トップスクール乱れ打ちをしない海外大学院出願記【海外大学院受験記2022-#1】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記」では、海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。2022年度の第1回である今回は、この秋からカナダのMcMaster Universityの博士課程(Psychology)に進学予定の坂本さんに寄稿していただきました。


いきなり尖ったタイトルですみません。慶應SFC修士2年、秋からMcMaster UniversityのDepartment of Psychology, Neuroscience and BehaviorでPsychology PhD Courseに進学する坂本嵩です。

McMasterはカナダ国内で5-6位の大学院、MIT, Stanford, (パブリック)アイビーなどの米国上位大学院に「格」としては劣ると言わざるを得ない学校です。それでも僕はこの進路に大変満足していますし、他の大学院からオファーを貰っていたとしてもここを選んだと思います(そもそも単願だったので知る由もありませんが)。
学校のランクよりも優先するべきものがあったのか?少しでも後進の皆さんの参考になればという想いを込めて、僕の留学動機や志望校選びを記そうと思います。

目次

留学する理由

原点は高校留学です。高3の夏、旅立つ直前に恩師から「Ph.D.はプロのパスポートだ。世界共通の資格を肌で感じてこい」と言われたのを鮮明に覚えています。実際、留学先の高校は教員の4割が博士号、4割が修士号、残りの2割が学士号取得者という割と狂った構成でした。僕の足りない頭でも学士の先生と博士の先生とでは「何か」が違うことを感じ取ることができ、これが博士号を取得するモチベーションのきっかけの一つになりました。

というわけで学部に入学する前から大学院留学はぼんやりと考えていて、そのためにGPAを高く保つこと・CVを「盛る」ことは強く意識しながら学生生活を過ごしていました。学部一年の頭から研究室に入り、学会に沢山出したり論文を書いたりもしました。ただ、大学院留学に対するモチベーションがハッキリとしたものに変わったのは修士一年の6月に参加した学会です。

Neurosciences and Music学会は3年に一度、音楽にまつわる神経科学・心理学などの研究者が集う学会で、いわば僕や指導教官のホーム学会です。3年に一度、とあるだけあって発表される研究の質は厳選されており、セッションもよくある並列スケジュール(2-3個のセッションが同時に行われる)ではなく、単一のセッションに皆が参加する形式でした。これはつまり全参加者が分野の中心研究と動向を強く意識するということであり、分野の中心人物も明確に分かります。ボードメンバーや中心人物は非常に仲が良い様子で、とてもフレンドリーかつオープンな雰囲気で意見を交換していました。特に、同一セッションに登壇する4-5人の中心研究者たちは普段から仲良くしているようでした。しかし、このハッピーな雰囲気の裏に僕は「中心に入り込まないと将来野垂れ死ぬ」という残酷さを強烈に感じました。コミュニティ感が強いということは即ちコネが重要ということであり、そこを疎かにしたらこの分野で成功するのは難しいと、一流にはなれても超一流にはなれないと、そう感じたのです。良い研究なら日本でもできますし、実際沢山あります。しかし、様々なPI[1]との共同プロジェクトから研究の裾野を広げ、論文数を増やし、科学へのインパクトを大きくしていくのは人脈とコミュニケーション能力がないとできません。多くの日本人研究者がここら辺の能力に長けていないことは学部のころからヒシヒシと感じていましたし、どこかしらの一派に入り込んでいかなければ、将来この分野で一花咲かせるのは厳しいなと感じました。この経験を受けて、僕は分野の中心に入り込むコネクションとコミュニケーション能力を得るための大学院留学を決意したのです。

ということで、僕が留学を決めた理由は

1. 博士は「何か」が違ったし格好よかったから
2. 将来のためのコネクションとコミュニケーション能力を得たかったから

です。

志望校の条件・選び方

さて、志望校選びですが、当然ながら分野の中心人物、つまり上記学会のボードメンバーや積極的に論文を書いている若手PIに絞りました(下表参照)。そうでないと留学の目的を果たせません。


学校よりPIで見たので、学校のランクも国もバラバラです。ここに現所属(リサーチアシスタントをしているソニーCSL)を合わせて、順位付けをしました。評価基準は以下の項目で、それぞれ0-3点で評価しました。

  • 志望研究室の研究は好きか?
  • メンタリングの質、面倒見はいいか?(界隈の口コミや学生の論文数で判断)
  • 同世代とのコネクションを作れるか?
  • 研究者としてのコミュニケーション力がつくか?
  • 知名度、箔があるか?
  • 独立した研究者になれるか?
  • なりたい研究者になれるか?

