XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2022年度の第3回である今回は、この秋からイギリスのLondon School of Economics and Political Science(LSE)の修士課程(Sociology)に進学予定のPink Shibaさんに寄稿していただきました。
1. 自己紹介
こんにちは!2022年9月からLondon School of Economics and Political ScienceのMSc Sociologyに進学予定のPink Shibaです!他にUniversity of Oxford のMSc SociologyとUniversity of ManchesterのMA Sociologyからも合格をいただいていました。
僕は地方大学文系ということもあり、海外大学院進学をする人が周りに多くなかったのですが、本当に沢山の方の助けのおかげで第一志望群の大学院から合格をもらうことができました!この恩は誰かに返さないといけないので、この場をお借りして僕の経験を共有したいと思います!一個人の経験談ですが、誰かの大学院進学の手助けになれば、それほど嬉しいことはありません。
ただ、大学院申請のすべてを書くにはスペースが足りないので、ここでは僕の
- 大学院申請のモチベーションについて
- 留学準備の中でやって一番よかったこと
の2つに焦点を当てます。
尚、僕の経験談は一社会学徒のものと理解してください。分野の違う人たちには、あまり参考にならない部分もあると思います。
大学院留学のモチベーション
まず、英国修士留学を目指している人の中では多い理由だと思いますが、英国修士は1年で学位を取得できる[1]ということがあります。通常日本の大学院では2年ですし、他の多くの国でも2年以上でしょう。人生焦る必要は全くないと思いますが、比較的短期間でマスターの学位を取りたいのであれば英国修士はいい選択肢だと思います!(それが僕にとってそうであったように)
もっとも、僕に特有の大学院留学のモチベーションのうち、書類に書いたり面接で言ったりするのは「夫婦の平等な家事分担について国際比較をし、日本の家事分担の平等化に寄与する」です。もちろん、僕はこれが非常に重要な問題だと考えていますし、これを研究する際に的確なアドバイスをいただけそうな、ジェンダーギャップとその国際比較を専門とする教授のいるプログラムを選んで応募しました。このトピックがジェンダーギャップ解消のためになぜ重要かというと、家族というのは個人が育ち、価値観を形成する場であるためです。強い言葉ですが、誤解を恐れずに使えば、「正義に適っていない家族」=家事分担が不平等に分配されている夫婦に育てられた子供は、その不正義を所与のものとして理解してしまうと私は考えています。このような子供が成長し、次の社会を担う場合、その社会はジェンダー平等を実現できるでしょうか?
ただ、僕の英国留学にはもうひとつの個人的な理由もあります。それは、彼女と一緒にいたいということです。詳細は省きますが、英国の院に行くことでこれが実現できるという状況でした。ここで敢えて個人的なことを書いたのは、「留学のために偉大な理由はなくてもいい!」という持論を展開したかったからです。人間は様々な理由で移動します。親の介護のために実家近くに引っ越す、家族の転勤に合わせて引っ越す、子供が良い教育を得られる地域に引っ越す、パートナーの仕事があるところへ引っ越す、etc. これらは、とても当たり前のことです。その地理的移動の手段(口実)として、転職、留学などは胸を張って語られてもいいと思います。また、このような個人的動機が職場などでも尊重されるようになれば、男性も女性もより働きやすい環境になるのかなとも思っています。(余談ですが、LinkedInというキャリア形成SNSでは、仕事をしていなかった期間何をしていたのか(子育てやボランティア等)を記載できる機能が最近追加されたようです。)
ということで、どんな理由であっても留学したいと思えば挑戦してみてほしいです!既に留学している人が語る「偉大な理由」に気圧されないでください!
留学準備の中でやって一番よかったこと
「早めに準備を始めること」
これに尽きると思います。
僕の場合は学部卒で修士課程への応募だったので、ちゃんとした研究経験もほぼありませんでした。だからこそ、大学院申請はもちろん、奨学金応募でも求められる「研究計画=大学院で何をしたいのか」を早めに考えなければ、色々な応募に間に合わなかったと思います。特に奨学金応募には間に合わなかったと思います。多くの留学希望者にとって、奨学金はあるに越したことはないですが、この申請は早いものでは進学前年7月ころに〆切があります。これらの締め切りの早い(そして非常にハイレベルな)奨学金に応募しておくことで後の奨学金申請の練習にもなります。僕は10以上の奨学金に応募しましたが、早めの練習のおかげもあって後半の奨学金の選考は通り易かったように思います。
具体的には、僕は大学院進学の前年である2021年3月から研究計画を練り始めました。研究分野の論文を100本くらい読んだと思います。その上で、どのようなことが明らかになっていないのか、どんな視点が欠けているのかなどを考えました。思えば、ここの作業が研究の核心になってくるので一番重要だったと思います。もちろん、この際教授や同級生のアドバイスを沢山いただきました。そして、6月ころからは自分は何を研究し、この分野にいかに貢献できるのかを文章としてまとめ始めました。各奨学金の申請書類や大学院申請のSOP作成のためです。7月末には一旦奨学金への応募ラッシュが終わりました。なのでその後は、大学院申請書類作成に本腰を入れました。これと同時に卒論の執筆もかなり忙しくなってきたので、両立が大変でした。卒論の時期は大学や担当教員によって違うと思いますが、卒論期間は大学院申請だけに注力できないことも考えておくといいと思います!
そんなこんなで、私が大学院申請書類を作り終えたのは11月中頃でした。
イギリスの多くの大学院はRolling admission[2]という、提出された応募書類から順に審査していき、合格者数が定員に達した時点で募集を締め切ってしまう方法を採用しています。よって、一般的には、イギリスの大学院には募集が始まったばかりの10-11月くらいに申請をしてしまうのがいいと聞きました。繰り返しになりますが、「早めの準備!」ですね。
これから海外大学院へ出願する人へのメッセージ・アドバイス
僕にとっての海外大学院申請&奨学金応募は、スケジュールがタイトでプレッシャーも大きい大変な過程でした。なんとかやりきって合格をいただけたのは、たくさんのヘルプを求め、そこにサポートがあったからだと思います。SOPに自信がないとき、色々な先生がこれを読んで何度もアドバイスをくれました。先輩が奨学金の応募書類をチェックしてくれました。僕もそんなサポートのひとつになれたら幸いです!ここでは書ききれませんでしたが、Noteで僕の大学院申請のすべてを詳細に紹介しているので、そちらも参考にしてもらえれば嬉しいです。
(編注)
[1] イギリスの修士課程でも、大学・専門によっては日本など他国と同様に2年間のプログラムもあります。
[2] 出願を随時受け付けており、応募してきた学生から先に審査を行って合否を決め、合格者の数が入学定員に達した段階で出願を締め切るシステム。イギリスの大学(院)に多いシステムだが、アメリカなど他の国の大学でも一部採用しているところもある。Rolling Admissionの場合、出願の締切日が設定されていないことも多い。