目次
2020年8月1日にXCEEDでは「海外大学院留学後の進路」をテーマに、アカデミアや民間企業で大活躍中の留学経験者の皆さまをお呼びし、キャリアパネルディスカッションを開催しました!イベントレポートはこちらの記事からご覧ください。
イベント中に皆さまから寄せられた質問に、パネリストの皆さまに答えていただきました。今回の記事では、キャリア計画、就労ビザやグリーンカードのサポート、ワークライフバランスなど注目度の高い質問とその回答を取り上げて紹介します!
将来日本で働きたいと思いますか?
中込さん:クビを切られた後もしぶとくアメリカに残りたいので、日本に帰る予定はまったくないですね。
中島さん:現在は家族と一緒にアメリカで暮らしているので本帰国する予定はありませんが、将来短期(1年ほど)日本に滞在して仕事をできればと考えています。
皆さんはどのようにインターン先を見つけましたか?LinkedInや、知り合いのツテなど。
中込さん:民間企業に限って言えば、LinkedInやコネクションなど使える手段は全部使った方がいいですよね。
上原さん:PhDの4年目にそろそろ実績も溜まってきて自分の力をラボの外で試したいと思いました。LinkedInで自分と近い研究をしている人にメッセージを送ったり、知り合いに履歴書を送ったりしてインターン先を探していました。直接の知り合いではありませんが僕の履歴書を知り合い経由で見たある研究者からインターンしに来ないかと誘われました。行動あるのみ!
日本への帰国に傾いているアメリカPhD生(女性)です。将来子どもがほしいのですが、子育てのことを考えると,実家からの援助、治安、生活への慣れ、仕事での競争の激しさ(日本の方がマシ?)などの面で,日本で就職した方がいいのかな…と思ってしまいます。皆さんのお考えをぜひお伺いしてみたいです!
宮崎さん:子育てをする上で、完璧なところはないんだなって思っています。日本の環境は保育園・食事・治安等でやっぱり素晴らしいですが、家族の考え方が米国と比するとまだ働きにくい側面もあったりします。米国は多言語を学べたりしますが、私がアメリカで住んでいた地域は保育料がすごく高かったり、親の支援は難しかったりしました。家族と話し合って、一番いい選択ができるとよいかなって思います!
中島さん:質問者さんにすでにパートナーがいらっしゃって、パートナーが日本から離れられない場合は私も帰国を考えるかもしれません。もし現在特定のパートナーがいらっしゃらない場合は、自分がこの先、5年くらいどこに住みたいかを優先して考えられるのが良いかもしれません。5年と言ったのは、私は5年くらい先なら想像できるのですが10年先は想像できないからです。私は卒業時にはアメリカ生活に慣れ切ってしまい、日本に戻ることは前向きには考えられませんでした。
アメリカは医療費とかデイケア費用とか非常に高いですが、出来るところはどんどんアウトソースする文化があるので働きながら子育ては割としやすいように見えます。日本はやはり母親に負担が偏りがちですが、アメリカは夫婦と社会でサポートしていく制度はより整っているとは思います。でも私たちにはまだ子供がいないので、子育てに関するお話は他の先輩方にお聞きください。子育てはアメリカでも全然できますよー!でも、自分の両親や日本の家族になかなか会えないのは辛いですね(特にコロナ中は…)。
PhD課程の学生が、将来的にグリーンカードを獲得することを念頭に置いて行動するためには、どのようなアクションを学生の間からとるべきでしょうか?
中島さん:推薦状を書いてもらえる人を探すことと、もし大学等に頼らずグリーンカード申請する場合は、資金調達ですかね(弁護士費用諸々で$10kは超えるはずです)。
上原さん:今僕もそのEB2-NIWで永住権申請中ですが、けっこう大変です…「絶対アメリカに残って頑張る!」という気合いが必要だと思います笑 就職先の企業または大学からスポンサーしてもらうにしろ、自分で申請するにしろ、間違いなく実績やコネクションが必要です。焦らずに、目の前の研究を頑張って、自分の実績をしっかり発信していく(学会発表・論文執筆など)ことが大切かなと思います。
宮崎さん:STEM系の博士号取得者がよく取得するEB2-NIWにどのようなことが必要か、ということをグリーンカード取得経験者や移民弁護士から聞き始めると良いかもしれません。
研究の英語はまだ分かるのですが,実際に働く環境での英語に不安を感じています。
麸沢さん:なんとかなるものです!周りが自分のアクセントに慣れてきます。
宮崎さん:研究生活の延長上に仕事もあると思いますので、大丈夫だと思います!
