海外大学院生のためのスーパーボウル観戦ガイド【XPLANE TIMES 留学生活だより】

本記事はXPLANE TIMES(ニュースレター)第2号(2024年1月7日発行)内の連載企画『留学生活だより』に掲載された記事です。
連載企画『留学生活だより』では、海外留学において大学内に限らない趣味、生活に関する事柄、地域特有の事情などについての記事を掲載しています。

「せっかくアメリカに留学したし、本場のスポーツを観に行こう!」

そう意気込む大学院留学生も、多くの場合は大谷選手をはじめとした日本人選手の活躍が近年目立つMLB(野球)やNBA(バスケットボール)の試合や、自分の大学のスポーツチームの応援に足が向かうのではないでしょうか。
しかし、アメリカで他のスポーツと比べても圧倒的に人気で、もはや文化の1つとして浸透していると言っても過言ではないスポーツが「アメリカンフットボール」です。特に毎年2月に行われるNational Football League (以下NFL, アメフトのプロリーグ)の優勝決定戦『Super Bowl』はアメリカ国内最大のスポーツイベントで、普段アメフトを観る人も観ない人も一様にホームパーティーを開いて観戦会をするのが一般的です。

本記事では、「スーパーボウルのパーティーに誘われたもののアメフトについて何も知らない…」という留学生の皆さんに向けて、シーズン中の日曜日は基本的に朝から晩までNFLのテレビ観戦に充て、アメリカ内で旅行する際には現地観戦を中心に計画する筆者が、アメフトの魅力について語りたいと思います。

目次

なぜアメフトは面白い?

“Football is awesome, it turns out. I’ve been missing out my whole life!”

これは2023年にNFL選手の恋人ができたのをきっかけに現地観戦にほぼ毎週足を運ぶようになったTaylor Swiftの言葉です。「休日に朝から晩までNFLを見ているような人はアメフト経験者に違いない」と思われるかもしれませんが、私は競技経験は一度もありませんし、多くのアメリカ人もそうです。なぜ皆観ているかというと、おそらくそれは単純に面白いから。アメフトはルールが難解とよく言われますが、

  1. ボールを投げるプレー(パス)と持って走るプレー(ラン)を組み合わせ、相手陣地のゴールラインへ辿り着いて得点する(タッチダウン)のを目指す
  2. 攻撃側は4回のプレー機会を与えられ、その間に10ヤード進む度にさらに4回攻撃を続けられる(フィールドの太い白線の間隔が5ヤード)。
  3. 得点が入る、または攻撃に失敗する度に攻撃側と守備側が入れ替わり、試合時間(15分×4クォーター)を消費するまで続ける

という知識が最低限あれば、あとは試合を観ながら覚えていけば十分楽しめます(参考:より細かいルール)。


選手交代は無制限で陣形の種類は多数、サイドラインでは多くの作戦スタッフも関わる戦略的なスポーツ(カリフォルニア州ロサンゼルス近郊、SoFi Stadium)

個人的に、他のスポーツと比べてもアメフト、特にNFLに魅力を感じる理由は、身体性の高さと戦略性の高さが共存している点にあると思います。

身体能力の高い選手が繰り広げるフィジカルなスポーツであり、50メートル先に完璧なタイミングと正確な軌道でボールを投げ込むクォーターバック、楕円形のボールを簡単そうに片手でキャッチするレシーバー、150 kg近い体重をぶつけ合うラインマン…とどこを見てもとにかく派手です。昔少年ジャンプで『アイシールド21』という高校のアメフト部を舞台にした漫画が連載されていましたが、あの漫画に登場するプレーの大半もNFLを見てしまうと全く誇張はないと思ってしまうほど、まさにフィクションのようなプレーの数々です。さらにポジションが細かく決められており、攻撃と守備で出場する選手もほぼ重複しない完全分業制のスポーツです。各選手は自分のポジションの専門のスキルをひたすら磨くため、身体能力だけに頼るわけではなく技術的にもとても高度で、洗練された美しい動きが見られます。専門分野を突き詰めて深く学ぶ大学院生に通じるところもあり、共感しやすいスポーツではないでしょうか(若干強引)。

また、競技のフィジカルさが高い一方で、アメフトは非常に戦略的なスポーツです。攻撃側は毎プレーの前にハドル(作戦会議)を行って次のプレーを決定し、守備側も陣形や展開からプレーを予測しようとするという読み合いです。また時間制のスポーツであるため、終盤には勝っている方は時間を消費しようとし、負けている方は時間を使わずに攻撃しようとするなど、残り時間を巡る駆け引きも面白さの1つです。ビッグプレーの多さ故に残り数秒で大逆転が起こるということも頻繁にあり、最後まで目が離せません。さらに戦略性の高さは、試合数が少ないことにも助けられています。レギュラーシーズンは1週間に1試合のみの合計17試合のみしかなく、1試合の重要性が他の多くのスポーツと比べても段違いです。各チームは毎週長い準備期間を活かして対戦相手を徹底的に研究し、ゲームプランや特別なプレーを念入りに準備しています。その結果、事前の勝敗予想と全く違う結果が起こることも珍しくありません。毎週独創的なプレーや作戦が生まれるという点は研究者の世界と通じるものがあり、大学院生に共感しやすいスポーツであると思います(強引)。

