オンライン大学院への留学?受験対策と仕事の両立について【海外大学院受験記2023-#7】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2023年度の第7回である今回は、現在キングスカレッジロンドンの修士課程に在籍され、この秋からランカスター大学の博士課程(公衆衛生学、オンラインコース)に進学予定の三宮さんに寄稿していただきました。

目次

1. 自己紹介

看護師として勤務した後、企業・大学・行政を対象とした公衆衛生教育・研究を個人事業主という形で行っています。2022年3月にKing’s College Londonの公衆衛生大学院修士課程(オンラインコース)に進学し、翌年7月のPostgraduate Diploma[1]の取得をもって中途退学を予定しています。その後9月より、Lancaster Universityの公衆衛生学博士課程(オンラインコース)に進学する予定です。関心分野は、公衆衛生におけるジェンダー論、医療政策史、若者の健康等です。

2. 大学院留学を志した理由・きっかけ

大学院進学を考える時点で私はフリーランスだったので、フリーランスとして実績を積みながら、研究能力を高めたいと思っていました。近年日本でも仕事と研究を両立できる公衆衛生系大学院が増えている一方、私はそこに落ちてしまいました…。
そんな中、ネットの記事を発見し、オンライン留学という選択肢を考えるようになりました。オンラインの修士課程で勉強する中で、「更に研究能力を高めたい!けれど日本の仕事もし続けたい!」という気持ちが高まり、オンラインの博士課程を受験し、現在に至っています。なお、修士課程を中退する理由は、1人の人間が同時に2校に在籍できないという規則があったからです。

3. オンライン修士課程の生活

King’s College Londonの場合、3,000字のレポート+4択クイズで成績が決まり、これが2か月に1回あります。また、2週間に1回ペースで1時間のwebinarがあり、そこでDiscussionを行います。日本の一般的な大学院と違い、抄読会等はありません。加えて、修士論文作成は本学卒業前4か月で行うようカリキュラムが組まれており、修士論文に対するウェイトが日本とイギリスでは異なることを念頭に入れる必要があります。現在私の労働形態の融通が利きやすいため、仕事と学業を何とか両立できている感じです。英語力にもよりますが、フルタイム労働との両立は大変厳しい印象です。加えて、日本人が応募できるオンライン大学院向けの奨学金はほぼないため、学費は自分で工面する必要があります(現地留学よりは安いと思います)。なお、日本の学割は使えませんが、Amazon Studentや航空会社の学割サービスは利用することができます。

国際機関やNGOで働きながら学習する同期が多いことは、オンライン留学の最大の強みだと思います。学生はWhatsAppグループで交流するのですが、理論と現場のギャップ等、知的好奇心をくすぐる話を伺うことができました。

4. 進学先選びについて

【修士課程】

King’s College Londonを選んだ主な理由は、年6回入学機会があることと、最短2年間で修士課程を卒業できることの2点です。イギリスのオンライン公衆衛生大学院は、夏始まりで修学期間が3年であることが多いので、志望校ごとの比較がとても重要になってきます。また、多くの大学がシラバスや科目名を公開しているので、自分の関心に合うものが多いかは判断材料にしました。その結果、The University of EdinburghとKing’s College Londonの2校に出願し、より魅力的だったKing’s College Londonへの進学を決めました。

【博士課程】

オンラインの博士プログラムを提供している大学院は非常に少なく、FindAPhD等の検索サイトでも十分網羅できていません。そのため、私はイギリスとアメリカの全ての公衆衛生大学院のHPにアクセスし、オンライン教育(Distance Learning)を提供しているか確認しました。その中で偶然、自分が博士課程で研究したい分野(性的同意のジェンダー論)の先駆者の所属する大学がオンライン博士課程を提供していることを知り、受験を決めました。オンライン博士課程については、修業年限の相場が6年であり、学費や博士取得率もピンキリです。更に、修士号の取得を受験要件としているところと、そうでないところがあります。そのため、オンライン留学においては、志望校選びに沢山時間をかけることをお勧めします

5. 英語の対策について

私が海外大学院受験を決意してから、IELTSの受験まで約1か月しかありませんでした。大学受験の時と同様、IELTS専用の単語帳と問題演習を何度も繰り返しました。ただし、医学論文の読解や執筆とは少し異なるスキルが求められる(特にWritingとSpeaking)ので、現状の英語力に甘んじず、しっかり対策をすることが必要です。個人的にはChatGPTやDeepLに依存しすぎると英語力が大幅に低下すると思っていますので、ご注意ください。

6. 出願書類作成に関して

【修士課程】

King’s College Londonの場合、志望理由書、推薦状1通、成績書、履歴書の提出が求められました。推薦状については、当時参画していた研究プロジェクトのリーダーに書いて頂きました。特に志望理由書の書き方は論文等とは大きく異なるので、留学した先輩の志望理由書を拝見し、書き方の参考にしました。値段は高いですが、英文校正会社による添削サービスの利用もお勧めします。添削して復習することは、IELTS等のWriting score上昇にも直結します。

【博士課程】

Lancaster Universityの場合、500単語の研究計画書(Reference除く)、志望理由書、推薦状2通、成績書、履歴書の提出が求められます。他大学の研究計画書は1500-3000単語であることが多かったので、字数制限に大変苦労しました。こちらの推薦状も、研究プロジェクトでご一緒させて頂いている大学の先生方に書いて頂きました。また、博士課程受験前に論文出版や国際学会発表の実績を増やすよう頑張りました。

7. 面接について

博士課程受験時のみ、面接がありました。想定質問応答集を作成し、それを暗記して面接に挑みました。面接では、(1) 志望理由、(2) この研究を遂行するために必要な能力は何か、(3) 計画している研究の強みと課題は何かの3つが聞かれました。面接は30分ほどで終了し、面接終了時に面接官から合格おめでとう!と言われました。「受験前に教授と連絡し、PhDを受け入れているか確認すべき」ということを知らずに受験してしまったため、この面接が指導候補教官と初めてコミュニケーションをとる機会になってしまいました…。

8. 最後に…オンライン留学という選択肢を考えて欲しい!

分野によるとは思いますが、様々な学位をオンラインで取得[2]できる時代になりました。COVID-19の流行は、この流れを更に後押ししているとも思います。勿論リアルでの繋がりや英会話の力を高めるという点ではオンライン留学は不向きかもしれません。しかし、学生との繋がりや最新の知識のインプット、仕事と学業の両立という点では非常に魅力的だとも思います。オンライン留学と現地滞在型留学のそれぞれの良さを知って、納得のいくキャリア選択をして頂けますと幸いです。


【編注】

[1] A Postgraduate Diploma is considered academically over the level of a Bachelor’s, but under a Master’s level. A Postgraduate Diploma can normally be started after the completion of a Bachelor’s degree and is typically completed in one year or less. (参考サイト)

[2] オンライン留学といっても、大学によっては世界各国から参加できる形のものや、オンラインでも主に留学先国内にいる人をターゲットとしていたり(時差考慮なしで授業がある)、一部(最初と最後の2週間ほど)は現地に行くものなど様々なパターンがあります。

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