上原さん:僕も上記の意見に賛成です!ですが、ポジションや職種にもよると思います。研究者・エンジニアと言えどもマネージャークラスになってくるとやはりチームを円滑にマネジメントするために英語力は必要だと思いますし(そもそも英語でつまずくとかいうレベルではない)、このテーマについては、研究やエンジニアリングよりも、ビジネスをバリバリやっている日本人に聞いた方が良いかもしれません。
中島さん:英語は全然ダメでどうすればマシになるのか教えて欲しいくらいです。特に英語のメディアインタビューにかなり苦手意識があります。ちなみにアメリカ人の夫からよく聞き返されます。まぁでも一応なんとかなってますよ(多分)。
工学系のアメリカPhD学生です。インターン経験が重要だと思っているのですが、皆様はどのようにインターンの準備をされましたか?特に僕は比較的ソフトウェア系であるため,研究能力の提示(例:分かりやすく研究紹介をできる、多くのpublicationがあるなど?)ほかに、コーディング能力なども重要であると思っています。
中込さん:上記に加えてコネとコミュ力。ほんとにこれが大事。ぶっちゃけ多少研究やコーディング能力劣っててもコネとコミュ力あればポジション取れることもあるということは知っておいたほうがいいです。もちろん研究能力、実績、コーディング力はあるに越したことはないですよね。ただそれらの実力を披露する場に立てなければ、そもそも意味がありません。
アメリカの大学でPhDを取得し、アメリカで就職した際でもグリーンカードの取得は難しいでしょうか?大学、大企業、国立研究所、スタートアップのそれぞれにおいてどの程度サポートしてくれるか教えていただけると幸いです。
麸沢さん:私が働いているEPAでは数年前からグリーンカードか市民権を持っている人しか採用が無くなったので、サポートは残念ながらありません。。また、DOE(Department of Energy)などは外国人の方にビザ発行のサポートをしているようですので、政府機関や研究内容にもよるようです。
中込さん:大企業は分野にはよりますが、オファーをもらえば、わりと簡単です。スタートアップはほんとにそのスタートアップによる。わりと難しめではあると思います。
中島さん:大学や国立研究所、大企業ならグリーンカードの費用は持ってくれると思いますよ。私もグリーンカード申請費用は大学が全部出してくれました。
編集部注:大学では教授職ではないとグリーンカードのサポートをしてくれないところがほとんどです。スタッフ職ではH1Bと呼ばれる就労ビザのサポートをしてくれるところもごく一部です。教育系の方はご注意を。
ゴメスさんに特に質問なのですが、Facebookのような企業でResearch Scientistになるためには、どのようなことに力を注ぐのが良いのでしょうか?
中込さん:まずポジションが空いてることが前提で、ポジションに求められてる技能を持ってることが最低限必要です。その上で力を入れるべきは研究そのもの、そして研究を様々な理解度の違いがある人たち(教授クラス、ポスドククラス、博士、学士、分野違いの人、などなど)それぞれにちゃんと説明できるコミュニケーション能力。あとコネ。これらの要素を持っていないと、そもそも一番最初の審査してくれる土俵にすら立てないものです。インターンですら書類からやると倍率数百倍。フルタイムのポジションなら難しさはインターンの10倍くらいにはなりますよね。
ヨーロッパの大学ではアジア人のfacultyが少ない&ヨーロッパ人はあまりアジア人が好きではないと聞いたことがあるのですが、差別にあったり、昇進するのが困難であったりするという話を聞いたことがありますか?
末永さん:大学内や会社においてあからさまな差別をすることは問題を起こすと思いますし、少なくとも私の周りではありませんでした。(例えば、街中で差別的な発言をされることはありました)
ゴメスさんに質問ですが、企業で生き残っていくのは非常に大変だとは思うのですが、どのようなことに気を付けていらっしゃいますが?
