取るための対策をしなければ…と思っていた矢先、東洋大学の私の指導教官である教授、順天堂大学での指導教官、そしてJHUでこれからお世話になる先生3名を含めた、JHUの研究グループで構成される国際共同研究に参加させてもらうことになりました。

このことが私にとって転機であり、これからお世話になる先生とはこの国際共同研究に参加したことで出会うことができました翌年の2022年末の2度目の受験では、合格を後押しする推薦状や経済的サポートを頂き、JHUに合格することができました。なお、この2度目の受験の際には2週間ほどJHUを訪れ、in-personで面接を受けました。ただし、これは少し特殊なケースのようでした。というのも、本来面接を含めた“Graduate Visiting Day”という3日間のイベントは、書類選考を通過したアメリカ国内の大学に通っている志願者向けのイベントで、国外の大学に所属する学生に向けたイベントではないからです[編注1]。出願時点でJHUに訪れたことがなかったため、私自身が少し落ち着いたタイミングで訪米し、研究室見学などをしたい旨を伝えたところ、計画していたスケジュールがちょうどそのイベントと被っていたことから、どうせ来るならイベントにも参加してみてはどうかと打診を受けたのがきっかけでした。3日間のイベントでは、書類選考を通過した20名ほどの学生と一緒にディスカッションをしたり、講義を受けたり、キャンパス・ラボツアーをしてもらったり、先輩たちと話したり、そして面接を受けたりと充実した時間を過ごすことができました。3日間の最終日に行われた面接はといえば、私自身はすでにラボの先生から事実上のDirector‘s decisionをもらっていたからだと思いますが、「面接」という感じではなく、3日間の感想や、受験や3日間を通して改めて進学したいかどうかを問う最終的な私の意思、そして入学後のビジョンなど、どちらかというと入学後を見据えた会話をしていました。

Graduate Visiting Dayでの参加した出願者との食事(筆者提供)

5. 海外大学院出願でうまくいった点・苦労した点・エピソード

出願において私の中で非常に大きなアドバンテージとなったのが、国際共同研究を通してJHUの先生方と面識を持てたこと、そしてその中の一人である所属予定ラボの先生からSponsorshipと推薦を申し出て頂けたことです。もちろん国にもよると思いますし、アメリカの中でもすべての大学および学部に言えることではないと思いますが、PhD programへの進学において少なくともJHUのSchool of Engineering, Mechanical EngineeringにはDirector‘s decision[編注2]のようなものがありました。

将来の指導教官になる方から推薦をしていただき、さらにPhD program在籍中のすべての学費 (60,450USD/year)、生活費 (2023年は38,000USD、インフレに伴って2024年以降増加することが決定済み)、医療・歯科・眼科各種保険 (およそ3,000USD/year) を指導教員の研究費から支払っていただくという、言うなればプロ野球のドラフト制度や企業のヘッドハンティングに近いような経済的サポートを申し出て頂けました。ですので、通常の「よーい、ドン!」で入試に挑むよりも、アドバンテージがある状態でプロセスを進めることができたのはとても心強かったです。そのこともあり、私はJHUのみの出願で一本狙いでしたが、無事合格を頂くことができました。

基本的に「受験」と聞くと、日本の大学受験のように複数校に出願し、受かった中から進学先を決めるというのを想像する方も多いかと思いますが、僕のような形で海外の大学院に進学するというのも戦略の一つだと思いますし、英語というディスアドバンテージを補うという意味では賢い手段なのではないでしょうか。

6. 出願書類作成に関して(SoP、推薦状、CV)

私が進学するJHU, Whiting School of Engineeringの場合、推薦状は4部の提出を求められており、私は学部時代からお世話になっている指導教官、すでにコネクションがあり推薦状と経済的サポートを申し出てくださっていたJHUのPI、東洋大学の学長と常務理事にお願いをしたところ、皆様から快諾していただくことができたため、その4名から推薦をしていただきました。

SoPは以下のようなインストラクションがあり、それに従う形で記載しました。

“Discuss your academic and career objectives. Be specific about the field in which you plan to study and your research interests. Describe your preparation for your proposed program of study, beyond what is apparent from your transcripts. This can include research projects you have undertaken or participated in, language preparation, or other academic training.”