結果、McMasterが一位、現所属が同率二位となりました。現所属はスムーズにいけば博士の面倒も見てもらえそうでしたから、他のラボにオファーをもらっても現所属に進むだろうということで出願はMcMaster一校に絞り込みました。現所属の先生も分野の中心人物である上(北米・欧州以外で唯一のボードメンバー)、Rising Star[2]ポスドクが同じチームに来ると聞かされていたので、この環境を捨てて留学するなら、より良いところに行きたいという想いがありました。こうして客観的に現環境や他の環境を見られたことは出願の思いがけない副産物でした。

ここでタイトルの伏線回収をしておきますが、自分が学校ランクに引っ張られ過ぎてしたくない研究をしようとしていることにも気付けました。プログラムのレベル感やPI陣の豊富さ(≒学校のランク)を重要視する人も多いと思いますし、それが正解の場合もあるはずです。例えば、テーマやなりたいPI像にはこだわらないが、とにかく海外の良いプログラムに行きたい!という場合は、自分のビジョンよりも学校のランクを信じるべきかもしれません。RPGで例えれば、マップ内分岐の全てに対応したいなら現段階で手に入る総合スペック最強の武器を狙うべきです。マップの把握が良くできていない場合も同じ戦略を取るはずです。ただ、僕は5年の研究経験&5-6人のPIに指導を仰いできた経験から、分野の特性的にコネクションとコミュニケーション力のウェイトが高いことが分かっており、その目標に合致するPIや自分のなりたいPI像もなんとなくは分かりました。RPGなら、進みたいルートが明確に定まっている感じで、総合スペックでは劣るが自分が進みたいルートにおいては最強の武器を見定められた的な展開です。なのでここは人それぞれ、人には人の乳酸菌だと思います。タイトルでちょっと釣ってすみません。

ということで志望先はMcMaster一本に絞られました。あとは出願するのみです。

準備プロセス

ここは正直他の人と似たり寄ったりで別に僕が書かなくても良い気がするので雑に簡潔に行きます。

  • GREはrecommendedでしたが、準備が大変そうだったので他の部分で勝負できると思っていたのでやりませんでした。
  • 6月にTOEFLを受けました。
  • 6月の学会後にMcMasterの先生にメールし、進行している / 僕が参加できそうなプロジェクトの確認をしました。ちゃんと予算がついているけど人員が足りないプロジェクトは狙い目です。一つ面白そうなプロジェクトがあったので、その内容についてディスカッションをしました。結果的にそれが博士のテーマになりそうです。
  • 8月から11月にかけて、国内の奨学金出願をしました。詳細は自分のブログに書いたので、こちらをご覧ください。
  • 10月くらいから、XPLANEのSOP執筆支援プログラムにお世話になりながらSOPを仕上げていきました。国内奨学金の書類をベースに書き上げていきましたが、「全ての文に意図を持って書くと説得力が増す」「いらない伏線と情報は削る、スリムに詰まった文を書く」というのはかなり良い練習になりました。メンターの方には本当に感謝です。
  • 1月にRecruitment weekend(面接)がありました。最初に説明会のようなセッション、その後は1vs1の面接を2回(うち1回は志望指導教官)、その後にラボのvirtual tour、最後に学生同士の質問セッションがありました。最後の質問セッションは時差の関係で眠すぎてあまり聞けませんでした、、、笑

総説・僕にしか言えないこと

僕の出願プロセスはこんな感じです。学校のランクが正義な場合ももちろんありますが、そうではないケースもあるよ、ということをネットの海に放出しておければと思った次第です。もし質問などあればTwitter (@brain_sfc) までご連絡ください!


(編注)

[1] Principal Investigator (研究室主催者)のこと。「教授(Full Professor)」に限らず、独立した研究室のリーダーであれば准教授(Associate Professor)、助教授(Assistant Professor)もPIと呼ぶ。研究室のPIが指導教官となることが一般的。

[2] 新進気鋭の注目されている若手研究者、の意。

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