筆者の推しチーム、New Orleans Saintsの本拠地Caesars Superdome(ルイジアナ州ニューオーリンズ)

米国最大のスポーツイベント、スーパーボウル

そして2月に行われるNFLの優勝決定戦のスーパーボウルは、派手なスポーツの中の一番の大舞台ということもあり、あらゆるスケールが大きいです。視聴者は1億人以上(バーなどの観戦も含めるとアメリカの人口の3分の2が見ているそう)と言われ、多くの人が家族で、あるいは友人を招いてホームパーティーをして観戦します。私も初めてアメフトの試合をフルで見たのは、研究室でのスーパーボウル観戦会でした。主な見どころとしては以下の3つです。

  • ハーフタイムショー
    「試合じゃないの?」と思うかもしれませんが、いくら米国最大のスポーツイベントとはいえ、多くの人は地元のチームが出たりしない限りは知っている選手はせいぜい数人。ルールも怪しい人が多いです。それに比べると、ハーフタイムショーは選手よりも圧倒的に知名度の高いスーパースターが出演するため、パーティーの中で最も盛り上がる15分間と言っても過言ではありません。初めて観戦会に参加する方は、時間がなければ出場チームや選手よりもハーフタイムショーの出演者の代表曲を予習しておくと良いでしょう(2024年はUsherです)。第3クォーターが始まった後もしばらくはショーの良し悪しを議論していることも珍しくありません。
  • 広告
    視聴率が桁違いのスーパーボウルでは、30秒のCMを流すための広告料は700万ドル(2023年)です。当然各企業が広告に賭ける熱量も普段の比ではなく、専用のCMを準備します。「どのCMが一番良かったか」という記事や動画が後日作成されるほどに注目されていて、アメリカの人も試合中よりもCM中の方が集中力が高い人がむしろ多い印象です。
  • 試合
    そして当然ですが、最後の見どころは試合です。MLBやNBAとは違ってNFLの優勝決定戦はスーパーボウルの1試合のみで、レギュラーシーズンとプレーオフを勝ち抜いた2チームが全てを賭けて戦います。その年のベストチーム同士の対戦なのでレベルが高く、多くの場合接戦でドラマチックな展開になります。(追記:2024年は、サンフランシスコ・49ersとカンザスシティ・チーフスに決まりました)

    アメフトを普段観ない方が試合部分を楽しみたい場合、両出場チームのQB(クォーターバック)について軽く予習しておき、当日もQBの動きを中心に観るのがおすすめです。QBは主にパスを投げるポジションですが、試合を通じて攻撃中1人の選手が出場し続けます。チームの攻撃の司令塔としての役割を担う最も重要なポジションで、過去10シーズンのNFLの最優秀選手は全てQBです。出場チームは2週間前に決まるため、スーパーボウルまでの期間で出場するQBのハイライト動画をYoutubeで観てプレースタイルを分かっておけば、十分NFL通ぶれます。

現地観戦に行ってみよう

そして、もしスーパーボウルを観てNFLが面白そうだなと感じたら、特に留学先の地域にNFLチームがある方は一度スタジアムで観戦するのをおすすめします(なければ、留学先大学のカレッジフットボールチームの応援でも)。NFLでは試合数の少なさ故にどの試合も必勝であり、スタジアムは基本満員で、良いプレーが決まったり点数が入る度に凄まじい盛り上がりを見せます。逆に相手チームの攻撃の際にはファンが大声を出して妨害する『クラウドノイズ』があったりと、現地の一体感はテレビでは味わえない雰囲気でファンは「12番目の選手」と呼ばれることも。アメリカに限らず、最近はNFLの試合が年に数回ヨーロッパでも開催される(今年はロンドンで3試合、ドイツで2試合ありました)ため、ヨーロッパに留学している方も機会があればおすすめです。

San Francisco 49ersの本拠地Levi’s Stadium。電光掲示板には相手の攻撃の際に”Get Loud”と表示され、ファンが大声を出してプレーを妨害する。(カリフォルニア州サンタクララ)

以上、簡単にですがアメフト観戦の魅力について紹介しました。基本的には「観て楽しい」というのが私がNFLを観るモチベーションですが、フットボールは何気ない会話の話題になることも多く、ソーシャルな意味でも助けられることが少なくありません。特にアメリカに学位留学している方は、アメリカの文化に触れる意味でも一度観てみてはどうでしょうか。今年は2月11日(日本時間では2月12日)に開催されるスーパーボウル、ぜひ周りの観戦会に参加してみてください。

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