SoPもCVもですが、アメリカのPhD programで学んでいるアメリカ人の友人複数人、日本でAssistant Language Teacherをしている英語ネイティブの先生や指導教官に読んでいただき、添削してもらいつつ何度もブラッシュアップしました。SoPとCVのいずれも、構成や言い方、つなげ方などの多くの箇所で様々なアドバイスを頂けたおかげでより良いものにすることができたので、この受験記を読んでいる方で周りに頼れる方がいたらぜひ活用していただければと思います。

7. 進学先選びについて

留学を視野に入れ始めたときから国を問わず様々な大学や学部、教授を調べていましたが、最終的な出願はJHU一校のみでした。先にも記述した通り、推薦を申し出て頂けたからこその選択だったのですが、たまたま興味のある研究をしている研究室だったということもあり、何も悩むことなくJHUへの出願を決めました。

またもう1点補足すると、こちらも繰り返しになりますが申し出て頂いたサポートで学費をすべてカバーしてもらえたことに加えて、給料として生活していくには十分なほどの生活費を頂けるのがわかっていたことも後押しとなりました。 以上の点をまとめると、合格に向けてJHUに所属するPIから推薦というアドバンテージをいただけたこと、学費や生活費のサポートを頂けること、さらに医学研究の最前線で学べるということでJHUのみの出願を決めました。

8. これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス

私の受験記は比較的レアケースで、もしかしたら多くの方には参考にならないかもしれません。

ここまでご覧いただいてわかるように、今回のJHU進学は、JHUの先生と知り合えたことが最大の勝因だったと思いますし、その先生だけでなく学長や常務理事という著名な先生から推薦状を頂けたことも有利に働いたはずです。ただし、手前味噌ですし当然ではありますが、JHUの先生に認知してもらい、自分の研究室に迎え入れたいと思ってもらえるようにアピールしたことやGPA (3.9/4.0) をはじめ、私自身も進学のために努力はしてきたつもりです。

最後にお伝えしたいのは、夢を叶えるためには当然のように自分自身の努力が必要ではあるが、それと同じくらい合格を手繰り寄せるために周りの人たちからのサポートも大切だということです。幸いなことに、この受験記やWebsiteにたどり着いた皆さんのそばには皆さんの夢を応援してくれてサポートしてくれるXPLANEの仲間たちがたくさんいます。

おそらくこの受験記を読んでいる多くの方が海外大学院へ進学し、学位取得を目指していることと思いますが、きっとうまくいきます。越えなければならない壁や大変な日々もあると思いますが、あきらめずに一生懸命行動していればきっと乗り越えられるでしょう。そのためにサポートしてくれる人が必ずいるはずですので、XPLANEの皆をはじめ、ぜひ周りの人にも頼ってください。

私自身もスタート地点に立ったばかりでまだ何物でもない研究者の卵ですが、これからの科学を支えていく同志として、ぜひ一緒に頑張りましょう。私にできることがあればなんでも喜んでご協力しますのでいつでもご連絡してください。 応援しています。

ジョンズホプキンス大学の図書館にて(筆者提供)

【編注】

[編注1] アメリカの大学院では、キャンパスビジットという大学院入試の合格者をキャンパスに招待するイベントがある(参考記事)。これは現地の教授陣、学生との交流を通して合格者へ具体的な情報を提供し、合格したいくつかの大学院の中から進学先として選んでもらうという目的がある。一方で生物学系の場合、このVisitは一次選考通過者に対して行われ、最終的な合格通知を出す前の面接として行われることもある(参考記事2)。本文中に書かれているようにアメリカ国内の学生が対象となる場合もあるが、所属国に関係なくVisiting Dayに招待されることも多い。

[編注2] 制度は大学、学部、学科によって大きく異なるが、大学院のプログラムの選考において採用する学生について所属教員に裁量が認められている場合もあり、この場合は「この学生を取りたい」とある教授が思えばその学生が合格する可能性が高くなる。一方で、所属教員で構成される委員会で合否が決定されて、それぞれの教員には裁量がないという場合も多い。

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