中込さん:ずばり人間関係とコミュニケーション。最初の2週間で圧倒的な結果を出して、同僚や上司に「こいつは優秀だぞ」という第一印象を植え付けることが肝心です。人の印象は最初に決まると、そう簡単には変わらないです。
グリーンカードを取ることがアメリカでは非常に重要だと思います。そこで、アメリカのCS系では企業でもグリーンカードをサポートしてくれると思います。ただ、ポスドクを経由してグリーンカードを取る例も聞きます。企業によるとは思いますが、将来アメリカでビザの観点から生き残っていくために、どのようなパスを取ることが重要ですか?
上原さん:分野業界に関わらずそもそも企業もしくは大学がグリーンカードの取得をスポンサーするのは、企業がその人材を雇ってからの話で、「この候補者は優秀だな。まず就労ビザのスポンサーをして雇って、パフォーマンスが良ければ、その後の永住権の取得も支援しよう!」と企業なり大学なりに思わせることが必要です。
就職先からのスポンサーを必要としないEB2-NIWカテゴリーに応募するにしても、自分自身の実績が無いとグリーンカードの取得ができません。毎年行われる抽選を当てるか、アメリカ国籍を持つパートナーと結婚するといった方法ももちろんありますが、結局のところ、近道は無いのかなと個人的には思います。
インターンのインタビューを突破するためには、どのような対策が良いのでしょうか?
中込さん:コミュニケーション能力を磨くことですね。コーディングはしっかり対策しましょう。友達と模擬面接しあうことも大事です。Behavioral Interview のインタビューもしっかり対策を。
末永さん:私が受けた国連事務局のインターンはインタビューはなく、書面審査のみでしたが、実際に国連のスタッフの選考の際には、書類審査と面接のどちらもあります。書面審査でもインタビューでも、国連の場合は自分の国際協力業界で仕事をする意気込み、また受けるポストにどう自分が貢献できるのかを具体的にまとめておくことが重要と考えます。また国連は基本 Competency interview なので、こちらについてはこのリンクをご参照ください。
中島さん:自分の強みや、いかに自分が勤め先に貢献できるかをアピールするのが良いかと。自 らしく、the best version of yourselfがちゃんと出せると良いですね。突破できないことが普通なので、ダメでも落ち込まずに場数を踏むことが重要だと思います。
日本人が海外でリーダーシップをもって企業で働くことは難しいとよく聞くのですが、皆様はどうお考えでしょうか?
末永さん:たしかに日本人は周囲に気をつかって積極的に発言をしないなどと言われることがあります。周りと協調性があることなど日本人としての強みを活かしながら、働きながら色々な人と良好なネットワークを築き、少しずつ自信をつけながら、まずは自分の思ったことを言ってみる、というところからはじめればよいのかなと個人的には思います。私もまだ発言は得意な方ではないので、自分なりに試行錯誤をしながら取り組み中です。
将来,結婚や家族のことを考えると,アメリカで生活していくことが大変な気もしますが,皆様は今後もアメリカや海外で生活していく予定でしょうか?
麸沢さん:今のところは当面アメリカで生活していくことを考えています。夫がアメリカ人なので、もちろんそれも大きいですが、あとはせっかくアメリカの大学院を卒業したのでしばらくはアメリカでチャレンジしていきたいという思いが強いです。日本では女性研究者として生きていくのはなかなかやはり難しいのでは、と感じることが多々あります。(特に日本では私の分野は、男性が圧倒的に多いので)質問者様のおっしゃるように、家族のことを考えると日本に帰りたくなる気持ちもあります。あまり先のことは決めすぎず、とりあえず今はアメリカで挑戦したいという思いでこちらで研究生活を送っています。
中島さん:今のところ日本に帰国することは考えていません。日本の家族に会えないのは悲しくて辛いですが、アメリカ生活に慣れすぎているので、日本社会に適応できるかどうかが不安です。時間が経てば慣れるとは思うのですが。あまり先のことを考えず、今自分がどうしたいかで決めた方が良いかもしれませんね。
他にもたくさんの質問と回答をいただきました!続きの回答はQ&A記事その2をご覧ください。